そんなに別れたいとおっしゃるなら、承知いたしました

小倉みち

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身分

「は? だから、私は殿下の――」

「確かに殿下の恋人ではあるでしょうけれど、それ以前にあなたは庶民ですよね。ただの」

「……」


 レナは黙り込んだ。


 自身が庶民であることに、コンプレックスでも抱いているのだろうか。


「上か下かなんて、私たちはそんなことを言っているわけではありません。あくまでもあなたに『さん』づけをして、きちんと1生徒として扱っています。しかしあなたが殿下だの王家だのと権力を用いようとするなら、こちらもそうするまでです。貴族の権限を用い、無理やりにでもあなたを罰するでしょう」


「我々は、あなたにしているんです」

 と、生徒会長。

「良いですか? あなたは学園の生徒であり、それは殿下も我々も変わりません。ただの生徒として、我々はあなたの行動を咎めているということをお忘れなきよう」


「……」


 レナは何も言わない。

 しかし反論することもないから、話は一応これで終了したということなのだろうか。


 謝罪も何も言わないが、そこはまあ仕方がない。


「以上で、我々の話は終わります。ほかに言うことがなければ、これで」


 生徒会長の言葉で、みんなが空き教室から出て行こうとする。


 そんな私たちに向かって、レナは震える声で言った。


「……殿下に捨てられたくせに」


 どうやら、私に文句が言いたいらしい。


 強張る一同を他所に、私はため息をついて後ろを振り返った。


「殿下に捨てられた、中古品のブスのくせによくも言えるわよね」

「中古品かブスかどうかという、今の言葉は聞かなかったことにします」


 これ以上揉めても仕方がないので、私は暴言を受け流した。


「しかし一言アドバイス差し上げるならば、あなたは妃教育を受けていらっしゃいませんよね?」

「は? 何それ?」

「王子妃、ひいては王妃となるための特別な教育のことです。私は殿下と婚約した幼いころより、ずっと陛下より命じられて学んでいました」

「それが何? 自慢?」

「自慢ではありません。第一王子妃となる者として、当然の行いです」


 私は続ける。

「あなたは、殿下に王妃を任されたと聞き及んでおります。実際私もこの目でしかと見ましたから、殿下の本心なのでしょう。しかしあなたは今その教育を受けていない。そうですよね?」


 それはあくまで、レナは殿下の恋人でしかない。

 婚約者でも、王家に認められた存在でもなく、ただ殿下と私的な関係にある人物として表される。


 つまり、その殿下の言葉は口約束でしかないものだ。


「あなたは殿下の権力を笠に着ようとしていますが、現実それは不可能な話です。あなたの立場は薄氷にも満たない場所にある。いくら殿下と関係があろうが、貴族社会におけるあなたの存在意義はないに等しい。もしもこれからここで生きていきたいと考えるなら、分別をつけて、もっと周りを見て行動することですよ」


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