結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?

秋月一花

文字の大きさ
6 / 11

6話

しおりを挟む

 マハロはそれから三日ほどしてから戻って来た。一体ポーラの元へ向かった後なにがあったのか。気にはなるけれど、それは私がマハロを愛しているからではなく、『ポーラ』と言う女性が、本当に存在しているかどうかが気がかりなのだ。

「――ローラが、ポーラのお見舞いに?」
「ええ、離婚するとは言えあなたの幼馴染だもの。一度くらいお会いしてみようかと思ってね」

 さて、どのような反応をするかしら……? と窺うようにマハロを見ると、彼は驚いたように目を丸くして、それから破顔した。それも心底嬉しそうに。

「ローラがポーラに会いたいなんて、初めてだね。早速明日行ってみよう」

 どうやら彼の耳には都合の悪い言葉は入って来ないようだ。私は呆れたように彼を見て、それから小さくうなずいた。
 マハロは地図を取り出すと、「ここがポーラの家だよ」と道なりを教えてくれた。

「今日はまたこれから出掛けないといけないから、明日馬車で来ると良いよ。御者はポーラの家を知っているからね」
「……わかりました。私以外にも人を連れて行ってもよろしいですか?」
「ああ、きっと喜ぶよ」

 ……ポーラが喜ぶ? なぜ? そんなことを思いながら、マハロが出掛けていくのを見送る。それからすぐに、明日の支度を始めた。ポーラがどのような人なのか、マハロから聞いたことしか知らない。……そもそも、なぜ妻である私にポーラのことを言うのかが不思議だったのよね……。そりゃあ、ただ単に彼女の自慢をしたいのかもしれないけれど……。
 ――明日、ポーラのことがわかる。




 翌朝、ナタリーともう一人、神殿から来てくれた司祭、エヴァン司祭も同行してくれることになった。とは言え、司祭と言うことを伏せてもらうため、服装は変えてもらったけどね……。

「わざわざご足労いただきありがとうございます、エヴァン司祭」
「いえ、ご相談いただきありがとうございます」

 そう、三日前……、マハロとの離婚を決意した日。私はまず教会へと連絡を取った。そして、離婚することを相談したのだ。三年間夫婦生活がなかったことを証明するためにも……。
 私は一度も男性との経験がないから、教会でシスターにそれが本当であるかどうかを確かめられることになりそうだ。どんな風に確かめるのかわからないから恐怖を感じるけれど、マハロと離婚できるのなら喜んで受けよう。
 ポーラの元に同行してもらうのは、第三者から見てマハロとポーラの関係がどのように見えるかを教えてもらうため。
 ――準備も出来たし、そろそろ向かいましょうか。

「それでは、行ってきますね」
「お気をつけてくださいね、奥様」
「行ってらっしゃいませ」

 ルシアとハーマンが見送ってくれた。
 馬車は既に屋敷の前で待機しており、その隣にはエヴァン司祭が連れてきた護衛のフェリシアンと言う男性も馬の傍で待っていた。

「ごきげんよう」
「おはようございます」

 あまり喋らない方だけど、挨拶をすればきちんと返してくれる律儀な方のようで……。

「フェリシアン、護衛を頼んだよ」
「かしこまりました、エヴァン司祭」

 小さく会釈をすると馬車の扉を開けてくれた。エヴァン司祭、私、ナタリーの順に馬車へ乗り込み、扉が静かに閉められる。
 ――さて、ポーラはどういう女性なのか……、本当に病弱であるのかを確かめに行きましょう!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者は王女殿下のほうがお好きなようなので、私はお手紙を書くことにしました。

豆狸
恋愛
「リュドミーラ嬢、お前との婚約解消するってよ」 なろう様でも公開中です。

なにをおっしゃいますやら

基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。 エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。 微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。 エブリシアは苦笑した。 今日までなのだから。 今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

伯爵令嬢は、愛する二人を引き裂く女は悪女だと叫ぶ

基本二度寝
恋愛
「フリージア様、あなたの婚約者のロマンセ様と侯爵令嬢ベルガモ様は愛し合っているのです。 わかりませんか? 貴女は二人を引き裂く悪女なのです!」 伯爵家の令嬢カリーナは、報われぬ恋に嘆く二人をどうにか添い遂げさせてやりたい気持ちで、公爵令嬢フリージアに訴えた。 彼らは互いに家のために結ばれた婚約者を持つ。 だが、気持ちは、心だけは、あなただけだと、周囲の目のある場所で互いの境遇を嘆いていた二人だった。 フリージアは、首を傾げてみせた。 「私にどうしろと」 「愛し合っている二人の為に、身を引いてください」 カリーナの言葉に、フリージアは黙り込み、やがて答えた。 「貴女はそれで構わないの?」 「ええ、結婚は愛し合うもの同士がすべきなのです!」 カリーナにも婚約者は居る。 想い合っている相手が。 だからこそ、悲恋に嘆く彼らに同情したのだった。

白い結婚はそちらが言い出したことですわ

来住野つかさ
恋愛
サリーは怒っていた。今日は幼馴染で喧嘩ばかりのスコットとの結婚式だったが、あろうことかパーティでスコットの友人たちが「白い結婚にするって言ってたよな?」「奥さんのこと色気ないとかさ」と騒ぎながら話している。スコットがその気なら喧嘩買うわよ! 白い結婚上等よ! 許せん! これから舌戦だ!!

過去に戻った筈の王

基本二度寝
恋愛
王太子は後悔した。 婚約者に婚約破棄を突きつけ、子爵令嬢と結ばれた。 しかし、甘い恋人の時間は終わる。 子爵令嬢は妃という重圧に耐えられなかった。 彼女だったなら、こうはならなかった。 婚約者と結婚し、子爵令嬢を側妃にしていれば。 後悔の日々だった。

婚約破棄は嘘だった、ですか…?

基本二度寝
恋愛
「君とは婚約破棄をする!」 婚約者ははっきり宣言しました。 「…かしこまりました」 爵位の高い相手から望まれた婚約で、此方には拒否することはできませんでした。 そして、婚約の破棄も拒否はできませんでした。 ※エイプリルフール過ぎてあげるヤツ ※少しだけ続けました

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

魅了から覚めた王太子は婚約者に婚約破棄を突きつける

基本二度寝
恋愛
聖女の力を体現させた男爵令嬢は、国への報告のため、教会の神官と共に王太子殿下と面会した。 「王太子殿下。お初にお目にかかります」 聖女の肩書を得た男爵令嬢には、対面した王太子が魅了魔法にかかっていることを瞬時に見抜いた。 「魅了だって?王族が…?ありえないよ」 男爵令嬢の言葉に取り合わない王太子の目を覚まさせようと、聖魔法で魅了魔法の解術を試みた。 聖女の魔法は正しく行使され、王太子の顔はみるみる怒りの様相に変わっていく。 王太子は婚約者の公爵令嬢を愛していた。 その愛情が、波々注いだカップをひっくり返したように急に空っぽになった。 いや、愛情が消えたというよりも、憎悪が生まれた。 「あの女…っ王族に魅了魔法を!」 「魅了は解けましたか?」 「ああ。感謝する」 王太子はすぐに行動にうつした。

処理中です...