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どんなに酷い境遇でも、自分を助けてくれて愛してくれる。そんな自分だけの王子様がいつか来てくれるって、夢みたいなことを信じていた



本当に、バカみたいな夢



先に買われたあの子は、小さい頃に将来を誓っていた番なんだって
大金を出して買われて…きっと近い未来は幸せいっぱい

その後に買われたあの子も、買主が真実の愛を見つけたとかで、末永く幸せになる

前に買われて行ったあの子、上手に逃げれたんだ。
あ、今は気になる人が出来て幸せそう

あの子も、大丈夫。キミも幸せになれるよ。
今はツラいけど、もうすぐ助けがくるから…



人の未来は見れるのに、ボクの行く先の夢は真っ暗
目隠しがあってもなくても一緒
ボクには、光なんて見えないから…




「お次は予知夢が見えると言われるこの鳥族の仔です!
この珍しい色の羽根!飾るも装飾品にするも良し!
身体はまだ男も女も知らぬ真っ新な状態!
瞳は今はお見せ出来ませんが、魔力持ちを現す鮮やかな金です!
まずは500万からスタート!!」

魔力持ち
この半獣が多く住む世界で、魔力持ちは忌避にされている
厄災を呼ぶとか、気味が悪いとか…
瞳の色だけで判断は出来ないけど、ボクのは当たりだね
他の人よりも鮮やかな金の瞳を黒い布で覆われて隠されている


子どもが出来ないって嘆いていた村の叔母さんにもう少ししたら双子が産まれる夢のことを言ったら気味が悪いと言われた

お父さんが帰って来ないって泣く友だちの女の子を安心させようとして、夢の内容を言ったら泣かれた

ボクの夢が当たれば当たるほど、人が離れていく

村が河に流される夢を見て、怖くなって大人に告げた
みんなギリギリ逃げれたけど、ボクは感謝されるどころか、厄災を運んできたと言われた

背中にある羽で逃げようとしたけど、子どもの力が大人に敵うはずもない
風切り羽は切られ、脚の腱も切られたから逃げようもない



檻の中で、この競りが終わるのをジッと待つ



鳥族は奴隷の中でも一番人気がない
兎族のように可愛くも妖艶でもない
猫族のように俊敏でもない
犬族のように力があるわけでもない



誰かが買ってくれるのか、廃棄として娼館に流されるのか、実験動物になるのか…

ボク自身の夢は見れないから、どんな未来が来るのかはわからない

ただ、ボクには王子様が来ないってことだけは知ってる
他のみんなみたいにキラキラした、温かい香りがしないから…



「550万!これ以上はないですね!!」

格安での落札
買手がついただけ喜んだらいいのかな…
それとも、他の子みたいに泣いて絶望したらいいのかな…





目隠しを外されることはなく、首輪を付けられたまま馬車に乗せられていくのはわかった
久々に感じる外の風が気持ち良い

馬車がガタガタ揺れるせいで座っていても倒れそうになるものの、なんとか縁を掴んで耐える

何処にいくんだろう…
買手がどんな人なのか、声も聴いていないから全くわからない
ただ、今から行く場所からはもう逃げれない事実だけ




最初は羽だった
ブチブチ抜かれるのは痛かった

泣き叫んだ翌日は、舌を半分にされた
呂律が回らなくなった。もともと、痛みを訴えるしかなかったけど…

精液を取るため、と言われてお腹のナカをめちゃくちゃに犯された
その日からこの行為は日課にされてしまった

爪を剥がされ、血を抜かれた
魔力がどこにあるのか調べてるらしい

麻薬の量が増えて、頭が回らない
起きているのか寝ているのか、喘いでいるのか叫んでいるのか、全てが遠くに感じる

いつの間にか、右手が肘からなくなっていた
痛いよりも熱くて…何も考えられない

背中の羽を付け根から取られた
片方まだ残ってるけど、少し動くだけで気を失いそうな痛みが全身を駆け巡る

左脚がなかった
元から逃げれなかったけど、もうどこにも行けない




「そろそろ、魔力が溜まっただろ」
初めて、目隠しをしていた布が外された

買主はネズミの半獣のようだが、歪に色々混ざっているような、目だけが異様な金色に輝いていて、すごく不気味な男だった

ボクの右眼が見たのはこれが最期

スプーンのような器具で、果物でも掬うようにボクの目玉を繰り抜いた

「イッ!?ぎゃあああああああぁっ!!!!」

冷たい金属が瞼と目の間に差し込まれる嫌な感覚
麻薬で痛感が鈍っているはずなのに、脳が焼けるような痛みに全身で叫び声を上げる

コロンと簡単に繰り抜かれたボクの右眼を嬉しそうにお皿に載せる

自分の眼のはずなのに、知っている色よりもずっと色が濃く輝いていた
魔力が眼に集まっているようだった




この日、買われてから初めて夢を見た

買主が沢山の兵に捕まって、何かを叫んでいる
ボクの他に連れて来られた子たちの死体の山
バラバラになっている子
ボクみたいに一部取られて冷たくなっている子
みんな、眼を空っぽにされていた

ボクは、どっちになるのかな…





目覚めたくないのに、痛みで目が覚めた
お腹を切られているのか、呼吸がしにくい

早く死んで楽になりたいのに、死なない程度に少しずつ、少しずつ、切り刻まれて食べられる

命が少しずつ削られていくのを感じた




呼吸するだけて、全身が痛い
全身が燃えるように熱くて、喉が渇く
咳き込むと全身に痛みが響き、咳と一緒に血が溢れ出すだけだった



部屋が騒がしい
鎧を着た人がいっぱい入ってきて、買主を殴っている
何かを叫んでいるけど、何を言っているのか理解出来ない

「オイ、生きているのか?」
ボクに声を掛けてくる人
ボンヤリとしか見えないけど、買主を捕まえた人の一人らしい
重々しい鎧がガチャガチャいっている

「血で変色しているが、青色の羽と髪、コイツで間違いないな」
ボクの特徴
珍しい鮮やかな青
村のみんなは綺麗な黒色の髪と羽根なのに、ボク一人だけこんな色だった
この色も、みんなに嫌われる理由の一つだった


「酷いな…これで、よく生きてたものだ…」
声を掛けてくれた人がボクを綺麗な布に巻いて慎重に運んでくれる


安堵よりも、また夢が当たってしまったことが悲しかった
また人に嫌われてしまう

まだ生きていることが悲しかった
こんな苦しい時間、早く終わって欲しい

また連れて行かれるのが悲しかった
ボロボロになったボクに出来ることはもうないから、また切られて薬漬けにされる

早く、早く…楽にさせて欲しい…
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