オレとアイツの関係に名前なんていらない

こうらい ゆあ

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 昨日、やらかしてしまった失態のせいで気が重い。
 千鶴にちゃんと会って話したいのに、許して貰える自信が持てない。
 自分が悪いことをしたのは、十分わかっている。
 でも、熱があるとは言え、うわ言で聞いた告白に舞い上がってしまった。
 やっと千鶴が素直になってくれたって思って、すっごく嬉しかった。
 普段、セックスをしてトロトロになるまで甘やかして、イキ過ぎてホワホワになった時でも絶対に言ってくれなかったから……
 千鶴からの『好き』って言葉が、ホントに嬉しくてしかたなかった。

 高熱で意識もハッキリしてない相手だとわかっていたはずなのに、大好きな恋人からの告白に舞い上がらない奴はいないと思う。
 ずっと大好きで、愛しくてしかたない、素直になれない恋人。
 ノラ猫みたいにツンツンしてて、でも快楽に弱くて、流されやすい可愛い恋人。

 でも、だからって高熱を出した相手に手を出すのはダメだと思う。
 投薬のためだからって、俺もイタズラし過ぎた自覚はある。
 うん。アレは本当にダメだったって反省してます。

 寝落ちしたってのがわかった時に引き抜けばよかった。
 でも、可愛すぎる千鶴を相手してて、俺も限界で……
 抜かなきゃダメだってわかってたのに、我慢できずに中に出してしまった。
 その後にすぐ抜けばよかったのに、俺に縋るようにギュッと抱き着いてくる千鶴が可愛すぎて……
 離れようとしたら、意識がないはずなのに、イヤイヤと首を振って縋り付いてくる千鶴が可愛くて……
 ちょっとイタズラしたら、可愛い声が啼くから抜くこともできなかった。

 多分、千鶴が寝落ちしてたのは30分くらいのはずだけど、千鶴のナカが熱くて気持ち良くて……
 目を覚ました千鶴に手加減できなかった。
 こんなに自分が自制の利かない人間だと思ってもみなかった……

 合わせる顔なんてないのはわかってる。
 正しい謝罪の言葉も思い浮かばない。
 許して貰える自信なんてどこにもない。
 千鶴が自ら俺の上に乗ってきて、自分でペニスを挿れてきたとはいえ、意識が朦朧としている相手にエロいことをした事実は変わらない。

 あと……色々誤解があるみたいだから、ちゃんと話し合いたい。
 千鶴が言ったこと。涙ながらに言ってきたこと。
 あれだけは、絶対に訂正しないと後悔することになると思う。
 今後の俺たちの関係のためにも、今すぐ千鶴に会って話し合わなきゃいけない。

 
 でも、朝から何処を探しても千鶴は見つからなかった。
 校内のどこを探しても、千鶴の姿は見当たらない。
 千鶴と同じ学科の奴に聞いても出席してるかわからないと言われた
 俺的には本来嬉しいことだけど、千鶴の人付き合いの悪さはちょっと心配になる。
 こういう時、頼りたくはないが、やっぱりアイツに聞くしか方法はない。
 千鶴の唯一の友人(一応)である東野ひがしの
 アイツに聞いてみたら「ちゃんと今日は来てるよ」って、当然のように言ってきた。
 少し前まで一緒にゼミ室にいたらしいから、そう遠くには行ってないはずなのに……

 別の教室にも、研究室に行っても見つからない。
 食堂に行ったら、俺のダチに見付かって、昨日適当に別れたことに対して文句を言われた。
 今はアイツらよりも、千鶴に会いたいのに……

 昨日休んでたから、図書館に居るかも?って思ってたけど、当然のようにアテは外れた。
 何処を探しても見つからない。
 メッセージを送っても、当然のように既読スルーされる。
 既読してくれてるだけ、ちょっとだけマシなのかもしれない。
 でも、焦りばかりが募っていく。

 千鶴に会いたい。
 千鶴を抱きしめたい。
 千鶴に会って、謝って、改めてちゃんと告白したい。
 ずっと好きだったって……
 本当は、昨晩もずっと一緒に居たかったって……
 熱を出してる相手を襲ったみたいになってしまったことは、ちゃんと素直に謝ろう。
 そして、千鶴を俺だけのモノにしたいって、『愛してる』って、改めて言おう。

「……中庭?とか、居ないかな……」
 中庭というには誰も来ない場所。
 研究棟からも、学科棟からも離れた不便でしかない場所。
 俺と千鶴が、初めて出会った場所。

 なんでだろう?何故かあそこにいるんじゃないかって確信があった。
 千鶴なら、あのベンチにまたいるんじゃないかって……
 ゆっくり歩いて向かっていたはずなのに、足はいつの間にか早歩きに変わり、校舎を出る頃には走っていた。

 意外に距離のあるあの場所に向かって、息を切らせながら走った。
 今すぐ会いたくて……
 これ以上離れたら、もう捕まえられない気がして……
 全速力で走るなんて、何年振りかわからないのに……

 ◇ ◇ ◇
 
 柔らかな陽射しが降り注ぐ中庭に、千鶴の姿は見つからなかった。
 肩で息をしながらゆっくり呼吸を整えつつも、がっくりと肩を落とす。
 ココなら千鶴がいると思っていたのに……
 人影がないことに落ち込みつつも、諦めることができなくて、中庭をゆっくりと見て回ることしかできなかった。
 ココは、壁沿いにベンチがいくつも設置されている。
 大きめの樹も何本も植えられているから、死角が多い。
 もしかしたら……きっと、この裏に……
 期待を何度も裏切られながらも、諦めきれずにひとつひとつ確認していく。

 中庭の中でも一番奥まった場所に隠されているベンチの上に横たわる人影。
 猫みたいに小さく丸まって、陽射しから逃げるみたいにパーカーのフードを被って眠る彼。
 少し顔色が悪いように見えるが、すよすよと気持ち良さげに寝ている顔を見るとつい顔が綻んでしまう。
「はぁ……やっぱりココに居た」
 起こさないようにベンチの前にしゃがみ込み、間近で千鶴の寝顔を見つめる。

「ちぃ、昨日はごめんね……」
 起こさないように小さく呟いたつもりだったのに、黒くて長い睫毛が微かに震えた後にゆっくり目が開いていく。
 まだ寝ぼけているのか、ボーっとした様子で焦点の合わない目。
 眠そうに目元を手の甲でクシクシと擦る様子は、子猫みたいで本当に可愛かった。
「ちぃ、おはよ」
 千鶴の寝起き姿が可愛すぎて、無意識に頬が緩んでしまう。
 ちゃんと謝らなきゃいけないのはわかっているけど、今は可愛すぎる千鶴が悪いと思う。

 徐々に目が覚めて来たのか、小さく欠伸を漏らし、伸びをした後に俺の顔を嫌悪感たっぷりの表情で睨み付けてくる。
「……何?大学でも寝込みを襲うつもりだったのか?オレはお前の都合のいいオナホになったつもりは一切ないんだけど」
 ベンチに置いてあったリュックを乱雑に持って立ち上がり、そのまま逃げようとする千鶴の腕を咄嗟に掴む。
「触んな!新しい彼女ができたんだから、オレみたいなオナホ以下のヤツは用無しなんだろ?昨日のはさっさと忘れて、早く新しい彼女のところに行けよ」
 誤解したまま怒りを俺に向けてくるけれど、よく見ると千鶴の耳は赤く、どこか恥ずかしそうな様子だった。
 
 顔を見たいけど、リュックが邪魔で顔が見えない。
 【オナホ以下の存在】とか、意味の分からないことを言っている千鶴に文句を言いたいけど、なぜか泣いているような声に文句なんて言えない。
「千鶴、昨日は本当にごめん。お願いだから……逃げないで……」
 哀願する様に千鶴に声を掛ける。
 握った腕が微かに震えているのがわかり、胸が締め付けられるように痛い。

「ちぃ……頼むから、俺の話を聞いてくれない?お願いだから……俺から逃げないで……」
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