25 / 36
八月 3話
しおりを挟む
「八月」
家から出て数歩の所で急に名前を呼ばれ、ハチはビクリと身体を揺らした。
聞き慣れた声に振り向くと、ジャージ姿のヒロがいた。
ハチはやっぱりヒロかよと思いながら口を開く。
「ビビるだろ」
「ビビ…ただ呼んだだけだ。」
「あーそうですね」
「こんな時間に何処に行く?」
「コンビニ」
「…俺も行こう」
「は?なんで」
「嫌か?」
「イヤだ」
と軽口を叩きながらも二人並んで歩き出す。
「こんな時間に走ってんの?」
ヒロの格好を見ながらハチは訊いた。
「ああ、気持ちいいぞ。お前も一緒にどうだ」
「や、いい」
「コンビニまで競争だな」
「なに言って、てオイっ!」
走り出したヒロに何となくハチも走り出す。
「待てよ!」
…あいつっ、速すぎる…待てって、言ってんのに。
「ヒロあほ止まれって…」
すぐに息が上がり、脚が止まりかけたが、何だかムカついてきたハチは火が着いてやけくそ気味に走りだした。
コンビニの前でストレッチなんかしてるヒロが遠目に見える。
こっちは掻く予定のない汗を流しているというのに…
しかし、肺が忙しなく動いて文句も言えないハチはよたよたとコンビニの駐車場まで歩いてようやく、ヒロの隣に辿り着く。
そのまま倒れ込みたかったが、我慢して座り込むことにした。
上下する胸に合わせて息を取り込む。
いつの間にかヒロが居なくなっていたのに気付いたハチは振り返ってコンビニかと思い、座ったまま眩しい店内を仰ぎ見た。
当然見える訳もないが、立って見ようと疲れ切った今は思わない。
そんなハチとは正反対に、入り口から颯爽と出てきたヒロが、手に持った飲み物を差し出してきた。
「…飲め」
「…、さんきゅ」
有り難く一口、二口飲んで一息つくとハチは不満そうに呟いた。
「汗がはりついて気持ちわりい」
「いい運動だな」
「誰のせい」
「走りたかったんじゃないのか」
「違う、おまえが走るから」
てか、走りたかったのお前だろ…
「帰るか」
「おい、はー…帰れば俺コンビニ寄るし」
ハチは小さくため息をついた後、マイペースすぎるヒロにそう言って立ち上がると尻をはたいた。
「何買うんだ?」
「……漫画」
「シャンプか?」
「うん、じゃーな」
「俺持ってるぞ、何ならやるが」
「……あいす買ってくる」
「ああ、待ってる」
家から出て数歩の所で急に名前を呼ばれ、ハチはビクリと身体を揺らした。
聞き慣れた声に振り向くと、ジャージ姿のヒロがいた。
ハチはやっぱりヒロかよと思いながら口を開く。
「ビビるだろ」
「ビビ…ただ呼んだだけだ。」
「あーそうですね」
「こんな時間に何処に行く?」
「コンビニ」
「…俺も行こう」
「は?なんで」
「嫌か?」
「イヤだ」
と軽口を叩きながらも二人並んで歩き出す。
「こんな時間に走ってんの?」
ヒロの格好を見ながらハチは訊いた。
「ああ、気持ちいいぞ。お前も一緒にどうだ」
「や、いい」
「コンビニまで競争だな」
「なに言って、てオイっ!」
走り出したヒロに何となくハチも走り出す。
「待てよ!」
…あいつっ、速すぎる…待てって、言ってんのに。
「ヒロあほ止まれって…」
すぐに息が上がり、脚が止まりかけたが、何だかムカついてきたハチは火が着いてやけくそ気味に走りだした。
コンビニの前でストレッチなんかしてるヒロが遠目に見える。
こっちは掻く予定のない汗を流しているというのに…
しかし、肺が忙しなく動いて文句も言えないハチはよたよたとコンビニの駐車場まで歩いてようやく、ヒロの隣に辿り着く。
そのまま倒れ込みたかったが、我慢して座り込むことにした。
上下する胸に合わせて息を取り込む。
いつの間にかヒロが居なくなっていたのに気付いたハチは振り返ってコンビニかと思い、座ったまま眩しい店内を仰ぎ見た。
当然見える訳もないが、立って見ようと疲れ切った今は思わない。
そんなハチとは正反対に、入り口から颯爽と出てきたヒロが、手に持った飲み物を差し出してきた。
「…飲め」
「…、さんきゅ」
有り難く一口、二口飲んで一息つくとハチは不満そうに呟いた。
「汗がはりついて気持ちわりい」
「いい運動だな」
「誰のせい」
「走りたかったんじゃないのか」
「違う、おまえが走るから」
てか、走りたかったのお前だろ…
「帰るか」
「おい、はー…帰れば俺コンビニ寄るし」
ハチは小さくため息をついた後、マイペースすぎるヒロにそう言って立ち上がると尻をはたいた。
「何買うんだ?」
「……漫画」
「シャンプか?」
「うん、じゃーな」
「俺持ってるぞ、何ならやるが」
「……あいす買ってくる」
「ああ、待ってる」
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
政略結婚したかった
わさび
BL
御曹司 朝峰楓× 練習生 村元緋夏
有名な事務所でアイドルを目指して練習生をしている緋夏だが、実は婚約者がいた。
二十歳までにデビューしたら婚約破棄
デビューできなかったらそのまま結婚
楓と緋夏は隣同士に住む幼馴染で親はどちらも経営者。
会社のために勝手に親達が決めた政略結婚と自分の気持ちで板挟みになっている緋夏だったが____
【完結】 同棲
蔵屋
BL
どのくらい時間が経ったんだろう
明るい日差しの眩しさで目覚めた。大輝は
翔の部屋でかなり眠っていたようだ。
翔は大輝に言った。
「ねぇ、考えて欲しいことがあるんだ。」
「なんだい?」
「一緒に生活しない!」
二人は一緒に生活することが出来る
のか?
『同棲』、そんな二人の物語を
お楽しみ下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる