28 / 46
ずっと、しあわせでいたい
4
しおりを挟む
「キミ、ひとり?」
背後から急に声をかけられ、慌てて振り返る
「ぇっ…?」
見たこともない知らない男性が2人、笑顔で僕に声を掛けてきた
誰かと間違っているのかと、キョロキョロと辺りを見渡すも、いつの間にか周りには誰も居らず、足湯に浸かっているのは僕ひとりだけだった
「男の子?でも、可愛い系の美人だし、全然アリじゃん」
「ひとりならこの辺り案内してあげるよ~。俺ら何回も来たことあるから、穴場とか美味しいお店も知ってるし」
いきなりの出来事に思考が追いつかず、拒絶しようにも声が出ない
まだ知らない人との会話が苦手な僕にとって、今の状況は怖くて堪まらない
「ぁ、あの…えっと…つ、連れが…いるので…」
やっと絞り出すように言った声も小さ過ぎて彼らの耳には届かず
「ん?何か言った?脚キレイだね~。温泉入らなくてもスベスベじゃん」
急に脚を撫でられ、気持ち悪さから鳥肌が立ってしまう
「やっ…やめっ…」
「いきなりはセクハラだろ~」
ケタケタ笑いながら脚を触ってきた人を揶揄するもうひとりの男性
「でも、ホント嫌がり方も可愛すぎだろ。もしかしてΩだったり?」
Ωという単語にビクッと反応してしまう
普段、士郎さんが優しくしてくれるから、Ωの立ち位置を忘れてしまう
「もしかして、マジでΩなのか?ラッキー♪Ωってエロいこと好きなんだろ?フェロモンがβの俺らでも感じれるのか試そうぜ?
大丈夫、怖いことはしないって。ただ、いっぱい気持ちよくしてやるだけだから」
両脇から腕を掴まれ、無理矢理立ち上がらされる
ニヤニヤ笑う笑顔が怖くて、掴まれた腕が気持ち悪くて
逃げたくても怖くて身体に力が入らない
声を出したいのに、恐怖で言葉も出なくて、ただ、拒絶したい一心で俯きながらもイヤイヤと言うように首を左右に振る
「…しろ、さ…たすけ…て…」
絞り出すようにやっと出た声は掠れてちゃんと出なかった
「俺の番に何か用ですか?」
真後ろから大好きな人の声が聞こえ、勢いよく顔を上げて振り返る
いつもよりずっと低く、怒気の孕んだ声で、殺気を放っていたが、顔を見た瞬間に安堵してしまう
慌てて彼らの腕を振り払い、足元が汚れるのも気にせずに裸足のまま士郎さんに駆け寄って抱き着く
「…ぁ…ふっ…」
何か言いたいのに、言葉に出来ない
士郎さんの胸に顔を埋め、胸いっぱいに彼の匂いを吸い込むとやっと張り詰めていた緊張の糸が切れた
「士郎、さん…士郎さん…」
彼の名前を何度も呼びながらギュッと抱き着き、涙が溢れ落ちてしまうのを止めることが出来なかった
「雪兎、怖かったね。ひとりにして、ごめんね。」
抱き締めてくれる腕の暖かさに安堵する
耳元で囁かれる士郎さんの声に安心してしまう
「つ、番…の方が、居たんですね…す、すみませんでしたっ!!?」
男性らは士郎さんに向かって90度のお辞儀をして謝り、逃げるように走り去って行った
「士郎、さん…ごめ、なさい…」
落ち着いてくると、自分の不甲斐なさに落ち込んでしまい俯く
足元を見ると、夢中で駆け寄ったこともあり、濡れた裸足のままだったコトを思い出す
雪は降ってないものの、冬の石畳の冷たさと水で濡れた足はどんどん体温を奪っていき、カタカタと寒さから小さく震えてしまう
「ごめん、なさい…。足、洗って来るね」
少しだけ顔を上げ、なんとか笑顔を作るも上手には笑えなかった
「雪兎、謝らなくていいよ。足、怪我しちゃうからじっとしてて」
ふわりっと軽々と抱き上げられ、近くの手洗い場に連れて行かれる
出てくる水も温泉なのか、冷たくない
士郎さんの肩に凭れるように座らされ、汚れた脚を洗ってくれる
じんわりと冷え切った足先が温められていく
さっきの人に脚を触られた時は、気持ち悪くて嫌で仕方なかったのに、士郎さんだと身体が熱くなってしまう
「雪兎、フェロモンが溢れてる。俺が触るのは嬉しい?」
無意識にフェロモンが漏れ出てしまっていることが恥ずかしいのに、士郎さんの嬉しそうな顔を見ると、つい素直に頷いてしまう
「士郎さん、だから…。士郎さんには、いっぱい触って欲しいから…」
綺麗になった脚を拭いて貰い、靴を履き直す
「雪兎、ごめんね。そろそろ旅館に戻ろうか…
雪兎に触れたくて、俺が我慢できなくなってしまったから」
悪戯っぽく小さく舌を出す士郎さんの仕草にお腹の辺りがキュンッてしてしまう
恥ずかしくて、小さくコクンと頷くことしか出来なくて、手を引かれるように観光地を後にした
背後から急に声をかけられ、慌てて振り返る
「ぇっ…?」
見たこともない知らない男性が2人、笑顔で僕に声を掛けてきた
誰かと間違っているのかと、キョロキョロと辺りを見渡すも、いつの間にか周りには誰も居らず、足湯に浸かっているのは僕ひとりだけだった
「男の子?でも、可愛い系の美人だし、全然アリじゃん」
「ひとりならこの辺り案内してあげるよ~。俺ら何回も来たことあるから、穴場とか美味しいお店も知ってるし」
いきなりの出来事に思考が追いつかず、拒絶しようにも声が出ない
まだ知らない人との会話が苦手な僕にとって、今の状況は怖くて堪まらない
「ぁ、あの…えっと…つ、連れが…いるので…」
やっと絞り出すように言った声も小さ過ぎて彼らの耳には届かず
「ん?何か言った?脚キレイだね~。温泉入らなくてもスベスベじゃん」
急に脚を撫でられ、気持ち悪さから鳥肌が立ってしまう
「やっ…やめっ…」
「いきなりはセクハラだろ~」
ケタケタ笑いながら脚を触ってきた人を揶揄するもうひとりの男性
「でも、ホント嫌がり方も可愛すぎだろ。もしかしてΩだったり?」
Ωという単語にビクッと反応してしまう
普段、士郎さんが優しくしてくれるから、Ωの立ち位置を忘れてしまう
「もしかして、マジでΩなのか?ラッキー♪Ωってエロいこと好きなんだろ?フェロモンがβの俺らでも感じれるのか試そうぜ?
大丈夫、怖いことはしないって。ただ、いっぱい気持ちよくしてやるだけだから」
両脇から腕を掴まれ、無理矢理立ち上がらされる
ニヤニヤ笑う笑顔が怖くて、掴まれた腕が気持ち悪くて
逃げたくても怖くて身体に力が入らない
声を出したいのに、恐怖で言葉も出なくて、ただ、拒絶したい一心で俯きながらもイヤイヤと言うように首を左右に振る
「…しろ、さ…たすけ…て…」
絞り出すようにやっと出た声は掠れてちゃんと出なかった
「俺の番に何か用ですか?」
真後ろから大好きな人の声が聞こえ、勢いよく顔を上げて振り返る
いつもよりずっと低く、怒気の孕んだ声で、殺気を放っていたが、顔を見た瞬間に安堵してしまう
慌てて彼らの腕を振り払い、足元が汚れるのも気にせずに裸足のまま士郎さんに駆け寄って抱き着く
「…ぁ…ふっ…」
何か言いたいのに、言葉に出来ない
士郎さんの胸に顔を埋め、胸いっぱいに彼の匂いを吸い込むとやっと張り詰めていた緊張の糸が切れた
「士郎、さん…士郎さん…」
彼の名前を何度も呼びながらギュッと抱き着き、涙が溢れ落ちてしまうのを止めることが出来なかった
「雪兎、怖かったね。ひとりにして、ごめんね。」
抱き締めてくれる腕の暖かさに安堵する
耳元で囁かれる士郎さんの声に安心してしまう
「つ、番…の方が、居たんですね…す、すみませんでしたっ!!?」
男性らは士郎さんに向かって90度のお辞儀をして謝り、逃げるように走り去って行った
「士郎、さん…ごめ、なさい…」
落ち着いてくると、自分の不甲斐なさに落ち込んでしまい俯く
足元を見ると、夢中で駆け寄ったこともあり、濡れた裸足のままだったコトを思い出す
雪は降ってないものの、冬の石畳の冷たさと水で濡れた足はどんどん体温を奪っていき、カタカタと寒さから小さく震えてしまう
「ごめん、なさい…。足、洗って来るね」
少しだけ顔を上げ、なんとか笑顔を作るも上手には笑えなかった
「雪兎、謝らなくていいよ。足、怪我しちゃうからじっとしてて」
ふわりっと軽々と抱き上げられ、近くの手洗い場に連れて行かれる
出てくる水も温泉なのか、冷たくない
士郎さんの肩に凭れるように座らされ、汚れた脚を洗ってくれる
じんわりと冷え切った足先が温められていく
さっきの人に脚を触られた時は、気持ち悪くて嫌で仕方なかったのに、士郎さんだと身体が熱くなってしまう
「雪兎、フェロモンが溢れてる。俺が触るのは嬉しい?」
無意識にフェロモンが漏れ出てしまっていることが恥ずかしいのに、士郎さんの嬉しそうな顔を見ると、つい素直に頷いてしまう
「士郎さん、だから…。士郎さんには、いっぱい触って欲しいから…」
綺麗になった脚を拭いて貰い、靴を履き直す
「雪兎、ごめんね。そろそろ旅館に戻ろうか…
