上 下
20 / 29

しおりを挟む
「最悪だよ」


 生徒会室にて。


 私とユージーンは、先生から任された仕事をこなす傍ら、例の作戦についての話をしていた。


 ユージーンは、死ぬほどうんざりだという顔をしている。


「何が?」

「あの作戦じゃ、僕は君の妹と付き合っているって設定だったよな?」

「ええ。そのつもりでお芝居してたけど」


 私は資料をホッチキスで止めながら、片手間に会話する。


「最悪だ」

 ユージーンは、頭を抱えた。

「わかってたけど。わかったうえで計画を受け入れたけど。それでもキツいな……」

「キツい? 何が?」

「あの女――失礼、君の妹のリリオーネと付き合っていたって周囲に誤解されることだよ」


 ユージーンは、かなり私の妹のことが嫌いなようだ。

 この点では、私と彼の意見は一致している。


「しかも、僕が彼女に捨てられるとか。嘘とはいえ、耐え切れない」


 プライドの高い彼は、妹と付き合っていた雰囲気を醸し出すことさえ、自尊心を傷つける行いらしい。


「それは私も同じよ」

 私は答える。

「あなたは今、今までの私と同じ目に遭ってるの。死んでも付き合いたくない男と婚約させられて、挙句の果てに浮気されて捨てられた私と」


 私のプライドはズタズタだ。


「もしこれで、あのリリオーネに勘違いされて付きまとわれたりとかしたら……」

「目の前にその姉がいるっていうのに、よくそこまでコケに出来るわね」


 呆れはするが、妹を庇う気は一切ない。

「変に勘違いをされないための、シナリオじゃない」

 私は言った。

「過去に私とあんたは、あの馬鹿2人を好きだった。でも、2人して慰め合っているうちに、だんだんお互いのことを好きになっていった。先に浮気だのなんだのと糾弾されたのはこっち側だけど、もとはと言えばあいつらが悪いよっていうストーリーなの。確かに過去はそうだったかもしれないけど、今はあなたたちのこと全然好きじゃないってスタンスで行くの」


 最悪の場合でも、と続ける。

「私たちはあくまで、噂を広げるだけ。嘘を真にするわけじゃない。何かあったときのために、ユージーンはリリオーネと付き合っているというのは誤解だと、あなたがみんなに訂正すれば良いわ」

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

私と元彼と新しい恋人

恋愛 / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:16

【本編完結】旦那様、政略結婚ですので離婚しましょう

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:5,204pt お気に入り:6,941

リセット結婚生活もトラブル続き!二度目の人生、死ぬときは二人一緒!

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:3,578pt お気に入り:42

sweet!!-short story-

BL / 連載中 24h.ポイント:149pt お気に入り:618

16年目のKiss

恋愛 / 完結 24h.ポイント:120pt お気に入り:162

【完結】では、さっさと離婚しましょうか 〜戻る気はありませんので〜

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,512pt お気に入り:5,016

お飾り公爵夫人の憂鬱

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,789pt お気に入り:1,801

処理中です...