【本編完結済】巣作り出来ないΩくん

雪兎の家族話

8

1人先にシャワーを浴び、汗を流して部屋に戻るとシーツに包まって静かにベッドに座っている理央を見付ける

「……………さぃ…」
顔を伏せったまま小さな声で何か言っている

理央のベッドの隣に座り、まだ少し赤い顔を覗き込む

「もう身体は大丈夫なのか？
俺も…アテられてしまい、身体に触れてすまなかった。
最悪の事態にはならなかったが、君も今後はこんなことにならないように気を付け…」
「別に良かったのに…」

不貞腐れように頬を膨らませている可愛らしい姿に溜息が漏れる
俺がどれだけ抑えることに必死なのかもわかっていない…
彼の態度についイライラして声が荒くなっとしまう

「良くないだろ。自分の身体をもっと大切にしなさい。
発情期ヒート事故にあったΩが、悲惨な状況になるのは、弟の話しで言っていただろう！」


パァーンッ！！
両頬を挟む様に平手で叩かれ、良い音が室内に鳴り響く

「うっさいねん！！弟さんの発情期ヒート事故とオレのはちゃう！オレは、ちゃんと龍月たつきさんやったらそれでもよかってん！」

勢いよく押し倒され、俺の上に覆い被さり勢いよく文句を言ってくる

「弟が好きとか、オレがその弟に似てるとか関係あらへん！
自分は自分のコトが好きやし、番になって一生側に居たるって言うてんねん！やのに、弟が弟がってうっさい！オレはアンタの弟やない！オレは朝倉理央って名前やし、オレの人生はオレのもんや！一緒にせんといて…オレの、こと…見てよ…オレ、アンタが好きなんよ…」

いつの間にかぼろぼろ泣きながら好きだと言ってくる理央の温かい涙が、俺の顔に落ちてくる
グシャグシャに顔を歪めながら泣くその顔から目が離せない

叩かれた頬が痛いはずなのに、それ以上に理央の泣き顔を見ている方が胸が痛い

「理央…」
名前を呼んだ瞬間、噛み付くように口付けをされ、言葉を飲み込む

「龍月たつきさん、オレのこと…ちゃんと見て…オレやとアカン？やっぱり弟さんやないと、アカン？オレのこと嫌いなら…もう消えるから…もう、会わへんから、ハッキリ言うて」
泣きながら言ってくる理央に言葉が詰まる
雪兎に似ているはずの理央なのに、彼を手放したくない
彼は弟じゃないのに…


「嫌だ…。お前まで、居なくなるなんて…それだけは、嫌だ」
力強く彼を抱きしめ、逃げないように後頭部を押さえて噛み付くように唇を奪う
舌で唇をこじ開け、熱い舌に自分の舌を絡み付けるようにして口内を嬲る
「んっ…ぁっ…、た、き…」
室内に濡れた音が響くもそれすら気にせず、長い間キスをしていた

チュパッとワザと音を立てて口を離すと二人の間で唾液が糸を引くのがわかる

呼吸もままならず、真っ赤な顔で荒い呼吸を繰り返す理央の唇を親指の腹で撫でると、ビクッと身体を震わせる姿を見て、雪兎の怯えた姿を思い出してしまいそれ以上触れることを躊躇ってしまう

「理央……ごめん…」
俺がこれ以上理央に触れることが出来ずにいると、頭を胸に押し付けるように抱き締められ、何度も優しく撫でられた

「えぇよ、オレ、龍月たつきさんのこと、ホンマに好きやから。
やから、時間が掛かってもえぇから、オレのコト好きになって…弟とは一緒にせんとって…」

彼の柑橘系の爽やかな甘い香り包まれながら、彼に触れられることに安堵してしまう


「理央…、ありがとう」