BL短編書き散らかし

智紗人

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ホールド My Hand 三

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 紗来良くんと次に会う約束をして、あっという間にその日になった。

 いま人生でイチバンそわそわしている。

 そして、世界でもICHIBANそわそわそわそわしくさっている、今現在おれよりそわそわしている奴はそういないだろう。

 そわそわという単語を覚えたてか、お前。とツッコんでくれる友も、今日は居ない。
 待ち合わせ場所に着いて、五分とたっていないが、桜太朗は緊張してきて、突如猛烈にトイレに行きたくなった。

 まだ、時間に余裕はある。
 いざ、トイレ。

 足早に近くの公衆トイレへ向かった桜太朗。トイレマークを見ながらそこへ足を踏み入れた。

どこかのデザイナーが設計したような公衆トイレ内は広々として、ピカピカの床にごみも見当たらない。
きれいだし人も居なくて落ち着く…。
などと思いながら用を足していると、人が入ってくる足音がして無人タイムは終了した。

 出し終えて、手を洗いに鏡の前へ向かう。
取り付けられている鏡がいちいち女優ライトになっており、それぞれ手洗い場がカラフルなマーブルガラスで出来ているお洒落な作りになっていた。

 手を洗っているうちに、出すものも出したからか、先ほどよりもだいぶ落ち着いてきた。

 鏡を見る。
 地黒のぱっとしない自分がうつっている。
 ニッと試しに笑顔を作ってみる。
 わるくないぞ…
 少しアホっぽいが。

 よし…次はキリッと不敵に笑ってみよう。
 ……………、…
 これは無しだ…

 散々鏡に向かい色んな表情をしつくした桜太朗は気持ちを切り替えるため、深呼吸をして目の前の自分をみていると、後ろに人影がうつって、びっくりした。

「…っ、……さ、くら、くん」

「どうも…、すいません。見なかったフリ、してあげようか迷ったけど、…位置的に無理」

 こういう時…謝られると余計羞恥心が
 今すぐ穴を掘って二年ぐらい冬眠したい。
 漫画とお菓子と毛布を持ち込んでひたすら眠り続け…
 ……いい。
「おい、起きてる?ヒトって目開きながら、ねれるんだね」

 初めて知った。と、隣で手を洗う紗来良くんに鏡越しに話しかけられてるのに現実感がない、でも夢…じゃない。

 そう気づけたのは、いつまでもぼんやりした桜太朗にしびれを切らしたのか、その無防備なほっぺたを紗来良につままれ、ひっぱられる感触がしたからだ。
 ほっぺを軽くつねられ、目が覚めたかのように狼狽え出した。
「うあ、あ…え?ええ、さくらくん。いはい…のびるから、やえて」
 そう言って手を外そうとしたが、触れるのに躊躇う。

「アンタのほっぺつまみやすい」

言いながら、片手で両頬をぶにぶに潰され唇を突き出した間抜けな顔になる。

 ほっぺたにつまみやすさがあるなんて知らなかった…。

 初めて言われる言葉にへえと間抜けな声しか出せないでいると、ふいに解放された。

 自由になった頬を撫でて桜太朗は少しだけ尖らせた口を開いてぼそりと呟いた。

「オレもつまみ返してやる」

 紗来良が自分の顔を指さす。
 それを見て桜太朗は首を縦に振る。

「いい…けど、後でね」

 その言葉と同時に人が立て続けに入ってきて自然に出口へ向かう。
 外へ出て行き先を確認する。

「今日紗来良くん家、ほんとに行っていい?」

「映画はいいの?」

「行く」

 けど、いいのか?
 展開はやすぎるような…少しドキドキと不安とこわさが行ったり来たりするのは、何でだ。


 「行こう、桜太朗さん」

 そう言って紗来良がハイと手を出した。

 ……?
 「つなご?手」

 …ぐホっ……っ
 つなご?手
 脳内で反射するように言葉がこだまする。

 バグパイプの甲高い演奏が鳴り響いた。

『えー、コホン。…今こそ全人類が手を繋ぐ時が来たと、わたくし倉本桜太朗は、ここに宣言したいと思います』

 ヒューー!
 ジャマイカの太鼓がズンドコ鳴り響き各国の人々がスタンディングオベーションでOHtaro !! OHtaro !!と拍手を贈った。

 桜太朗の空想は海を渡った。
 もしも今、サトリの人が居たら謝る。桜太朗はそう思った。

 しかし、紗来良を見ると桜太朗はすぐに正気に戻った。

「……、さくらくんは完全防備だから…おれは丸だしだよ?」

 前回と同じように帽子にサングラスをかけマスク着の紗来良のいで立ちを見て桜太朗は言った。

「…そうだね」
「………」

 そうだねって言いながら手は出したまま…さくらくんに…まるで繋がないのかと試されているようだ……

 深読みした桜太朗はあと一秒待てばそのまま繋いで居たはずだ。

 しかし、唐突に「あ」と紗来良が言うと、斜めに下げられたトートバッグへ手を突っ込んだ。そして帽子とマスクを取り出すと桜太朗へ渡した。

「…着けて」

 桜太朗は渡されたおしゃれな帽子を見つめ、ぜったい似合わないと思いながらもしぶしぶ被り、マスクもつけた。
「…」
「…よし、ハイ」
 のーりあくしょんなのか…正直だ、さくらくん。
「…」

 しかし差し出された手に、胸をドキドキさせながらも吸い寄せられるように桜太朗は手を重ねた。












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