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ミツの告白をただ静かに聞いていることしかできなかった。
本当は、ミツの話した内容は事前に調査して知っていた。
アイツがずっと家に帰っていないこと。
この2年、日に日にアイツがミツの元に戻っていないこと。
アイツがミツ以外の『番』を作って、そちらを優先していること。
前回の発情期から、一切の連絡を取っていないこと……
他にも色々と人を使って調べた。
ミツに黙って、知られないようにアイツの現状を調べた。
でも、それ以上に俺とアイツにはミツの知らない秘密がある。
ミツには教えていないが、俺とアイツは従兄弟だ。
幼い頃から俺のことを勝手にライバル視してきていた。
俺の父親が祖父の会社を継いでからは、嫌がらせはエスカレートしていったように思える。
ただ、俺はアイツには一切興味すら湧かなかった。
父が社長になろうが俺には関係ない。
アイツが継ぎたいというなら、俺はそれでもよかった。
父が何か言っていたが、俺にはやりたいことが別にあったし、ミツが居てくれれば他に欲しいモノなんて何もなかった。
だから、アイツにミツが狙われた。
俺が唯一大切にしている人だったから……
「ハルくん、この人が僕の今の恋人だよ。シゲルさんはね、すっごく優しくていい人なんだよ」
幸せそうに笑みを浮かべ、俺にアイツを紹介してきたミツ。
ミツが見ていない時のアイツの勝ち誇った顔を、俺は今でも忘れることができない。
俺の大切な愛しいΩを奪っておきながら、アイツはミツを裏切った。
次の発情期には必ず側に居ると約束をしていたくせに、アイツは一度もミツの元に戻らなかった。
ミツの期待を、ミツの願いを、ミツの想いを知っていて、ことごとく全てを踏みにじった。
アイツの、シゲルの行動は、全て俺への嫌がらせでしかない。
ミツが壊れようと、衰弱死しようと、アイツは気にしないだろう。
最初から、ミツを愛してなんていないんだから……
そんなに、ミツを使って俺を傷付けたいのか……?
番の解消をしないのも、俺への嫌がらせでしかない。
アイツのせいで、現状俺にはミツを救い出すことができない。
Ωは番であるαの所有物でしかない。
Ωの人権は当然あるが、アイツのような性根の腐ったαは愛してもいないΩのことなどモノとしか考えていないだろう。
だからこそ、番であるミツに対して、こんな酷い仕打ちができるんだ……
本当に嫌になる。
俺たちのことなんてほっといて欲しいのに、父親もアイツも、俺たちに干渉してくる。
俺への嫌がらせなら、ミツを解放してくれればいいのに……
俺が、ミツを手放せないから……
深い溜息が漏れてしまう。
こんなこと、ミツにだけは知られたくない。
あんな奴でも、ミツは心からアイツのことを愛してるんだから……
「ミツ……傷が増えちまうから……」
爪の剥がれた指でうなじを引っ掻こうとしているミツの手を、できるだけ優しく握りしめて制する。
少し傷口に触れるだけでも力が抜けそうなくらいの痛みがあるくせに、ミツは恨めしそうにうなじを自ら傷付けようとする。
握りしめたミツの手は、傷口が開いてしまったのか血で包帯を赤く染めていた。
「……ミツ、痛い、だろ……?」
労わるようにミツの手にそっと口付けを落とすも、拒絶反応が出ている様子は一切ない。
だが、ミツの表情は自身が拒絶反応を出ていないことに対して、傷付いているような、今にも泣き出しそうな笑みを浮かべていた。
やっぱり、今のミツをあの家に帰すことはできないな……
アイツが戻って来ていないのはわかっているが、万が一、今のミツを見てあのことを口にしたら……
ミツには教えられない秘密が、今はもう一つある。
調べれば調べる程、アイツの信じられない報告が幾つも上がってくる。
いつかはミツに話すべきだと思っているが、それは今じゃない。今じゃなくていい。
「ミツ……」
