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第22話 真打登場! 謎の天災軍師諸星あたり
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「愛輝よ、残り時間は?」
「あと一分を切りました」
「仕方ない。こうなったら最後の手段じゃあ~!」
源外、戦士の銃を握り締めると、照準を八戒ダーの頭部へ定めた。
「源外君、まさか!」
「そうじゃ、八戒ダーは我が手で葬る。それが世界を救う唯一の方法なのじゃああ~~!」
「それでは桜井さんの脳髄が」
「世界を救うためなら、多少の犠牲は止むを得んのじゃあああ~~~!」
「人の命を何と心得ているのです!」
「通信手段が途絶すれば更に多くの人が死ぬ。世界は人一人のためには出来ておらんのじゃああああ~~~~!」
「駄目です! そんなこと絶対に許しません!」
「止めるな、愛輝! わしだってつらいのじゃあああああ~~~~~!」
戦士の銃を奪い合う二人。
源外の指が引き金を引くたびに、発射されたビーム弾が、壁に、床に、天井に、次々に穴を穿ってゆく。
そんなことをしている間にも、制限時間は刻々と近づいてゆく。
その場にいる誰もが、最早、スマホを失うことを覚悟して、「南、甲子園へ連れていけなくって、ごめん」とか、「本郷先生、わたし、バレーを続けたいんです」とか、「宗方コーチ、わたし、テニスを辞めます」とか、家族に、友人に、恩師に、恋人に、各々最後の通話を送っていた。
そのとき彼らの脳裏に八戒ダーの声が響いた。
お願い、わたしを殺して……。
達也が、和也が、みずえが、きいろが、華麗が、ひろみが、そして戦士の銃を奪い合う源外と愛輝が、凍り付いたように八戒ダーを見た。
誰もがその声のうちに、桜井咲子の面影を見い出し震撼したのだ。
早く、早く殺して! さもないと世界中から通話の手段が失われ、人々は孤立し、愛を育む術を失ってしまう。そんなこと、わたしには耐えられない!
八戒ダーのむき出しの脳髄が、桜井の悲しみを映すように、赤や、緑や、青に、明滅を繰り返した。
腕時計に眼を落した愛輝。
最早、時間がないことを確認すると、決然とした眼差しで一歩前へ進み出た。
「桜井さん、いいのね、それで?」
ええ、かまわないわ。わたし、この命が人々のお役に立てることに、とても満足しているの。世界中のスマホが、人々の無限の愛が守られるのなら、むしろ、わたしは喜んで死んでゆける!
その言葉を聞いた源外、滂沱の涙を流して戦士の銃を構えた。
「桜井よ、お主はラノベ界最高の美少女じゃあ!」
ありがとう、源外先輩、それに愛輝さん。あなた方には大変お世話になりました。お二人は生涯最高の友人です……。
「桜井……」
源外の震える指が引き金を引き絞ろうとした、そのとき……。
「いや~、お取込み中、申し訳ございません。八戒ダーを止める役目、このわたくしめにお申し付けください」
背後から忍び寄る男子生徒が一人。
扇子で額をバシバシ叩き、媚びた笑顔で,揉み手をしながら、世間の風当たりを飄々と受け流す、その幇間のような態度。
風采は上がらないが、そのニヤケた面の裏に、変態だけが見て取れる只者ではない気配を感じさせた。
「お主、何者じゃ?」
「へえ、二年四組、諸星あたりと申す、ケチな野郎で」
「本大会はコンビが原則じゃ。ピン芸人は参加できんのじゃ」
「まあまあ、そこは桜が丘高の皇帝、平賀様の匙加減でお一つ……」
「うむ、気に入った。参加を認めるのじゃ」
源外、権力者に媚びを売るその卑屈な態度に、金持ちの誇りをくすぐられて、大いに気分を良くした。
諸星、好機とばかりに素早く接近して、さりげなく、「成功報酬は愛輝さんとのデートということで」と耳打ちした。
「おお、その程度ならお安い御用じゃ。桜井が助かるのであれば、愛輝も納得じゃろう」
「そうですか、では……」
諸星、懐から取り出したるタブレットの液晶画面を、指で順繰りにめくってしてゆくと、
「おっ、あった、あった」ととある画面で指を止めた。
「ええと、桜井さん。君、確か去年の夏休み、プールサイドでブラが外れて、公衆の面前で大変恥ずかしい思いをしたでしょ」
まだ起動時間前だというのに、なぜかビクッと肩を震わせた八戒ダー。
その反応を見てクククッと不気味な忍び笑いを漏らした諸星。
瞬時にその弛んだ顔を真顔に修正すると、
「実は君にみせたいものがあるんだ」
そう言って八戒ダーに見せたものは、先に用意した液晶画面。
そこにはブラが外れてBカップの胸を惜しげもなくさらけ出した、桜井咲子の恥辱に塗れた姿があった。
瞬間、八戒ダーのむき出しの脳髄が、眩いばかりに真っ赤な輝きを放った。
超ぉ恥ずかしいいいいい~~~~~!
機械の合成音とはおもえぬほどの大絶叫に、壁が、床が、天井が、その負荷に耐え兼ねて長い亀裂を走らせた。
慌てて両手で胸を押さえた八戒ダー。
その拍子に付け乳首、いや、停止スイッチがポチッと押し込まれたから超幸運!
自らの付け乳首を、いや、停止スイッチを自らの手で押す。
乙女の条件反射をうまく利用したこの方法こそが、策士諸星あたりの狙いだった。
八戒ダー、床に膝を屈すると、耳から赤い煙を、鼻から青い煙を、口から緑の煙を、そして眼の覗き穴から桜井咲子の走馬灯、
「ほら、母さん、生まれたよ。名前は咲子にしよう」
「ほら、父さん、見て。咲子が歩いたわ!」
「あっ、母さん、咲子が喋った! 俺のこと、パパと呼んだぞ」
(ここで源外、腕をぐるぐる回して巻のサイン)
「咲子、早く寝なさい。明日から幼稚園よ」
「早いものだ。咲子も小学生か……」
「早いものね。咲子も中学生よ」
「なんて速さだ。咲子、もう高校生か!」
「ほんと、子供の成長なんて、あっという間よね」
それらの映像を順次廊下の壁に投影しながら、涙を一滴流してガシャと膝を屈して倒れた。
誰もが息を詰めて遠巻きに八戒ダーの様子を伺っていたが、源外、何を思ったのか、千円札をチラつかせると、
「諸星よ。これをやるから、わしの盾となれ」
「へい、承知!」と即答した諸星。
二人は諸星を前に、源外を後ろにして、抜き足差し足で前進を開始した。
全員が固唾を飲んで見守る中、諸星は震える指で八戒ダーの電池ボックスの蓋を開いて、中からリチウムイオン電池を取り出した。
それをひったくるように奪い取った源外、
「あ~、わし、リチウムイオン電池と間違えて、桜井に悪魔回路を渡してしまったのじゃ~」と前代未聞の大バカぶりを披歴した。
ドドドドドッ、と全員が雪崩を打ってこける中、かろうじて踏み止まった愛輝が俊足の早業で、源外の頭をハリセンでパッコ~ン! とぶっ叩いて叫んだ。
「悪魔回路をセットしたら、八戒ダーが暴走するのは当然でしょ!」
「いや~、めんご、めんご」
業界用語で謝罪して、媚びた笑顔を振りまく源外。
その悲しき道化師の演技に涙する者は、ある意味、人生の達人であろう。
読者諸氏よ、笑うなかれ。
長生きしたくば、女性の怒りの矛先をかわす術を学ぶのだ。
いくら仮想現実世界で無双しようとも、現実世界の覇者にはなれぬのだ。
道化師の術中にまんまとはまって、笑う者、呆れる者、プチ切れる者、そんな未熟者の中にあって、唯一、諸星だけが同情と憐憫の眼差しで、源外を眺めていた。そんな彼にも、いよいよ審判の日が訪れた。
「あなたあ~、ど~こ~? どこにいるのお~?」
諸星の顔から血の気が引いた。まるで道化師のごとく真っ白に……。
だが彼は賢明だった。
自身が道化師となる前に、「例の件、くれぐれもお忘れなく」と源外に耳打ちして、声の主から逃げるように猛然と走り去った。
その背中が見えなくなるや、虎縞のドレスにエプロンを締めた美少女が、背中の四枚の羽根をぱたぱたさせながら、まるで妖精のようにふわふわと宙を漂いながら現れた。
「あの~、うちの主人、知りませんかあ~?」
源外、額に冷や汗を浮かべながら精一杯の笑顔で、
「うん、知らんのじゃ!」
「本当ぅですかあ?」
「本当じゃ」
突然、虎縞のドレスの美少女が腰のレーザー銃を引き抜いた。
「隠し立てすると容赦しませんよ。これでもわたし、元宇宙戦士ですから」と源外を真顔で恫喝した。
「いや、本当、本当じゃ」
その言葉に納得したのか、虎縞のドレスの美少女はレーザー銃をホルスターに収めると、
「あなたあ~、あなたあ~、どこにいるのぉ~」と呟きながら、ふわふわと廊下の角へ姿を消した。
彼女の必殺技、電撃の危険性を顧みず、虚言を弄して諸星を救った源外。
それは女性の暴力に日々怯える者同士の異形の友情であった。
(源外、ぼっち脱出まで361人)
「あと一分を切りました」
「仕方ない。こうなったら最後の手段じゃあ~!」
源外、戦士の銃を握り締めると、照準を八戒ダーの頭部へ定めた。
「源外君、まさか!」
「そうじゃ、八戒ダーは我が手で葬る。それが世界を救う唯一の方法なのじゃああ~~!」
「それでは桜井さんの脳髄が」
「世界を救うためなら、多少の犠牲は止むを得んのじゃあああ~~~!」
「人の命を何と心得ているのです!」
「通信手段が途絶すれば更に多くの人が死ぬ。世界は人一人のためには出来ておらんのじゃああああ~~~~!」
「駄目です! そんなこと絶対に許しません!」
「止めるな、愛輝! わしだってつらいのじゃあああああ~~~~~!」
戦士の銃を奪い合う二人。
源外の指が引き金を引くたびに、発射されたビーム弾が、壁に、床に、天井に、次々に穴を穿ってゆく。
そんなことをしている間にも、制限時間は刻々と近づいてゆく。
その場にいる誰もが、最早、スマホを失うことを覚悟して、「南、甲子園へ連れていけなくって、ごめん」とか、「本郷先生、わたし、バレーを続けたいんです」とか、「宗方コーチ、わたし、テニスを辞めます」とか、家族に、友人に、恩師に、恋人に、各々最後の通話を送っていた。
そのとき彼らの脳裏に八戒ダーの声が響いた。
お願い、わたしを殺して……。
達也が、和也が、みずえが、きいろが、華麗が、ひろみが、そして戦士の銃を奪い合う源外と愛輝が、凍り付いたように八戒ダーを見た。
誰もがその声のうちに、桜井咲子の面影を見い出し震撼したのだ。
早く、早く殺して! さもないと世界中から通話の手段が失われ、人々は孤立し、愛を育む術を失ってしまう。そんなこと、わたしには耐えられない!
八戒ダーのむき出しの脳髄が、桜井の悲しみを映すように、赤や、緑や、青に、明滅を繰り返した。
腕時計に眼を落した愛輝。
最早、時間がないことを確認すると、決然とした眼差しで一歩前へ進み出た。
「桜井さん、いいのね、それで?」
ええ、かまわないわ。わたし、この命が人々のお役に立てることに、とても満足しているの。世界中のスマホが、人々の無限の愛が守られるのなら、むしろ、わたしは喜んで死んでゆける!
その言葉を聞いた源外、滂沱の涙を流して戦士の銃を構えた。
「桜井よ、お主はラノベ界最高の美少女じゃあ!」
ありがとう、源外先輩、それに愛輝さん。あなた方には大変お世話になりました。お二人は生涯最高の友人です……。
「桜井……」
源外の震える指が引き金を引き絞ろうとした、そのとき……。
「いや~、お取込み中、申し訳ございません。八戒ダーを止める役目、このわたくしめにお申し付けください」
背後から忍び寄る男子生徒が一人。
扇子で額をバシバシ叩き、媚びた笑顔で,揉み手をしながら、世間の風当たりを飄々と受け流す、その幇間のような態度。
風采は上がらないが、そのニヤケた面の裏に、変態だけが見て取れる只者ではない気配を感じさせた。
「お主、何者じゃ?」
「へえ、二年四組、諸星あたりと申す、ケチな野郎で」
「本大会はコンビが原則じゃ。ピン芸人は参加できんのじゃ」
「まあまあ、そこは桜が丘高の皇帝、平賀様の匙加減でお一つ……」
「うむ、気に入った。参加を認めるのじゃ」
源外、権力者に媚びを売るその卑屈な態度に、金持ちの誇りをくすぐられて、大いに気分を良くした。
諸星、好機とばかりに素早く接近して、さりげなく、「成功報酬は愛輝さんとのデートということで」と耳打ちした。
「おお、その程度ならお安い御用じゃ。桜井が助かるのであれば、愛輝も納得じゃろう」
「そうですか、では……」
諸星、懐から取り出したるタブレットの液晶画面を、指で順繰りにめくってしてゆくと、
「おっ、あった、あった」ととある画面で指を止めた。
「ええと、桜井さん。君、確か去年の夏休み、プールサイドでブラが外れて、公衆の面前で大変恥ずかしい思いをしたでしょ」
まだ起動時間前だというのに、なぜかビクッと肩を震わせた八戒ダー。
その反応を見てクククッと不気味な忍び笑いを漏らした諸星。
瞬時にその弛んだ顔を真顔に修正すると、
「実は君にみせたいものがあるんだ」
そう言って八戒ダーに見せたものは、先に用意した液晶画面。
そこにはブラが外れてBカップの胸を惜しげもなくさらけ出した、桜井咲子の恥辱に塗れた姿があった。
瞬間、八戒ダーのむき出しの脳髄が、眩いばかりに真っ赤な輝きを放った。
超ぉ恥ずかしいいいいい~~~~~!
機械の合成音とはおもえぬほどの大絶叫に、壁が、床が、天井が、その負荷に耐え兼ねて長い亀裂を走らせた。
慌てて両手で胸を押さえた八戒ダー。
その拍子に付け乳首、いや、停止スイッチがポチッと押し込まれたから超幸運!
自らの付け乳首を、いや、停止スイッチを自らの手で押す。
乙女の条件反射をうまく利用したこの方法こそが、策士諸星あたりの狙いだった。
八戒ダー、床に膝を屈すると、耳から赤い煙を、鼻から青い煙を、口から緑の煙を、そして眼の覗き穴から桜井咲子の走馬灯、
「ほら、母さん、生まれたよ。名前は咲子にしよう」
「ほら、父さん、見て。咲子が歩いたわ!」
「あっ、母さん、咲子が喋った! 俺のこと、パパと呼んだぞ」
(ここで源外、腕をぐるぐる回して巻のサイン)
「咲子、早く寝なさい。明日から幼稚園よ」
「早いものだ。咲子も小学生か……」
「早いものね。咲子も中学生よ」
「なんて速さだ。咲子、もう高校生か!」
「ほんと、子供の成長なんて、あっという間よね」
それらの映像を順次廊下の壁に投影しながら、涙を一滴流してガシャと膝を屈して倒れた。
誰もが息を詰めて遠巻きに八戒ダーの様子を伺っていたが、源外、何を思ったのか、千円札をチラつかせると、
「諸星よ。これをやるから、わしの盾となれ」
「へい、承知!」と即答した諸星。
二人は諸星を前に、源外を後ろにして、抜き足差し足で前進を開始した。
全員が固唾を飲んで見守る中、諸星は震える指で八戒ダーの電池ボックスの蓋を開いて、中からリチウムイオン電池を取り出した。
それをひったくるように奪い取った源外、
「あ~、わし、リチウムイオン電池と間違えて、桜井に悪魔回路を渡してしまったのじゃ~」と前代未聞の大バカぶりを披歴した。
ドドドドドッ、と全員が雪崩を打ってこける中、かろうじて踏み止まった愛輝が俊足の早業で、源外の頭をハリセンでパッコ~ン! とぶっ叩いて叫んだ。
「悪魔回路をセットしたら、八戒ダーが暴走するのは当然でしょ!」
「いや~、めんご、めんご」
業界用語で謝罪して、媚びた笑顔を振りまく源外。
その悲しき道化師の演技に涙する者は、ある意味、人生の達人であろう。
読者諸氏よ、笑うなかれ。
長生きしたくば、女性の怒りの矛先をかわす術を学ぶのだ。
いくら仮想現実世界で無双しようとも、現実世界の覇者にはなれぬのだ。
道化師の術中にまんまとはまって、笑う者、呆れる者、プチ切れる者、そんな未熟者の中にあって、唯一、諸星だけが同情と憐憫の眼差しで、源外を眺めていた。そんな彼にも、いよいよ審判の日が訪れた。
「あなたあ~、ど~こ~? どこにいるのお~?」
諸星の顔から血の気が引いた。まるで道化師のごとく真っ白に……。
だが彼は賢明だった。
自身が道化師となる前に、「例の件、くれぐれもお忘れなく」と源外に耳打ちして、声の主から逃げるように猛然と走り去った。
その背中が見えなくなるや、虎縞のドレスにエプロンを締めた美少女が、背中の四枚の羽根をぱたぱたさせながら、まるで妖精のようにふわふわと宙を漂いながら現れた。
「あの~、うちの主人、知りませんかあ~?」
源外、額に冷や汗を浮かべながら精一杯の笑顔で、
「うん、知らんのじゃ!」
「本当ぅですかあ?」
「本当じゃ」
突然、虎縞のドレスの美少女が腰のレーザー銃を引き抜いた。
「隠し立てすると容赦しませんよ。これでもわたし、元宇宙戦士ですから」と源外を真顔で恫喝した。
「いや、本当、本当じゃ」
その言葉に納得したのか、虎縞のドレスの美少女はレーザー銃をホルスターに収めると、
「あなたあ~、あなたあ~、どこにいるのぉ~」と呟きながら、ふわふわと廊下の角へ姿を消した。
彼女の必殺技、電撃の危険性を顧みず、虚言を弄して諸星を救った源外。
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