そんなに別れたいとおっしゃるなら、承知いたしました

小倉みち

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揉め事

 ティファニーの言う通り、殿下のレナに対する暴力事件はうやむやになった。
 
 レナが庶民であるというのが大きな理由だろう。


 王家も、公爵家の人間である私に対してはそれなりの態度――と言っても、最終的になかったことにされたが――を取ったきたが、男爵家の、しかもたかが庶民であるレナに対して謝罪する気にはなれなかったのだろう。


 まあ、当然良い行動ではない。

 正直かつての殿下を見ている手前、大きな声では言えないが、現国王陛下と王妃陛下はあまり良い両親、為政者とは言えない。


 公爵家の人間である私が、王家の批判をするわけにはいかないが。

 理想の統治者ではないことは確かだ。


 庶民だからと謝罪やらなんやらを疎かにするのはどうかと思う。


 だがまあ、多少なりとも治療費は払っていることだろう。

 もはや赤の他人である私が、2人の問題にとやかく何かを言うつもりはない。


 ――しかし。

 そうも言ってられない事態が起きた。


 レナの父親が、学園に殴り込みに来たのだ。


 いつものように授業を受けていた私たちは、廊下から聞こえる怒鳴り声で身体を硬直させた。


「なんのつもりだ!」

「お前たちのせいで、娘が怪我をしたんだぞ!」


 見知らぬ声。

 私たちは困惑して、顔を見合わせる。


「誰?」

「危ない人?」

「うーん。だけどもしそうなら、学園にはそもそも入ってこれないかと思うけど」


 口々に話をする生徒たち。


「少し待っていてくださいね。様子を確認してきます」


 このままだと授業にならないと踏んだ教師は、教室から顔を出す。


「どうされまし――あっ」

 教師が口を両手で押さえる。


「公爵令嬢スカーレットを出せ!」

 
 廊下にいる男が大声で叫んだ。


「そしてセシル殿下もだ! 私の娘に暴力を働いた理由をきっちり教えてもらうぞ!」

 

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