「ハルくん、大丈夫。大丈夫、だから……このまま僕の手を離さないで……」
ミツ自身から触れて欲しいと言われ、ミツの身体を心配する気持ち以上に嬉しさの方が勝ってしまう。
「ミツ、無理しなくていいからな?俺が触れて、本当に平気なのか?」
このまま抱き締めたい気持ちを抑え、ミツの身体を気遣う。
「大丈夫。ハルくんに触って貰えるの、嬉しい。痛いのも、ハルくんが触ってくれると少しましになるから……」
少し恥ずかしそうに答えながらも、昔から見ていた優しい笑みを浮かべてくれるミツに愛しさが溢れ出してしまい、そっと慈しむように抱きしめる。
愛しくてたまらない最愛のΩ。
「……とりあえず、小林のところに行こう。アイツの病院ならミツも安心だろ?」
ミツの後頭部を優しく撫でながら諭すように声をかける。
俺とミツ、共通の友人であり腐れ縁の奴が経営しているΩ専用の病院。
アイツ自身が色々訳アリなことから、色々と問題を抱えたΩや番から逃げてきたΩなど、様々な奴がアイツを頼りに通っている。
ミツもアイツが相手なら、素直に症状を口にできるかもしれない……
それに、アイツは俺たちのことも全部知っているしな……
頼りになる友人の存在についつい溜息が漏れる。
本音を言うと、俺ひとりでミツを助けてやりたい。
でも、今のミツを普通の病院に連れて行けば、嫌がってもΩの精神病院へ入院を勧められるだろう。
そうなれば、シゲルの思った通りになってしまう。
アイツは、ミツを気にせず入院させるだろう。
俺がミツに会えなくなり、苦しむ様を見て喜ぶのだろう……
しかも、ミツに対して、体のいい厄介払いができたと思うだけなんだろうな……
「小林も心配してたから……。ミツ、アイツに顔を見せに行かないか?」
ミツの不安を少しでも和らげようと小林の名前を口にする。
ミツは少しだけ不安そうな顔をしていたものの、俺の胸にポスンと頭を預けるように寄り掛かってきて、小さく頷いてくれた。
もう少し……
もう少しだけ、このまま俺の側にいて欲しい。
必ず助け出すから……必ず……
本当は、ミツの話した内容は事前に調査して知っていた。
アイツがずっと家に帰っていないこと。
この2年、日に日にアイツがミツの元に戻っていないこと。
アイツがミツ以外の『番』を作って、そちらを優先していること。
前回の発情期から、一切の連絡を取っていないこと……
他にも色々と人を使って調べた。
ミツに黙って、知られないようにアイツの現状を調べた。
でも、それ以上に俺とアイツにはミツの知らない秘密がある。
ミツには教えていないが、俺とアイツは従兄弟だ。
幼い頃から俺のことを勝手にライバル視してきていた。
俺の父親が祖父の会社を継いでからは、嫌がらせはエスカレートしていったように思える。
ただ、俺はアイツには一切興味すら湧かなかった。
父が社長になろうが俺には関係ない。
アイツが継ぎたいというなら、俺はそれでもよかった。
父が何か言っていたが、俺にはやりたいことが別にあったし、ミツが居てくれれば他に欲しいモノなんて何もなかった。
だから、アイツにミツが狙われた。
俺が唯一大切にしている人だったから……
「ハルくん、この人が僕の今の恋人だよ。シゲルさんはね、すっごく優しくていい人なんだよ」
幸せそうに笑みを浮かべ、俺にアイツを紹介してきたミツ。
ミツが見ていない時のアイツの勝ち誇った顔を、俺は今でも忘れることができない。
俺の大切な愛しいΩを奪っておきながら、アイツはミツを裏切った。
次の発情期には必ず側に居ると約束をしていたくせに、アイツは一度もミツの元に戻らなかった。
ミツの期待を、ミツの願いを、ミツの想いを知っていて、ことごとく全てを踏みにじった。
アイツの、シゲルの行動は、全て俺への嫌がらせでしかない。
ミツが壊れようと、衰弱死しようと、アイツは気にしないだろう。
最初から、ミツを愛してなんていないんだから……
そんなに、ミツを使って俺を傷付けたいのか……?
番の解消をしないのも、俺への嫌がらせでしかない。
アイツのせいで、現状俺にはミツを救い出すことができない。
Ωは番であるαの所有物でしかない。
Ωの人権は当然あるが、アイツのような性根の腐ったαは愛してもいないΩのことなどモノとしか考えていないだろう。
だからこそ、番であるミツに対して、こんな酷い仕打ちができるんだ……
本当に嫌になる。
俺たちのことなんてほっといて欲しいのに、父親もアイツも、俺たちに干渉してくる。
俺への嫌がらせなら、ミツを解放してくれればいいのに……
俺が、ミツを手放せないから……
深い溜息が漏れてしまう。
こんなこと、ミツにだけは知られたくない。
あんな奴でも、ミツは心からアイツのことを愛してるんだから……
「ミツ……傷が増えちまうから……」
爪の剥がれた指でうなじを引っ掻こうとしているミツの手を、できるだけ優しく握りしめて制する。
少し傷口に触れるだけでも力が抜けそうなくらいの痛みがあるくせに、ミツは恨めしそうにうなじを自ら傷付けようとする。
握りしめたミツの手は、傷口が開いてしまったのか血で包帯を赤く染めていた。
「……ミツ、痛い、だろ……?」
労わるようにミツの手にそっと口付けを落とすも、拒絶反応が出ている様子は一切ない。
だが、ミツの表情は自身が拒絶反応を出ていないことに対して、傷付いているような、今にも泣き出しそうな笑みを浮かべていた。
やっぱり、今のミツをあの家に帰すことはできないな……
アイツが戻って来ていないのはわかっているが、万が一、今のミツを見てあのことを口にしたら……
ミツには教えられない秘密が、今はもう一つある。
調べれば調べる程、アイツの信じられない報告が幾つも上がってくる。
いつかはミツに話すべきだと思っているが、それは今じゃない。今じゃなくていい。
「ミツ……」
「ハルくん、大丈夫。大丈夫、だから……このまま僕の手を離さないで……」
ミツ自身から触れて欲しいと言われ、ミツの身体を心配する気持ち以上に嬉しさの方が勝ってしまう。
「ミツ、無理しなくていいからな?俺が触れて、本当に平気なのか?」
このまま抱き締めたい気持ちを抑え、ミツの身体を気遣う。
「大丈夫。ハルくんに触って貰えるの、嬉しい。痛いのも、ハルくんが触ってくれると少しましになるから……」
少し恥ずかしそうに答えながらも、昔から見ていた優しい笑みを浮かべてくれるミツに愛しさが溢れ出してしまい、そっと慈しむように抱きしめる。
愛しくてたまらない最愛のΩ。
「……とりあえず、小林のところに行こう。アイツの病院ならミツも安心だろ?」
ミツの後頭部を優しく撫でながら諭すように声をかける。
俺とミツ、共通の友人であり腐れ縁の奴が経営しているΩ専用の病院。
アイツ自身が色々訳アリなことから、色々と問題を抱えたΩや番から逃げてきたΩなど、様々な奴がアイツを頼りに通っている。
ミツもアイツが相手なら、素直に症状を口にできるかもしれない……
それに、アイツは俺たちのことも全部知っているしな……
頼りになる友人の存在についつい溜息が漏れる。
本音を言うと、俺ひとりでミツを助けてやりたい。
でも、今のミツを普通の病院に連れて行けば、嫌がってもΩの精神病院へ入院を勧められるだろう。
そうなれば、シゲルの思った通りになってしまう。
アイツは、ミツを気にせず入院させるだろう。
俺がミツに会えなくなり、苦しむ様を見て喜ぶのだろう……
しかも、ミツに対して、体のいい厄介払いができたと思うだけなんだろうな……
「小林も心配してたから……。ミツ、アイツに顔を見せに行かないか?」
ミツの不安を少しでも和らげようと小林の名前を口にする。
ミツは少しだけ不安そうな顔をしていたものの、俺の胸にポスンと頭を預けるように寄り掛かってきて、小さく頷いてくれた。
もう少し……
もう少しだけ、このまま俺の側にいて欲しい。
必ず助け出すから……必ず……
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