そんなに別れたいとおっしゃるなら、承知いたしました

小倉みち

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脱出先 ~レナ視点~

 ちょうど良いタイミングだったのだとは思う。

 父の元から脱出するのタイミングとしては、非常にギリギリだった。


 あの人のせいにする男は、慰謝料請求を私のせいにするのだろうと思った。

 確かに私は当事者だが、そんなことで慰謝料を請求しようとする公爵家の心の狭さにびっくりだが、そうもこうも言ってられない。


 実際にその性格の悪い公爵家から通達があったのは事実で、さらに言えばそれは奴らの権力による拘束力があった。


 父は男爵の座を捨てるか、多大な金銭を公爵家に支払うかの2択を迫られることとなったのだ。


 それに気づいた瞬間、私は逃げることを決意した。


 逃げよう。

 いや、逃げなきゃ。


 男爵家の中での私の立場は非常に不安定だ。


 私は父に娘とは認められていないし、義母も私の存在を快く思っていない。

 そんな中で、手っ取り早いサンドバックになるのは使用人たちではなく私だ。


 私は着の身着のままで屋敷を飛び出した。

 一応、礼儀として置手紙は残したが。


 当てはあった。

 良く学園の男どもとつるんでいた宿屋兼娼館。


 あそこなら、貴族の血を引く私を喜んで引き取ってくれるだろう。


 ……言っておくけど、庶民の私が生き残るのはそれしか方法がなかっただけだ。


 連中ももともと庶民で浮いている感じだったから私とも気があった。

 ついでに小遣いも稼げるし、一石二鳥だ。


 そんなこともつゆ知らず、王子が私に求婚したのは正直面白かったが。

 ただあの男とて、結局のところスカーレットの当てつけで私に近づいたに過ぎなかった。


 ――いや、もう王子のことを考えるのは止そう。

 王子も、貴族のことも。


 あれはもう夢の話。

 私には到底及ばない場所にある世界だった。


 父に対する復讐は、慰謝料という多大な負債を背負わせたことで成し遂げた。

 
 後は存分に男を手玉に取りつつ、金持ちの男に水揚げされる日をのんびりと待つことにしよう。


 

 

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