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妹②
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「お姉様」
案の定、私の教室で取り巻きたちに囲まれていたリリオーネは、私の姿を見つけるなり嫌味ったらしく声をかけてきた。
「ずいぶんと遅かったですわね」
「そうかしら?」
私は彼女と目を合わせることなく、自分の机の横にかけていた鞄を手に取る。
触って確かめると、教科書や文房具でもない何かが入っているようだ。
「別に私、あなたと教室で待ち合わせしていたわけじゃないんだけど」
「まあ、酷い」
リリオーネはわざとらしく扇子で顔を覆う。
「妹の私が訪ねてきたのに、お姉様ったらなんて冷たいのかしら」
よくもいけしゃあしゃあと。
私を何度も失脚させようとする癖して、私には「妹」扱いさせようというのか。
「まあ、酷いのはあなたの方よ」
私は、わざとリリオーネと同じような口調で話す。
「あなた知らないの? 上級生の教室に、許可なく下級生が入ることは最低最悪のマナーなのよ。あなたのような人間が妹だなんて、私、クラスメイトたちになんて言えばいいのかしら」
「そうなの、ごめんなさぁい。私って、馬鹿だからそういうのわかんないのよね」
ニヤニヤと笑うリリオーネ。
どこまで行っても面倒な妹だ。
「で、なんの御用?」
私は鞄の中を漁る。
「別に御用も何もないわよぉ。ただ、愛しのお姉様とお話がしたくて」
「へえ」
私はシルクの手袋をつけ、鞄の中からタバコの箱を取り出す。
「まあ、大変」
私はせいぜい叫んだ。
「まあ、お姉様ったら。腹生徒会長なのに!」
リリオーネはありえないとばかりに口を扇子で押さえる。
どうせ、この女の仕業だ。
「一体誰のかしら?」
「何をおっしゃっているの? それは、お姉さまの鞄から出てきたのだからーー」
「こんなの、一大事よ。誰かが私の鞄に間違えて入れちゃったのね。大変だわ。未成年がタバコを吸うなんて。法律違反よ。今すぐ警察にこれを提出して、指紋を取ってもらわなくちゃ。全生徒の指紋を確認しなくちゃね」
「ま、まあ。そんな大げさにしなくても良いじゃないの」
案の定犯人は妹のようで、慌てて犯人をフォローするような言い方をする。
「それは駄目よ。なんせ、私服生徒会長だから。こういうの、見過ごせないわ」
私はそれをハンカチで丁寧に包み、出来るだけ私の指紋が付かないように保管しようとするとーー。
「お姉様」
リリオーネは限界が来たのか、私からのタバコの箱を奪い取った。
「あら、どうしたの?」
「わ、私が調べますわ。お姉様の手を煩わせるわけにはいきませんもの」
私が返事をする前に、彼女は自分の取り巻きたちにそれを持たせる。
「それでは失礼しますわ。ごきげんよう」
慌てた様子の妹たちは、そう言っていそいそと教室から退散する。
その最中、妹の口から舌打ちが発せられたことに私は気づいた。
案の定、私の教室で取り巻きたちに囲まれていたリリオーネは、私の姿を見つけるなり嫌味ったらしく声をかけてきた。
「ずいぶんと遅かったですわね」
「そうかしら?」
私は彼女と目を合わせることなく、自分の机の横にかけていた鞄を手に取る。
触って確かめると、教科書や文房具でもない何かが入っているようだ。
「別に私、あなたと教室で待ち合わせしていたわけじゃないんだけど」
「まあ、酷い」
リリオーネはわざとらしく扇子で顔を覆う。
「妹の私が訪ねてきたのに、お姉様ったらなんて冷たいのかしら」
よくもいけしゃあしゃあと。
私を何度も失脚させようとする癖して、私には「妹」扱いさせようというのか。
「まあ、酷いのはあなたの方よ」
私は、わざとリリオーネと同じような口調で話す。
「あなた知らないの? 上級生の教室に、許可なく下級生が入ることは最低最悪のマナーなのよ。あなたのような人間が妹だなんて、私、クラスメイトたちになんて言えばいいのかしら」
「そうなの、ごめんなさぁい。私って、馬鹿だからそういうのわかんないのよね」
ニヤニヤと笑うリリオーネ。
どこまで行っても面倒な妹だ。
「で、なんの御用?」
私は鞄の中を漁る。
「別に御用も何もないわよぉ。ただ、愛しのお姉様とお話がしたくて」
「へえ」
私はシルクの手袋をつけ、鞄の中からタバコの箱を取り出す。
「まあ、大変」
私はせいぜい叫んだ。
「まあ、お姉様ったら。腹生徒会長なのに!」
リリオーネはありえないとばかりに口を扇子で押さえる。
どうせ、この女の仕業だ。
「一体誰のかしら?」
「何をおっしゃっているの? それは、お姉さまの鞄から出てきたのだからーー」
「こんなの、一大事よ。誰かが私の鞄に間違えて入れちゃったのね。大変だわ。未成年がタバコを吸うなんて。法律違反よ。今すぐ警察にこれを提出して、指紋を取ってもらわなくちゃ。全生徒の指紋を確認しなくちゃね」
「ま、まあ。そんな大げさにしなくても良いじゃないの」
案の定犯人は妹のようで、慌てて犯人をフォローするような言い方をする。
「それは駄目よ。なんせ、私服生徒会長だから。こういうの、見過ごせないわ」
私はそれをハンカチで丁寧に包み、出来るだけ私の指紋が付かないように保管しようとするとーー。
「お姉様」
リリオーネは限界が来たのか、私からのタバコの箱を奪い取った。
「あら、どうしたの?」
「わ、私が調べますわ。お姉様の手を煩わせるわけにはいきませんもの」
私が返事をする前に、彼女は自分の取り巻きたちにそれを持たせる。
「それでは失礼しますわ。ごきげんよう」
慌てた様子の妹たちは、そう言っていそいそと教室から退散する。
その最中、妹の口から舌打ちが発せられたことに私は気づいた。
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