26 / 46
第2章
放課後
しおりを挟む
放課後。
約束通り私は王家専用の馬車で城へ向かうため、殿下と合流しようと彼の教室へ向かった。
……視線が痛い。
私と殿下が「婚約破棄」したことは、学園中に広まっている。
つまり、殿下とのはかなきランデヴーという夢のまた夢にチャンスが訪れたころで、令嬢たちは現在非常にいきり立っていた。
彼女たちはお互いの出所を探りながら、絶対に自分こそは次の婚約者に――なんていう願望を一面に押し出している。
しかしその「元婚約者」であるセレーナが、コーネリアス殿下に会いに彼の教室に向かって――。
そういう得も言われぬ殺意が、私の身体にまとわりついて離れない。
おかげで、悪寒が止まらない。
私は小走りで教室へ向かい、扉をノックする。
殿下は特別室だ。
この学園では、王族と貴族が混在している場所となっている。
が、当然貴族と王族は別物だ。
圧倒的に王族が上。
その2つを差別化するために、王族と貴族の教室は階も何もかも分けられている。
その王族の中でも、現在トップの地位を誇っている殿下。
彼はさらに特別扱いを受けており、特別教室という空間で豪勢な待遇を受けている。
「失礼します」
私は向こう側に声をかけた。
が、返事はない。
私は首を傾げる。
ここにいると思ったんだけどなあ。
しかし、奥からはかすかに人の声がする。
となると、この教室は無人じゃないはず。
ではなぜ、私の声に反応しないのだろう。
もしかして、聞こえていない?
私はもう一度ノックする。
が、返事はない。
私は廊下の壁にかかっている掛け時計を眺めた。
約束の時間が迫っている。
ここでずっと立ち止まっていても、時間の無駄だ。
無礼を承知で、私は扉をガチャリと開けた。
「失礼しまーす」
「あっ、ちょっ」
私はペコリと頭を下げ、教室全体を見渡し――。
「……」
「……」
「……」
城の一角のように豪奢な部屋の中で、背の高い男性生徒と女子生徒が抱き合っていた。
いや、正確には抱きつかれている?
男子生徒は、焦ったような表情で私を見つめている。
女子生徒の顔は死角になって見えないが、彼女が誰かはシルエットでなんとなく想像出来た。
テレサだ。
そして、その相手は――。
「コーネリアス殿下」
「ち、違うんだ」
何が違うというのだろう。
私は一瞬頭が真っ白になった。
完全に混乱した私は、しばらく口をぱくぱくと死にかけた魚のように動かした後、ふと我に返って、
「し、失礼しました。教室間違えちゃいました……」
と、わけのわからないことを言って扉を固く締めた。
約束通り私は王家専用の馬車で城へ向かうため、殿下と合流しようと彼の教室へ向かった。
……視線が痛い。
私と殿下が「婚約破棄」したことは、学園中に広まっている。
つまり、殿下とのはかなきランデヴーという夢のまた夢にチャンスが訪れたころで、令嬢たちは現在非常にいきり立っていた。
彼女たちはお互いの出所を探りながら、絶対に自分こそは次の婚約者に――なんていう願望を一面に押し出している。
しかしその「元婚約者」であるセレーナが、コーネリアス殿下に会いに彼の教室に向かって――。
そういう得も言われぬ殺意が、私の身体にまとわりついて離れない。
おかげで、悪寒が止まらない。
私は小走りで教室へ向かい、扉をノックする。
殿下は特別室だ。
この学園では、王族と貴族が混在している場所となっている。
が、当然貴族と王族は別物だ。
圧倒的に王族が上。
その2つを差別化するために、王族と貴族の教室は階も何もかも分けられている。
その王族の中でも、現在トップの地位を誇っている殿下。
彼はさらに特別扱いを受けており、特別教室という空間で豪勢な待遇を受けている。
「失礼します」
私は向こう側に声をかけた。
が、返事はない。
私は首を傾げる。
ここにいると思ったんだけどなあ。
しかし、奥からはかすかに人の声がする。
となると、この教室は無人じゃないはず。
ではなぜ、私の声に反応しないのだろう。
もしかして、聞こえていない?
私はもう一度ノックする。
が、返事はない。
私は廊下の壁にかかっている掛け時計を眺めた。
約束の時間が迫っている。
ここでずっと立ち止まっていても、時間の無駄だ。
無礼を承知で、私は扉をガチャリと開けた。
「失礼しまーす」
「あっ、ちょっ」
私はペコリと頭を下げ、教室全体を見渡し――。
「……」
「……」
「……」
城の一角のように豪奢な部屋の中で、背の高い男性生徒と女子生徒が抱き合っていた。
いや、正確には抱きつかれている?
男子生徒は、焦ったような表情で私を見つめている。
女子生徒の顔は死角になって見えないが、彼女が誰かはシルエットでなんとなく想像出来た。
テレサだ。
そして、その相手は――。
「コーネリアス殿下」
「ち、違うんだ」
何が違うというのだろう。
私は一瞬頭が真っ白になった。
完全に混乱した私は、しばらく口をぱくぱくと死にかけた魚のように動かした後、ふと我に返って、
「し、失礼しました。教室間違えちゃいました……」
と、わけのわからないことを言って扉を固く締めた。
7
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】仕事のための結婚だと聞きましたが?~貧乏令嬢は次期宰相候補に求められる
仙冬可律
恋愛
「もったいないわね……」それがフローラ・ホトレイク伯爵令嬢の口癖だった。社交界では皆が華やかさを競うなかで、彼女の考え方は異端だった。嘲笑されることも多い。
清貧、質素、堅実なんていうのはまだ良いほうで、陰では貧乏くさい、地味だと言われていることもある。
でも、違う見方をすれば合理的で革新的。
彼女の経済観念に興味を示したのは次期宰相候補として名高いラルフ・バリーヤ侯爵令息。王太子の側近でもある。
「まるで雷に打たれたような」と彼は後に語る。
「フローラ嬢と話すとグラッ(価値観)ときてビーン!ときて(閃き)ゾクゾク湧くんです(政策が)」
「当代随一の頭脳を誇るラルフ様、どうなさったのですか(語彙力どうされたのかしら)もったいない……」
仕事のことしか頭にない冷徹眼鏡と無駄使いをすると体調が悪くなる病気(メイド談)にかかった令嬢の話。
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
側妃の愛
まるねこ
恋愛
ここは女神を信仰する国。極まれに女神が祝福を与え、癒しの力が使える者が現れるからだ。
王太子妃となる予定の令嬢は力が弱いが癒しの力が使えた。突然強い癒しの力を持つ女性が異世界より現れた。
力が強い女性は聖女と呼ばれ、王太子妃になり、彼女を支えるために令嬢は側妃となった。
Copyright©︎2025-まるねこ
【完結】結婚式前~婚約者の王太子に「最愛の女が別にいるので、お前を愛することはない」と言われました~
黒塔真実
恋愛
挙式が迫るなか婚約者の王太子に「結婚しても俺の最愛の女は別にいる。お前を愛することはない」とはっきり言い切られた公爵令嬢アデル。しかしどんなに婚約者としてないがしろにされても女性としての誇りを傷つけられても彼女は平気だった。なぜなら大切な「心の拠り所」があるから……。しかし、王立学園の卒業ダンスパーティーの夜、アデルはかつてない、世にも酷い仕打ちを受けるのだった―― ※神視点。■なろうにも別タイトルで重複投稿←【ジャンル日間4位】。
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる