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第25話 オリジナルの結果発表

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 午前中の最後にあった「応援」もそうだったんだけど、俺達がやった「オリジナル」の結果は、全チームのオリジナルパフォーマンス終了後、審査員の採点を集計してすぐに発表される。
 審査員は先生や体育祭の運営委員の生徒の中から選ばれた人によって行われる。
 審査基準や採点方法についてはわからないが、審査員は端末に採点を入力するので、集計は簡単にできるらしい。
 グランドには、オリジナルを終えた全チームが、チームごとに固まって結果が発表されるのを待っている。

 集計が終わり、いよいよ結果発表の時がやってきた。
 応援の結果発表と同じなら、結果は3位から発表される。下位から発表すると、2位発表時点で自動的に1位がわかってしまい盛り上がりにかけるからだと思う。
 オリジナルの場合も同じなら、3位→2位→1位と発表し、その後、4位、5位、6位…と発表していく流れになるはずだ。

『それでは結果を発表します。3位――』

 アナウンスの声が流れ、いやらしいことにクラス名を言う前に溜めを作られる。この溜めの時間は、ドキドキとワクワクが入り混じった感じでなかなかに神経をもっていかれる。

『――4組』

 4組のオリジナルチームが歓声を上げる。
 自分達のやってきたことが評価されるというのは、誰にとっても嬉しいものだ。彼らの気持ちはわかる。
 とはいえ、俺は7組が呼ばれなかったことに、残念に思う気持ちと、ほっとした気持ちの両方を心に抱いていた。
 3位という結果自体は嬉しいとは思うが、同時に1位でも2位でもないと宣告されるわけで、その順位を複雑に思うのは仕方ないことではないだろうか。

 隣に座っている三間坂さんを見れば、俺と同じで緊張感のある顔をしている。
 オリジナルの競技前はまだ顔を赤くしてちょっと変な感じが残っていたけど、競技を終えた後はなぜかいつもの三間坂さんに戻っていた。
 二人三脚の時に何か思うことでもあったのかと危惧していたが、もしかしたらオリジナルの時間が近づいてきてることに緊張していただけなのかもしれない。
 あるいは、オリジナルの演技中に、何か三間坂さんの心を吹っ切らせるような何かがあった可能性もある。もっとも、俺の見ている範囲ではそういったものは見当たらなかったけど。

『続きまして、2位――』

 発表の奴め、まためちゃくちゃ溜めやがる!
 2位としてクラス名を言ってほしいって気持ちと、まだ言って欲しくないって気持ちとが、心の中でせめぎ合う。
 くそっ、体育祭の一競技で、ここまで心をざわつかされるとは思わなかったよ!

『――3組』

 3組のオリジナルチームが立ち上がって声を上げる。
 ほっとしたのと同時に焦る気持ちが俺の中で強くなってきた。
 これで、1位か4位以下の入賞圏外のどちらかに絞られた。
 この差は大きい。あまりにも大きい。
 先輩達に何度もダメ出しされ、他の生徒の前で一人踊らされてチェックされるようなこともあった。あれは恥ずかしかった。
 三間坂さんと一ノ瀬さんに協力してもらって、一緒に踊り、お互いに何度も動画を撮り合った。あれは楽しかった。
 そういったここまで積み重ねて来たものの結果が、今ここではっきりと示されるんだ。

 俺は改めて三間坂さんに顔を向ける。
 俺と同じように緊張で顔が強張っているかと思ったのに、緊張感自体は確かに感じるものの、三間坂さんの表情はどこかワクワクしているように見えた。
 不思議に思って、俺は三間坂さんに聞いてみる。

「三間坂さん、俺達が1位で呼ばれると思ってる?」
「当然じゃない!」

 俺は返す言葉を失う。
 確信しているかのように自信満々じゃないか。
 なんかすごいよ、三間坂さん。
 そこまで自分のやったことに自信が持てるなんて。

『いよいよ1位の発表です。今年の体育祭、オリジナルの1位は――』

 俺と三間坂さんは二人で見つめ合いながら、次の声を息を止めて待つ。

『――7組です!』

 三間坂さんの笑顔が弾けた。彼女の大きいけどちょっと吊り上がった猫のような目が大きく垂れて見える。
 俺もつられるように破顔し、立ち上がって右手のこぶしを空に突き立てた。

「やったぁぁぁぁぁ!!」

 俺だけでなくほかの人達もみんな立ち上がって歓喜の声を上げている。
 同じように立ち上がった三間坂さんと向かい合うと、俺は両手を胸の高さまで上げて手のひらを三間坂さんに向けた。意図を察した三間坂さんも同じように手のひらをむけてくる。

「いえぇぇぇぇぇい!」

 そのまま激しく三間坂さんとハイタッチを交わすと、俺は昂った感情のまま手を離さずに指に力を込めた。

「勝ったよ! 僕たち勝ったよ!」

 俺は掴んだままの三間坂さんの手をブンブン上下に振っていた。

「そ、そうだね……」

 急に三間坂さんがまた顔を赤くしてうつむく。
 けど、今度は俺もその理由を察した。

「ご、ごめん!」

 三間坂さんの柔らかな肌に食い込むくらい強く握っていた両手を、俺は慌てて離した。

「ううん、全然大丈夫……」

 皆がまだ興奮冷めやらぬ中、俺と三間坂さんだけはちょっと違うテンションで歓喜の輪の中に立つことになってしまった。

 こうして、俺の高校一年生の体育祭は終わりを迎えた。
 オリジナル1位という結果もあり、7組の総合順位は2位だった。惜しくも総合優勝を逃しはしたが、今年の体育祭は俺にとっては色んな意味で忘れられない体育祭となった。
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