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第09話 桜という名の月見草 桜井咲子の死
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「残念だが、もう手の施しようがない。手術してもこの娘は助からないだろう」
間先生が厳かに死亡宣言を下した。
傍らではキノコが伏せ目がちに死亡時刻を確認している。
誰もが頭を垂れ押し黙っている中、何が楽しいのか、源外の笑い声が不気味に闇の中を木霊した。
「いや~、驚いたなあ。わし、初めて見た。爆発オチで人が死ぬとこ……」
怪我人が出でも、死亡者が出ないのが爆発オチのお約束。
三十秒後にはすべてが元通りに復元されるから、作中に何度でも利用できるのだ。
源外だってそのお陰で命を永らえてるわけで、今朝の騒動が現実世界の出来事であれば既に十回くらいは死んでいる。
無論、巻き添えを喰った野次馬たちも今頃は一人残らず回復して、平素と変わらぬ授業を受けているはずで、桜井咲子を除けば誰一人実質的な被害者は存在しないことになる。
ではなぜ彼女だけが、--一年三組出席番号十八番桜井咲子だけが回復することなく死に至ったのか……。
作者が思うに、彼女は余りにも現実を生きすぎた。つまりラノベという非現実な空間において、彼女は自然主義を標榜する作者の人身御供となったのだ。
作品冒頭で紹介した、彼女の経歴を思い返していただきたい。
どこにでも転がっている、ごく有り触れた過去の記憶。それを現実として生きる人々のなんと多いことか……。
だがラノベの暗い森の中では、そんな自然主義者=リア充は粉々に砕け散る運命にある。
強力な魔法、強力な超能力、強力な法力、強力な光線、強力なパワー、強力なギャグ等、人知を超えたそれらの破壊力に耐えられる人間は現実世界には存在しないのだ。
つまりだ、残念なことではあるが、桜井咲子はこの世界において死ぬ運命にあったのだ。
「リア充爆殺!」
さあ、ラノベを愛する皆さん。もう一度、御一緒に!
「リア充爆殺!」
さあ、もう一度!
「リア充爆殺!」
御唱和、ありがとうございました。--作者。
読者諸氏もお気づきかと思うが、源外は大変な勘違いをしている。
桜井咲子の死因は爆死ではなく轢死なのだ。
それを厳しい口調で指摘したのが愛輝だった。
「源外君、あなたは勘違いしているわ。確かに人は爆発オチでは死なないけど、出オチでは死ぬのよ」
「……それ、どういうこと?」
「彼女、--桜井さんは爆発に巻き込まれたのではなく、あなたのリムジンに追突されて死んだのです」
「……!」
「確か、あのとき運転席でステアリングを握っていたのは、あなたでしたよね、源外君?」
「ーー!」
源外の顔から血の気が引いた。
機械好きゆえに車も大好きで、「わしに運転させろおおおおお~!」と叫んで強引に運転手のカトーからステアリングを奪ったのは、紛れもなく彼自身なのだ。
「このままだとあなたは道路交通法違反と自動車運転過失致死。いくら未成年でも死刑は免れないでしょうね」
「あわわわわ! 死刑は嫌じゃあああああ~~~~~!」
科学には明るいが刑法には滅法暗い源外。
未成年には死刑が適用されないとも知らずに大狂乱!
愛輝の据えたお灸にようやく己の罪を自覚したのか、真っ青な顔で右往左往した挙句、何を思ったのか部屋の片隅にある卓上電話に手を伸ばした。
が、間一髪、愛輝が受話器を上から押さえ込んだ。
「駄目ですよ。パパ上に頼もうとしても……。事件の揉み消しなんて、このわたくしが許しません!」
「あわわわわわ! パパ上はダメ、ママ上はいない。わしは誰を頼ればいいのじゃあああああ~!」
いかにも大金持ちの御曹司らしい狼狽ぶりだが、そんな窮状の中にあって無罪放免の可能性をとことん追求するのが、科学者たる源外の性癖なのだ。
「そうだ、爺、おまえが罪を被れ! わしの代わりに自首するのじゃ!」
で、代わりに思い付いた方法がこれ。
悪事を散々積み重ねて出世した大金持ちそのままの醜い発想だが、現実社会と違い、社会正義が罷り通るラノベの世界ではそんな不正が許されるはずもなく、源外を孫のように愛おしむ石見でさえ、「お坊ちゃま、ここは潔く自首なさっては……」と迷うことなく突き放した。
ガ~ンと、源外の背景に集中線が走った。
石見の裏切り行為(?)に余程のショックを受けたようだ。
「爺、おまえは鬼じゃ……」
「はい、お坊ちゃまの御付きでございますから……」
見事、意趣返しされた源外。
最早、頼るべき者がいないのを悟ったのか、床にペタンと胡坐を掻いて、うぉ~と髪を掻きむしり絶叫した。
「お終いじゃあああああ~~~~~! 最終回じゃあああああ~~~~~! 我が人生に千片の悔いありィいいいいい~~~~~!」
なんか早くも作者の色濃い疲労が見え隠れする本作品(八月現在、エアコン故障中の蜃気楼揺らめく部屋で執筆中)。
ここで一つの短編作品として完結させてもよいのだが、それでは編集長が、編集者が、書店員が、そして読者が承知すまい(えっ、つまんねえからもう止めろ? くだらねえ作品は読みたくねえ? 金返せ、バカ野郎? 早く熱中症で死にやがれ? --ババババババッハ武藤。作者は嫌がらせ大好き~!)。よって続行ぉ~。
間先生が厳かに死亡宣言を下した。
傍らではキノコが伏せ目がちに死亡時刻を確認している。
誰もが頭を垂れ押し黙っている中、何が楽しいのか、源外の笑い声が不気味に闇の中を木霊した。
「いや~、驚いたなあ。わし、初めて見た。爆発オチで人が死ぬとこ……」
怪我人が出でも、死亡者が出ないのが爆発オチのお約束。
三十秒後にはすべてが元通りに復元されるから、作中に何度でも利用できるのだ。
源外だってそのお陰で命を永らえてるわけで、今朝の騒動が現実世界の出来事であれば既に十回くらいは死んでいる。
無論、巻き添えを喰った野次馬たちも今頃は一人残らず回復して、平素と変わらぬ授業を受けているはずで、桜井咲子を除けば誰一人実質的な被害者は存在しないことになる。
ではなぜ彼女だけが、--一年三組出席番号十八番桜井咲子だけが回復することなく死に至ったのか……。
作者が思うに、彼女は余りにも現実を生きすぎた。つまりラノベという非現実な空間において、彼女は自然主義を標榜する作者の人身御供となったのだ。
作品冒頭で紹介した、彼女の経歴を思い返していただきたい。
どこにでも転がっている、ごく有り触れた過去の記憶。それを現実として生きる人々のなんと多いことか……。
だがラノベの暗い森の中では、そんな自然主義者=リア充は粉々に砕け散る運命にある。
強力な魔法、強力な超能力、強力な法力、強力な光線、強力なパワー、強力なギャグ等、人知を超えたそれらの破壊力に耐えられる人間は現実世界には存在しないのだ。
つまりだ、残念なことではあるが、桜井咲子はこの世界において死ぬ運命にあったのだ。
「リア充爆殺!」
さあ、ラノベを愛する皆さん。もう一度、御一緒に!
「リア充爆殺!」
さあ、もう一度!
「リア充爆殺!」
御唱和、ありがとうございました。--作者。
読者諸氏もお気づきかと思うが、源外は大変な勘違いをしている。
桜井咲子の死因は爆死ではなく轢死なのだ。
それを厳しい口調で指摘したのが愛輝だった。
「源外君、あなたは勘違いしているわ。確かに人は爆発オチでは死なないけど、出オチでは死ぬのよ」
「……それ、どういうこと?」
「彼女、--桜井さんは爆発に巻き込まれたのではなく、あなたのリムジンに追突されて死んだのです」
「……!」
「確か、あのとき運転席でステアリングを握っていたのは、あなたでしたよね、源外君?」
「ーー!」
源外の顔から血の気が引いた。
機械好きゆえに車も大好きで、「わしに運転させろおおおおお~!」と叫んで強引に運転手のカトーからステアリングを奪ったのは、紛れもなく彼自身なのだ。
「このままだとあなたは道路交通法違反と自動車運転過失致死。いくら未成年でも死刑は免れないでしょうね」
「あわわわわ! 死刑は嫌じゃあああああ~~~~~!」
科学には明るいが刑法には滅法暗い源外。
未成年には死刑が適用されないとも知らずに大狂乱!
愛輝の据えたお灸にようやく己の罪を自覚したのか、真っ青な顔で右往左往した挙句、何を思ったのか部屋の片隅にある卓上電話に手を伸ばした。
が、間一髪、愛輝が受話器を上から押さえ込んだ。
「駄目ですよ。パパ上に頼もうとしても……。事件の揉み消しなんて、このわたくしが許しません!」
「あわわわわわ! パパ上はダメ、ママ上はいない。わしは誰を頼ればいいのじゃあああああ~!」
いかにも大金持ちの御曹司らしい狼狽ぶりだが、そんな窮状の中にあって無罪放免の可能性をとことん追求するのが、科学者たる源外の性癖なのだ。
「そうだ、爺、おまえが罪を被れ! わしの代わりに自首するのじゃ!」
で、代わりに思い付いた方法がこれ。
悪事を散々積み重ねて出世した大金持ちそのままの醜い発想だが、現実社会と違い、社会正義が罷り通るラノベの世界ではそんな不正が許されるはずもなく、源外を孫のように愛おしむ石見でさえ、「お坊ちゃま、ここは潔く自首なさっては……」と迷うことなく突き放した。
ガ~ンと、源外の背景に集中線が走った。
石見の裏切り行為(?)に余程のショックを受けたようだ。
「爺、おまえは鬼じゃ……」
「はい、お坊ちゃまの御付きでございますから……」
見事、意趣返しされた源外。
最早、頼るべき者がいないのを悟ったのか、床にペタンと胡坐を掻いて、うぉ~と髪を掻きむしり絶叫した。
「お終いじゃあああああ~~~~~! 最終回じゃあああああ~~~~~! 我が人生に千片の悔いありィいいいいい~~~~~!」
なんか早くも作者の色濃い疲労が見え隠れする本作品(八月現在、エアコン故障中の蜃気楼揺らめく部屋で執筆中)。
ここで一つの短編作品として完結させてもよいのだが、それでは編集長が、編集者が、書店員が、そして読者が承知すまい(えっ、つまんねえからもう止めろ? くだらねえ作品は読みたくねえ? 金返せ、バカ野郎? 早く熱中症で死にやがれ? --ババババババッハ武藤。作者は嫌がらせ大好き~!)。よって続行ぉ~。
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