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2章:異存
白銀の、異界 2話
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「しかし、一面銀世界ということしかわからないね」
佑心が肩をすくめて大きくため息を吐いた。山奥の幽霊屋敷からこの場所に移動したとは思うが、その屋敷も姿を消してしまった。後頭部に手を置いて「どうしようか?」と問いかけてきた佑心に、オカルト研究部員は顔を見合わせる。
「……とりあえず、ここで黙って立っていたら、凍えるだけだと思います。寒いので、動きませんか?」
架瑠がおずおずと手をあげると、佑心は「そうだね」と雪かきの道具を握りしめた。
「男性陣、手伝ってくれ。とりあえず、ここから移動しよう」
一面銀世界。冬になればたまに見るが、ここまでの雪が積もっているのを見るのは稀だ。架瑠は茉莉の手を離し、持ってきていた雪かきの道具をぎゅっと握り、三人で雪かきをしながら前に進む。
さらさらとしたパウダースノー。
春雪の水分を大量に含んだ雪ではない分、軽い。せっせと雪かきをしながらあてもなく歩いていると、ふとなにかが架瑠の耳に届く。
誰かがすすり泣いているような、そんな音が聞こえ、架瑠は辺りを見渡した。
「どうした?」
紬に声をかけられ、架瑠は彼に「泣き声が聞こえる」と答える。
すると、彼は動きを止めて目を閉じた。
紬の身体を覆うようなオーラを感じ、架瑠は思わず息を呑む。
「……確かに、いる、な」
「うん? なにか見つけたのかな、九鬼くん」
動きを止めた二人に気付いた佑心が振り返り、近付いてきた。架瑠は佑心と茉莉にも泣き声のことを話す。
「それで、なにを見つけたんだい?」
「あっちに人がいる……ような気がする」
「じゃあ、そっちにいってみよう! 一面銀世界すぎて、このままだとワタシたち、雪に埋もれてしまうね!」
楽しそうな佑心の様子に、架瑠と紬は視線を合わせた。
佑心は目を輝かせたまま、雪かきをしながら紬の指示通りに進んでいく。
どのくらい歩いただろうか――……時間の感覚がわからない。スマートフォンを取り出してみても、時刻はバグっているのか確認できず、紬の腕時計も針がくるくると回転しているだけだった。
「くしゅんっ」
「茉莉、大丈夫……ではないよな。ちょっと待って」
架瑠は背負ってきたリュックの中から、カイロを取り出して彼女に渡す。
「これを使えば少しはいいだろ」
「そんな、悪いよ……!」
「いいから。このままだと風邪ひくぞ」
架瑠の言葉に、茉莉はカイロに視線を落とし、「ありがとう」と口にしてから袋を破り、カイロを自分の手の中に閉じ込めた。
開けたばかりだから、まだ温かくはないだろうが、そのうち温かくなるはずだ。
佑心が肩をすくめて大きくため息を吐いた。山奥の幽霊屋敷からこの場所に移動したとは思うが、その屋敷も姿を消してしまった。後頭部に手を置いて「どうしようか?」と問いかけてきた佑心に、オカルト研究部員は顔を見合わせる。
「……とりあえず、ここで黙って立っていたら、凍えるだけだと思います。寒いので、動きませんか?」
架瑠がおずおずと手をあげると、佑心は「そうだね」と雪かきの道具を握りしめた。
「男性陣、手伝ってくれ。とりあえず、ここから移動しよう」
一面銀世界。冬になればたまに見るが、ここまでの雪が積もっているのを見るのは稀だ。架瑠は茉莉の手を離し、持ってきていた雪かきの道具をぎゅっと握り、三人で雪かきをしながら前に進む。
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誰かがすすり泣いているような、そんな音が聞こえ、架瑠は辺りを見渡した。
「どうした?」
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すると、彼は動きを止めて目を閉じた。
紬の身体を覆うようなオーラを感じ、架瑠は思わず息を呑む。
「……確かに、いる、な」
「うん? なにか見つけたのかな、九鬼くん」
動きを止めた二人に気付いた佑心が振り返り、近付いてきた。架瑠は佑心と茉莉にも泣き声のことを話す。
「それで、なにを見つけたんだい?」
「あっちに人がいる……ような気がする」
「じゃあ、そっちにいってみよう! 一面銀世界すぎて、このままだとワタシたち、雪に埋もれてしまうね!」
楽しそうな佑心の様子に、架瑠と紬は視線を合わせた。
佑心は目を輝かせたまま、雪かきをしながら紬の指示通りに進んでいく。
どのくらい歩いただろうか――……時間の感覚がわからない。スマートフォンを取り出してみても、時刻はバグっているのか確認できず、紬の腕時計も針がくるくると回転しているだけだった。
「くしゅんっ」
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「そんな、悪いよ……!」
「いいから。このままだと風邪ひくぞ」
架瑠の言葉に、茉莉はカイロに視線を落とし、「ありがとう」と口にしてから袋を破り、カイロを自分の手の中に閉じ込めた。
開けたばかりだから、まだ温かくはないだろうが、そのうち温かくなるはずだ。
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