雪兎に触れたくて、俺が我慢できなくなってしまったから」
悪戯っぽく小さく舌を出す士郎さんの仕草にお腹の辺りがキュンッてしてしまう
恥ずかしくて、小さくコクンと頷くことしか出来なくて、手を引かれるように観光地を後にした
394
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
さかなのみるゆめ
ruki
BL
発情期時の事故で子供を産むことが出来なくなったオメガの佐奈はその時のアルファの相手、智明と一緒に暮らすことになった。常に優しくて穏やかな智明のことを好きになってしまった佐奈は、その時初めて智明が自分を好きではないことに気づく。佐奈の身体を傷つけてしまった責任を取るために一緒にいる智明の優しさに佐奈はいつしか苦しみを覚えていく。
人生2度目に愛した人は奪われた番の息子でした
Q矢(Q.➽)
BL
幼馴染みだったαの村上 陽司と早くに番になっていた南井 義希は、村上に運命の番が現れた事から、自然解除となり呆気なく捨てられた。
そして時が経ち、アラフォー会社員になった南井の前に現れたのは、南井の"運命"の相手・大学生の村上 和志だった。同じビルの別会社のインターン生である彼は、フェロモンの残り香から南井の存在に気づき、探していたのだという。
「僕の全ては運命の人に捧げると決めていた」
と嬉しそうに語る和志。
だが年齢差や、過去の苦い経験の事もあり、"運命"を受け入れられない南井はやんわりと和志を拒否しようと考える。
ところが、意外にも甘え上手な和志の一途さに絆され、つき合う事に。
だが実は、村上は南井にとって、あまりにも因縁のありすぎる相手だった――。
自身のトラウマから"運命"という言葉を憎むアラフォー男性オメガと、まっすぐに"運命"を求め焦がれる20歳の男性アルファが、2人の間にある因縁を越えて結ばれるまで。
◆主人公
南井 義希 (みない よしき) 38 Ω (受)
スーツの似合う細身の美形。 仕事が出来て職場での人望厚し。
番を自然解除になった過去があり、恋愛感情は枯れている。
◆主人公に惹かれ口説き落とす歳下君
村上 和志 (むらかみ かずし)20 α (攻)
高身長 黒髪黒目の清潔感溢れる、素直で一途なイケメン大学生。 " 運命の番"に憧れを抱いている。複雑な事情を抱えており、祖父母を親代わりとして育つ。
◆主人公の元番
村上 陽司 (むらかみ ようじ) 38 α
半端ないほどやらかしている…。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
俺は完璧な君の唯一の欠点
一寸光陰
BL
進藤海斗は完璧だ。端正な顔立ち、優秀な頭脳、抜群の運動神経。皆から好かれ、敬わられている彼は性格も真っ直ぐだ。
そんな彼にも、唯一の欠点がある。
それは、平凡な俺に依存している事。
平凡な受けがスパダリ攻めに囲われて逃げられなくなっちゃうお話です。
カメラ越しのシリウス イケメン俳優と俺が運命なんてありえない!
野原 耳子
BL
★執着溺愛系イケメン俳優α×平凡なカメラマンΩ
平凡なオメガである保(たもつ)は、ある日テレビで見たイケメン俳優が自分の『運命』だと気付くが、
どうせ結ばれない恋だと思って、速攻で諦めることにする。
数年後、テレビカメラマンとなった保は、生放送番組で運命である藍人(あいと)と初めて出会う。
きっと自分の存在に気付くことはないだろうと思っていたのに、
生放送中、藍人はカメラ越しに保を見据えて、こう言い放つ。
「やっと見つけた。もう絶対に逃がさない」
それから藍人は、混乱する保を囲い込もうと色々と動き始めて――
巣作りΩと優しいα
伊達きよ
BL
αとΩの結婚が国によって推奨されている時代。Ωの進は自分の夢を叶えるために、流行りの「愛なしお見合い結婚」をする事にした。相手は、穏やかで優しい杵崎というαの男。好きになるつもりなんてなかったのに、気が付けば杵崎に惹かれていた進。しかし「愛なし結婚」ゆえにその気持ちを伝えられない。
そんなある日、Ωの本能行為である「巣作り」を杵崎に見られてしまい……
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる