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第1章

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 なんとも、突拍子もない話だった。


 番だの、運命の相手を国中から探すだの。


 だから前世の私は、彼と結ばれることはなかったのだろう。


 彼はずっと運命の相手を待ち続けていて、それは私じゃなかった。

 それだけのことだ。


 それをあんなに、いつか相手に選ばれるためにと信じ込んだ私は、なんと愚かだったのか。


 もし過去に戻れるのであれば、かつての私を張っ倒してやりたい。


「あの人は永遠にあんたのものにはならないわよ! だって、番なんていうわけのわかんない仕組みがあるんだもの」


 私は人間だった。

 至って普通の。


 確かに公爵家の令嬢という特別な立場ではあったけれど。


 それ以外では、なんの能力も持たないごく普通の人間。


 風が吹けばすぐに飛んでいってしまいそうな、長生きの出来る彼にとってはそんな印象だったことだろう。


 あれは、彼にとってどうしようもないことだったのだ。

 私はそう思うことにした。


 彼は、自分の運命の相手じゃない私を選びたくなかった。

 だから何度も、はっきりとそう断っていたのだ。


 運命の相手というのが、どんなものなのか私にはわからない。

 多少は興味あるけど、でもどうでも良いっちゃどうでも良い。


 私には関係ないことだ。


 私は、彼の番じゃなかった。

 それは生まれ変わっても、同じことだろう。


 私は、例え自分の友人たちが「番」であったとしても、動揺しない自信がある。


 そりゃ、少しは驚くかもしれない。

 だけど、あの割けるような得も言われぬ苦しみを感じることはないだろう。


 月日は経ち、私は大人になった。

 私は私の分別を知った。


 私はきっとここで、村の子どもたちと結婚して、質素で幸せな暮らしを送るのだろう。

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