偽りの僕を君は求めて

くれと

文字の大きさ
3 / 12

田舎町のとある男

しおりを挟む
俺の名前は君島俊輔。

二十五歳。新卒で就職して、今は社会人三年目だ。

地方の観光地でショップの経営をしている。

観光地のお土産屋さんというよりももう少しおしゃれなラインナップで商品を取り揃えているショップだ。俺はまだ若い方で経験も浅いわけだが、わけあってそこの店長をしている。

社会人といっても少し変わった職種であるため、普通の会社員とは少し生活のサイクルが異なる。閉店後にレジの〆作業や売上の管理をしなければならないが、開店時には出勤している必要がないため出勤時間は遅めだ。近年、残業や労働時間について問題視されているような世の中だ。基本的には8時間労働の定時勤務になっているため、労働時間が長くならないようにいなければならない時間に店舗にいるというようにしている。そうなると必然的に遅い時間帯の勤務になってしまうのだ。

地方の田舎町に住んでいるため、都会と違って車通勤が必須となる。電車は数分おきに発着するわけでもなく時間帯によっては一時間に一本ということもある。それに、駅直結のビルなんてものもなく、駅から職場までは数十分歩くことになる。車がないと忙しい社会人は地方では生きていけないのである。

今日も俺は寝ぼけ眼をこすりながら車を走らせる。帰りが遅い上に、俺はスマホをいじったりして夜更かしをするのが日課だ。そんなことをしなければもっと寝ていることができて眠くなることもないし健康的だということはわかっているのだが、どうしても止めることができないでいる。

そんな生活をしているから朝が苦手なのだが、田舎の風景は好きだ。心が洗われるというのだろうか。山や木、川を眺めていると心が和んでいく。特に朝や夕暮れの景色は好きだ。景色を眺めながら運転をするのは出勤時の僅かな楽しみの一つである。

ショップの従業員数は決して多くない。俺の仕事は経理処理や売上の管理、商品開発、コンプライアンス上の管理、それだけでなく商品の品出しや店舗の清掃など幅広い。従業員数を確保できていないため、一日中とにかく仕事に追われるのである。

経験の浅い俺は毎日勉強しながら必死に働いている。そうでもしなければとてもやってはいけない。

ショップの売上はあまり芳しくない。売上を高めていかなければ今後の運営も危うくなる。従業員が不満をもっていないかということも考えて行かなければならない。働き手がいなくなっても営業はできなくなる。ただでさえ人手不足で俺の仕事量も膨れ上がっていくばかりだ。決して規模は大きくないショップといっても経営者はあらゆる点に気を配らなければならない。

仕事は好きだ。やりがいもある。自分の仕事を全うしたいと思っている。だが、やはりストレスは溜まっていく。管理職を担っていくには俺は若すぎるのだ。

普段の俺はいろんなものを溜め込んでいる。

仕事で疲れ果てて休みの日は基本的に寝てばかりいる。プライベートは決して充実しているとは言い難い。誰かと会ったり遊んだりすることもない。一人であっても出かけたりすることも殆どない。気分転換をしたいという思いよりも、何をするにしても面倒だという気持ちの方が勝ってしまう。

そんなだから彼女だっていない。それどころか、俺は今まで一度たりともセックスというものをしたことがない。童貞なのだ。

いい歳をしてそれでいいのかとも思うのだが、卒業したくても体を重ねる相手もいない。相手を見つけようと努力することも億劫で、そもそも相手がいたとしても自らが童貞であるということを相手に知られることになる。。そう思うとすごく怖い。それに、俺はセックスに対して夢のようなものも抱いている。本当に好きな子とセックスがしたいという気持ちもあり、いかがわしいお店でささっと済ませるということもできないでいる。

そんな俺でもこれまで彼女がいなかったわけではない。中三の時に隣の席の子と初めて付き合った。その子はすごく積極的でそういうお誘いのようなものを受けたりもしていた。今思えば性的なことに関心が強いタイプの女の子だったのかもしれない。

だが、受験で忙しかったりセックスをするにしても家には親がいるし相手の家でも向こうの親に会ってしまったらどうしようとかそんなことを悩んでいたらいつの間にか機会を逃していた。そんなだから彼女は俺に飽きてしまったようで、そのまま自然消滅。中学を卒業してからは会っていない。高校に進学してから、その子はすぐに別の男と付き合ったという噂を聞いた。その時は不思議と何も感じなかった。

高二の時にもようやくできた彼女とはデートをしていても緊張して上手く話せなかったり、相手の家でそういう雰囲気になっても前戯はたどたどしく、いざ挿入となった時にはペニスが勃起せずに萎えたそれを彼女に冷たい目で見られた。そんなことがきっかけでその子ともすぐに別れてしまった。

それからというものの、俺は恋愛というものに大して自信がもてず大学では彼女を作ろうとしなかった。そのまま女の体を知らないまま大学を卒業し、社会人になった。

だが、そんな俺でも人並みに性欲はある。彼女がいた時も彼女に覆い被さることを想像しながら自慰行為に励んでいたりもした。彼女を作らなくなってからも毎日のように自らを慰めている。

今日も仕事が終わって家に帰ると、満たされない体は疼いて体は熱を持ち始めた。

ベッドの上に横たわってパンツをめくってみると、下腹部にへばりつくほどにペニスは硬直して反り返っていた。

二十代も半ばに差し掛かっているのに女の体を知らない。セックスの快楽も知らない。

そんな情けない体であるのに雄としての本能だけは沁みついているのか、射精の快楽を求めてペニスは昂っている。

それを恥じながらも俺はスマホを手に取った。

セックスに興じる相手もいない、性的なサービスを受けられるお店に行く勇気もない。そんな俺はSNSで画像や動画を見ながら自らを慰める。

特に最近ハマっているのはていっターというSNSアプリだ。

このアプリで俺は顔も知らない相手から体の画像を見せてもらっている。商業的なAVは金銭がないと体を交わらせる相手がいないことを俺に思い知らせているようであまり入り込めない。SNSで素人から個人的に体を見せて貰えた方が素直に興奮できるのだ。

俺は今日もていっターを開いて、ニ十歳の大学生「しゅんや」になる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

処理中です...