11 / 46
第1章
その後
しおりを挟む
数日間、なんの音沙汰もなかった。
いつものように殿下が話しかけ、私がその場から逃走する日々。
変わったのはその殿下の周りに、ウロチョロとテレサが出現し始めたこと。
彼女は何度か私の目の前で、殿下の腕を取ろうと試みていたが、殿下は素早くその手を払い除けた。
別に良いのに。
私は思った。
2人がデキていて、しかもラブラブであることを私は知っている。
隠そうとしなくても、なにも問題はないのに。
それに、私は彼に婚約破棄を了承する手紙を送ったはずだ。
彼がそれを受け取った時点で、私たちの婚約は破棄される。
送ってから数日経っているので、もう手紙は届いているはずなんだけど。
殿下は相変わらずで、周囲の生徒たちも変わりない。
あれ?
私たちって、婚約破棄したよね?
気のせいだったの?
もしかして、夢?
――いや、そんなわけない。
確かに今、テレサは殿下の目の前をうろうろしているし。
ってことは、夢ではないはず。
もしかして、まだ殿下の元には手紙が届いていないのかしら?
途中で握り潰された?
――それは嫌だ。
困る。
せっかく別れられると思っていたのに。
「やあ、セレーナ。おはよう」
今日も殿下は笑顔だ。
爽やかな笑顔で、私に話しかけてくる。
「……おはようございます」
「今日も元気がないね。一体どうしたんだい?」
あなたのせいですよ。
とは言えず、
「あはは……」
と引きつった笑い声を出した。
「何よ、あの女」
「相変わらず陰気ねぇ」
「コーネリアス殿下に失礼よ」
「本当、相応しくないわぁ」
外野の声が聞こえる。
「ねぇ、殿下ぁ」
テレサはベタベタと殿下の腕を触ろうとする。
殿下は無言でそれを払いのけ、私に1歩近づいた。
「僕は心配なんだ」
「心配?」
「だって、君は僕の婚約者じゃないか」
婚約者?
ちょっと待って。
「えっ、殿下。私とはもう別れましたわよね?」
思わず突いて出た疑問の言葉を聞いて、殿下及び周囲の人間は水を打ったように静まり返った。
「婚約破棄を了承した手紙は、先日城へ送ったはずです。もしかして、届いてないですか?」
「ちょ、ちょっと待て。誰が、誰と、婚約破棄だって……?」
殿下は困惑したように瞬きを何度もする。
「私と殿下です」
「なんで僕が君と別れなければいけないんだ?」
「だって、彼女と殿下はお付き合いしているのでしょう?」
私は、殿下とテレサを交互に見た。
「私、彼女から聞きましたわよ。
『殿下と私はお付き合いしている』
『愛し合っている』
『だから、殿下と別れてほしい』
『殿下もこのことを了承している』
って」
殿下は初めてテレサの顔を見た。
彼女の顔は、土気色だ。
「だから、私など気にしなくても良いのです。もう殿下とは別れたと考えていますし――どうか、お2人ともお幸せに」
「セ、セレーナ! 待ってくれ! 何かの行き違いが」
私は颯爽とその場を立ち去り、教室へ向かった。
その場にいる誰も彼も、私の悪口を言わず、黙って私を見つめている。
これでようやく、私は自由だわ。
邪魔者はもういない。
友達、たくさん作ってやる。
いつものように殿下が話しかけ、私がその場から逃走する日々。
変わったのはその殿下の周りに、ウロチョロとテレサが出現し始めたこと。
彼女は何度か私の目の前で、殿下の腕を取ろうと試みていたが、殿下は素早くその手を払い除けた。
別に良いのに。
私は思った。
2人がデキていて、しかもラブラブであることを私は知っている。
隠そうとしなくても、なにも問題はないのに。
それに、私は彼に婚約破棄を了承する手紙を送ったはずだ。
彼がそれを受け取った時点で、私たちの婚約は破棄される。
送ってから数日経っているので、もう手紙は届いているはずなんだけど。
殿下は相変わらずで、周囲の生徒たちも変わりない。
あれ?
私たちって、婚約破棄したよね?
気のせいだったの?
もしかして、夢?
――いや、そんなわけない。
確かに今、テレサは殿下の目の前をうろうろしているし。
ってことは、夢ではないはず。
もしかして、まだ殿下の元には手紙が届いていないのかしら?
途中で握り潰された?
――それは嫌だ。
困る。
せっかく別れられると思っていたのに。
「やあ、セレーナ。おはよう」
今日も殿下は笑顔だ。
爽やかな笑顔で、私に話しかけてくる。
「……おはようございます」
「今日も元気がないね。一体どうしたんだい?」
あなたのせいですよ。
とは言えず、
「あはは……」
と引きつった笑い声を出した。
「何よ、あの女」
「相変わらず陰気ねぇ」
「コーネリアス殿下に失礼よ」
「本当、相応しくないわぁ」
外野の声が聞こえる。
「ねぇ、殿下ぁ」
テレサはベタベタと殿下の腕を触ろうとする。
殿下は無言でそれを払いのけ、私に1歩近づいた。
「僕は心配なんだ」
「心配?」
「だって、君は僕の婚約者じゃないか」
婚約者?
ちょっと待って。
「えっ、殿下。私とはもう別れましたわよね?」
思わず突いて出た疑問の言葉を聞いて、殿下及び周囲の人間は水を打ったように静まり返った。
「婚約破棄を了承した手紙は、先日城へ送ったはずです。もしかして、届いてないですか?」
「ちょ、ちょっと待て。誰が、誰と、婚約破棄だって……?」
殿下は困惑したように瞬きを何度もする。
「私と殿下です」
「なんで僕が君と別れなければいけないんだ?」
「だって、彼女と殿下はお付き合いしているのでしょう?」
私は、殿下とテレサを交互に見た。
「私、彼女から聞きましたわよ。
『殿下と私はお付き合いしている』
『愛し合っている』
『だから、殿下と別れてほしい』
『殿下もこのことを了承している』
って」
殿下は初めてテレサの顔を見た。
彼女の顔は、土気色だ。
「だから、私など気にしなくても良いのです。もう殿下とは別れたと考えていますし――どうか、お2人ともお幸せに」
「セ、セレーナ! 待ってくれ! 何かの行き違いが」
私は颯爽とその場を立ち去り、教室へ向かった。
その場にいる誰も彼も、私の悪口を言わず、黙って私を見つめている。
これでようやく、私は自由だわ。
邪魔者はもういない。
友達、たくさん作ってやる。
16
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】仕事のための結婚だと聞きましたが?~貧乏令嬢は次期宰相候補に求められる
仙冬可律
恋愛
「もったいないわね……」それがフローラ・ホトレイク伯爵令嬢の口癖だった。社交界では皆が華やかさを競うなかで、彼女の考え方は異端だった。嘲笑されることも多い。
清貧、質素、堅実なんていうのはまだ良いほうで、陰では貧乏くさい、地味だと言われていることもある。
でも、違う見方をすれば合理的で革新的。
彼女の経済観念に興味を示したのは次期宰相候補として名高いラルフ・バリーヤ侯爵令息。王太子の側近でもある。
「まるで雷に打たれたような」と彼は後に語る。
「フローラ嬢と話すとグラッ(価値観)ときてビーン!ときて(閃き)ゾクゾク湧くんです(政策が)」
「当代随一の頭脳を誇るラルフ様、どうなさったのですか(語彙力どうされたのかしら)もったいない……」
仕事のことしか頭にない冷徹眼鏡と無駄使いをすると体調が悪くなる病気(メイド談)にかかった令嬢の話。
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
側妃の愛
まるねこ
恋愛
ここは女神を信仰する国。極まれに女神が祝福を与え、癒しの力が使える者が現れるからだ。
王太子妃となる予定の令嬢は力が弱いが癒しの力が使えた。突然強い癒しの力を持つ女性が異世界より現れた。
力が強い女性は聖女と呼ばれ、王太子妃になり、彼女を支えるために令嬢は側妃となった。
Copyright©︎2025-まるねこ
【完結】結婚式前~婚約者の王太子に「最愛の女が別にいるので、お前を愛することはない」と言われました~
黒塔真実
恋愛
挙式が迫るなか婚約者の王太子に「結婚しても俺の最愛の女は別にいる。お前を愛することはない」とはっきり言い切られた公爵令嬢アデル。しかしどんなに婚約者としてないがしろにされても女性としての誇りを傷つけられても彼女は平気だった。なぜなら大切な「心の拠り所」があるから……。しかし、王立学園の卒業ダンスパーティーの夜、アデルはかつてない、世にも酷い仕打ちを受けるのだった―― ※神視点。■なろうにも別タイトルで重複投稿←【ジャンル日間4位】。
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる