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8話
「わたしは……」
彼女が口を開こうとすると、マハロが戻って来た。こんなにすぐに、茶葉を買えたの……? じっとマハロを凝視すると、彼はにこやかに「すぐ近くに行商人が来ていてね」と聞いてもいないのに話し始めた。
慣れた様子でお茶を淹れ始め、私たちにも配る。
「……マハロがお茶を淹れられるなんて、初めて知ったわ」
「そうだっけ?」
マハロと共に過ごした時間の少なさに肩をすくめる。とてもじゃないけれど、飲む気分にはなれなかった。ポーラはゆっくりとお茶を飲もうとするも、カタカタと手が震えていてガシャンとカップを落としてしまった。
「ぁ、ぁ……ご、ごめん、なさい……」
「良いよ。それよりも、お茶が掛からなかった?」
震えながらもこくりとうなずく彼女に、マハロは優しく微笑んだ。――これは一体、どういう状況なのかしら……。エヴァン司祭がお茶を飲み、ちらりとフェリシアンさんを見る。フェリシアンさんは小さくうなずき、マハロへと声を掛けた。
「このお茶を売った行商人は、どんな方ですか?」
「え? ああ、頭にターバンを巻いていた人だよ。色々な物を仕入れているみたいで……」
「そうですか。……このお茶、あまり人には飲ませないほうが良いと思います」
「……どういうことですか……?」
私が恐る恐る尋ねると、フェリシアンさんはゆっくりと息を吐いて、それからお茶に視線を向ける。
「毒が入っています。微量ですが。飲み続けていれば、いつかは……」
「なっ! そんなものを買わされたというのか!?」
「そもそも、これは本当に、行商人の商品でしょうか。それとも、あなたに見る目がなかったと言うことでしょうか、マハロさん?」
フェリシアンさんの問いかけに、マハロは激昂したように顔を赤らめた。がたっと立ち上がり、フェリシアンさんに掴みかかろうとする。フェリシアンさんは、視線――いえ、殺気を放ってそれを止めた。ぞくり、と背筋に冷たいものが走る。私に向けられた殺気ではないのに……。
「知っていますか、領主様。ここ五年の間に、領地の女性が数名行方不明になっていることを……」
「行方不明……?」
びくっと『ポーラ』の肩が震えた。僅かに希望を見出したような、そんな眼の光を感じた。
「大方、盗賊か野生のものにでも襲われたのだろう」
「それが可笑しなことに、女性たちは一人ずつ、跡形もなく姿を消しているのです。残された家族の嘆きをご存知ですか? 視察に来た領主様に頼ろうとしても、邪険に扱われると……」
エヴァン司祭がそう口にすると、マハロの眉がぴくりと動いた。
「……そう言えば、領主様の幼馴染である『ポーラ』様も、五年前に一度姿を消しましたね。あれほど大切にされていましたのに……。ここに居る方を『ポーラ』とお呼びになっておりますが、以前のポーラ様とはあまりに似ておりませんが……?」
エヴァン司祭、ポーラと知り合いだったのかしら……?
……一体五年前に、なにがあったの――……?
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