婚約者のせいで友達が出来ないんですが

小倉みち

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第1章

お付き合い

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 えっ。

 えっ。

 えっ!?


「お、お付き合い、ですか……?」

「ええ、そうですわ」


 彼女は悪びれもなく大きく頷いて同意した。

「お付き合い!?」

「はい、そうです。先ほどからそう申し上げておりますが」


 冷静になってみると、どう考えても婚約者のいる男に手を出して付き合っているとか言う彼女が加害者で、私は圧倒的な被害者なのだけれど。


 彼女の開き直った態度というか、そんなの当たり前なんですがという全く後ろめたさも引け目も何1つ感じられないその態度に驚いて、私はしばらく声が出せなかった。


 えっ。

 嘘。

 マジで!?


 だって殿下、あの人死ぬほど忙しいんじゃ。


 私の知っている殿下の公務は、常人が行えば半日で発狂する。

 3回回ってワンと鳴いてどこかへ逃走し、二度と城へ戻ってこないレベル。


 私は彼の仕事を肩代わりしたことは今までに一度もないけれど、彼が公務をこなしている姿は間近で何度も目撃した。


 見ているだけで気分が悪くなったし、実際家に帰ってから我慢出来ずに吐いたこともある。


 それほど忙しい人が、婚約者である私に声をかけつつバレずに浮気なんて出来るのだろうか。


 でも、この目の前の女子生徒が嘘をついているのにはどうしても見えなかった。


「ほ、本当なんですか……?」

「だから」


 テレサはイライラしているようだ。


「先ほどから付き合っていると言っているではありませんか! 何度も言いますが、殿下と私は愛し合っています。殿下もあなたと別れて私を婚約者にしたいと。ですから、あなたの了承さえあれば良いんです!」

「そ、そう……」


 その勢いに私は気圧される。


 そっか。

 殿下が浮気。


 あの完璧超人にも女好きという弱点が。

 ちょっとショック。


 ――いやでも。

 待って。


 ということは。

 ということは、私は殿下と別れるってこと?


 殿下の不貞によって、というか殿下が望んで、私は殿下と別れる。


 殿下は私が友人ゼロである諸悪の根源。


 ということは。

 ということは。


 私は、かねてからの願いだった友達が作れる!?


「そうですか」


 私はテレサの目を真っすぐに見つめる。

「そこまで愛し合われているのね」

「ええ。そうよ」

「そうであれば、悲しいですが私は身を引きます」

「えっ」

「いろいろとありがとうございました!」

「ありがとうございました?」

「あっ、間違えました……。殿下とお幸せに! では、私は帰りますので!」

「えっ、ちょっと!」

「さようなら!」


 私は満面の笑みで彼女に声をかけ、体育館裏から走り去った。


 最高。

 最高の気分だわ。


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