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6話
しおりを挟むそれから、リンジーとシャーロットは二人で細々と暮らしていた。生まれ変わったリンジーは、孤児として首都の施設で暮らしていたこと、そこで共に住んでいた子どもたちや世話をしてくれていた人たちのこと、十六歳の誕生日に記憶を取り戻してからシャーロットを探すために旅に出たことなどを時間を掛けて彼女に話す。
シャーロットも、三百年の間にあったことをゆっくりとリンジーに話した。
「――色んな事がありましたね」
「本当に。シャーロットを見つけ出せて良かった」
「……首都で、私のことはどのように伝えられていましたか?」
自分で聞きながらも人の評価が怖いのか、少し肩が震えていた。そんな彼女を安心させるようにリンジーは微笑みを浮かべる。
「心優しき魔女が居る、と。君は、良く人を助けていたのだろう?」
「……助けた、と言うよりも……、私はただ……尋ねられたことを教えただけで……」
薬草の煎じ方、どの薬草がどの症状に聞くのか……魔女として必要な知識を、親や子を助けたいという切なる願いを持った者に与えていた。各地を転々としていたが、どこからかシャーロットの話を聞いた人たちが助けを求めるようになった。
そして、シャーロットは結局首都の近くの森の奥に住むことにした。
(――私がこの森の中に住むようになったのは十六年前……。もしかしたら、リンジーが生まれ変わったことを感じていたのかもしれませんね……)
目の前に居るリンジーに、シャーロットは頬を赤らめた。
彼女の師匠である魔女は、シャーロットの寿命は愛する者と共に居ること、そしてその者が命を落とす時に彼女が望めば共に死ねるだろうと言っていた。本当かどうかはわからない。
「……もしも、もしもこの先……、リンジー殿下が命の危機に陥った時、今度こそは、私も一緒に連れて逝ってくださいませね」
「……シャーロット、それは……」
「私はもう、あなたを失った後の虚無感を味わいたくないのです……」
「……そうか、そうだね……。うん、今度は共に……逝こう」
リンジーがそう言うと、シャーロットは美しく微笑む。
リンジーとシャーロットは、森の中でひっそりと暮らすことを選んだ。時々、旅行のように各地を回って、平和になった国を見てあの時の判断は間違っていなかったのだと確認し、危険が近付けば出来るだけ遠くへ逃げる。
二人だけの世界を何年も、何十年も続けた。それでもリンジーとシャーロットは幸せそうに暮らしていた。互いしか要らないと思えるほどに、彼らはずっと傍にいた。
たまに喧嘩をすることもあったが、いつの間にか仲直りをしていた。喧嘩よりも笑い合う時間のほうが圧倒的に多かった。そんな時間を大切に、大切に積み重ね――二人はずっと一緒に暮らしていた。最期の瞬間まで、二人は幸せに暮らしていた。
シャーロットの悲劇には、続きがあったことを国民は知らない。
それが彼と彼女にとって、とても幸せな結末だったことも。ただただ、シャーロットの悲劇は語り継がれていた。時には絵本に、時には劇にと姿を変えながらも、シャーロットの悲劇は受け継げられていた。
ただ、その悲劇ではあまりにも彼女たちが哀れだと、年々シャーロットの悲劇は幸せな結末へと書き換えられていく。
シャーロットとリンジーは、天からその話の流れを眺めていた。
「まさかこんな後世にまで語られることになるとは」
「あの頃は思いませんでしたね」
そんな会話をしながら、彼らは共に過ごしている。
彼らの幸せな時間は、まだまだ続いていくようだ。
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