君を守るために、演じ切ってみせよう。

秋月一花

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5話

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 ――この国には魔女が居る。
 あのシャーロットの悲劇と名付けられた令嬢と同じ名前の魔女が。魔女は国内を点々と歩き、拠点を変え、今日もただ、ひたすらに何かを待っている。
 それはシャーロットの悲劇から三百年後のある日、魔女の家に訪れたひとりの少年。シャーロットは彼を見て、驚いた。

「――リンジー……?」
「やぁ、シャーロット。随分、待たせてしまったようだね」

 三百年前と容姿は違えども、それは確かに『リンジー』だった。
 この三百年で君主政からへ共和政と変わり、国は見違えるほど豊かになった。様々なトラブルもあったが、国民たちが協力し、解決していった。それを三百年、シャーロットはずっと見守っていた。

「まさか本当に君とはね……」

 リンジーを家に招き入れて、シャーロットはお茶を出した。あの日、毒を飲んだ後……シャーロットは埋葬されるはずだった。だが、シャーロットの身体は死んでおらず、仮死状態だったようで、誰も居ない場所で目覚めて以来、シャーロットの身体は老いることも死することも出来ずにただただ生きることしか出来なかった。
 どうやら毒薬の副作用のようだ。毒薬をくれた魔女の元へ向かい、シャーロットはなぜ自分が死ねなかったのを問う。魔女はひっひっひと笑いながら、シャーロットが受け取った毒薬は近くの人の想いに反応することを教えてくれた。
 あの日、シャーロットを死なせたくないと願ったリンジーの想いによって、シャーロットは生き延びたのだ。

「……本当の本当に、リンジーなの?」
「うん、まさか三百年後も経っているとは思わなかったけど。ごめんね、シャーロット。随分と待たせてしまったようだ」

 三百年細々と暮らしていたシャーロットにとって、リンジーの訪問は本当に驚きで、リンジーが生まれ変わり、前世の記憶を持っていることにも驚いた。リンジーは生まれ変わってから十六歳になるまで、首都で暮らしていたらしい。十六歳のとある日、突然記憶が蘇ったという。

「小さなころに記憶を取り戻していたら、多分発狂していただろうね」
「……残酷な記憶ですもの」
「記憶が戻ってから、君のことをずっと探していた。シャーロットと呼ばれる魔女のことを。すまない、俺が君を守りたいがために、君を死なせることが出来なかったんだな……」

 申し訳なさそうに眉を下げるリンジーに、シャーロットはゆっくりと首を左右に振った。

「魔女が言っていました。きっとあなたが生まれ変わるだろうと。そして、私のことに気付いてくれるだろうと……」
「魔女が?」
「はい。彼女は私とあなたが再会すれば、きっとまた運命が巡るだろうと……」

 運命が巡る、とリンジーが口にする。シャーロットはその時のことを思い出して目を伏せた。リンジーが首を傾げると、シャーロットは視線をリンジーに向ける。

「――会いたかった、ずっと、待っていたの……」
「シャーロット……」

 目に涙を浮かべて微笑むシャーロットに、リンジーは椅子から立ち上がって彼女に近付き、その手を取った。

「ずっと一人きりにしてすまない。これからは、共に生きよう、シャーロット」
「……それはプロポーズですか?」
「花も指輪もないプロポーズでは、失礼だったかな?」
「いいえ、いいえ。リンジー殿下。あなたと共に居られることが、一番の喜びですわ」

 そっとリンジーの手に自分の手を重ねて、シャーロットは美しく微笑んだ。
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