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卒業パーティー【完】設定回収大変でした
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SIDE-LR(基本R視点)
卒業式前日
帝国から書簡が届いた。
第5王子にも非があったと謝罪と、今回の件、水に流して欲しいてのこと。
第5王子ガブリエルが執拗にリリに迫って、キスしようとして殴られたとの真相が書かれていた。
卒業式
学園に到着するとミューが昨日付けで不純異性交遊で退学になったという噂で持ちきりだった。すぐヤレるという噂は男子生徒のほとんどが知っていた。そう、私だけでなく、アンディとフレッドも知っていた。リリがミューの指導係を引き受けていた為、お互い言うに言い出せなかったらしい。
卒業パーティーのパートナー選びで取り合いになって発覚したらしい。一人の男にしておけば幸せになれたかもしれないのに。
卒業式を終え、一旦帰宅して卒業パーティー用の服に着替えて夕刻にもう一度、学園に集まる。
新生徒会役員の主導で中庭の中央にはダンスが踊れるように床板をセットして、両端にはご馳走がセットされている。
私は燕尾服に着替えてリリを迎えに行った。
リリのドレスは私がプレゼントした。濃いピンク色で花びらのような布が幾重にも縫い合わされている芍薬の花のようなドレス。お飾りの真っ白な真珠は巻きが厚く輝いていて、遠くからでも特級品だとわかる品だ。リリの銀色の髪は毛先だけふんわりと巻きクセをつけ、色付きのパール粉をつけてキラキラ輝かせてる。
リリはドレスのピンク色に恥ずかしそうにしていた。
「とても綺麗だよ」
私の言葉に、リリはにへらっと砕けた笑顔で返した。
例年は婚約しているカップル達が一斉にファーストダンスを踊るのだが、今年は私、王太子カップルがいるので、私達だけが最初に踊る。学園に到着し、時間になったのでリリと一緒に舞台に上がる。
私の前に立ったリリがドレスを少しつまみあげて膝を曲げたお辞儀をする。背筋がまっすぐに伸びてキレイだ。差し出された指の形もキレイで、嬉しくなった。
音楽に合わせて体を揺らす。
「リリ、今日は一段とキレイだね。」
声をかけるが、リリは何か物思いに沈んでるようだ。
「リリ?何か悩みごとがあるの?」
「リリ?」
何度か声をかける。帝国からの返事もきて、リリの悩みごとはなくなったはずなのに。
「ミュー様のこと・・・・・・」
「ん?」
やっと開いたリリの口から、私があまり聞きたくない名前がでたので、少し不快に思った。
「よろしいんですの?」
「なにが?」
「守ってさしあげなくても。」
「どうして?」
「殿下、ミュー様のことがお好きなんじゃありませんの?」
「彼女とは何もないよ。」
「でも、ミュー様は殿下のことをお名前でお呼びなさってましたわ。」
「勝手に呼んでたんだよ。」
「・・・・・・ミュー様と何かあったんじゃありませんの?」
私はあの噂を思い出し、自分に嫌疑がかかってることに少し不快な思いをした。
「イエス様に誓って、ああいうことは好きな女性相手じゃないとできないよ。」
「だからミュー様のこと、好きじゃありませんの?」
「リリ、教義をちゃんと理解してるよね?私は誓を護っているよ。」
「でも・・・・・・」
どうしたんだろう。教義で子供を欲する時以外の行為は禁止されている。リリがそれを理解してないわけないのに。
「ミュー嬢は自業自得でしょ。彼女ならたくましくやっていくんじゃないかな。そんなに心配なら、後日、使いを出して調べたらいい。リリがそこまで責任もたなくてもいいよ。」
「私じゃなくて、殿下は好きな方のこと心配じゃないんですか?」
「?私は小さい頃、リリが私の手を包んでくれた日からずっとリリのことが好きだよ。」
「ミュー様を好きじゃないんですか?」
「私が好きなのはリリだよ。」
「でも、でも、殿下は今日の今まで私のこと好きだと言ってくださらなかったじゃないですか。キスだってしてくれないし、触ってもくれないじゃないですか。」
「結婚するまで我慢してるんじゃないか。」
「でも・・・・・・」
リリは納得できてない様子だ。
「リリ?」
「・・・・・・」
「わかった。今から教会に行って式をあげよう!いいね!」
私は大きな声をあげ、リリの手を引いて舞台から降りる。学園を出て、町はずれの小さな教会に着いた。クリスマスにオブジェを見に来た教会だ。
シロツメクサが目にはいったので、二本摘み、一本をリリに渡し、自分の手にある一本で指輪をつくった。
「急だからこれでごめんね。リリも私の分を作ってくれる?」
リリに目を向けるとリリはシロツメクサを手に恐る恐る口を開いた。
「殿下、もしかして怒ってらっしゃいます?」
「怒ってないよ。」
「だって、そんなお顔、初めて見ましたもの。」
私は首を傾げる。どんな顔をしてるかわからない。でも怒ってなんかいない。
リリに向かってニヤりと笑って
「今からリリとキス出来るんだと、すごく楽しみにしてる顔。」
私の言葉にリリは顔を赤くして
「本当に私でいいんですの?」
「リリがいいんだよ。リリは私でいいの?」
「私はずっと殿下のことが好きです。」
「私も小さな頃からずっとリリのことが好きだよ。」
教会に入り、神父様に式をお願いした。
シロツメクサの指輪を交換して、そして、
「キス、プリーズ。」
神父のことばを聞いて、私はリリの唇に自分の唇を近づけた。リリが目をつぶる。私も目をつぶり、そっと唇を重ねた。
触れたあと、目を開いてお互い相手の顔を見たら、自然に笑みがこぼれた。
教会の後方から拍手がわいた。アンディ、フレッド、ココ、レニだ。いつのまに、と聞いたら、学園からずっとついてきてたらしい。二人の世界に入りすぎて、ぜんぜん周りがみえていなかった。
学園に戻ると、会場のみんなから拍手とお祝いの言葉をもらった。
リリのシロツメクサの指輪は女性陣にとても好評だった。
キスしたくて式を挙げたバカップルとして学園の歴史に残るに違いない。
パーティーが終わり、リリを家に送っていき、シャテロール公爵に勝手に式を挙げたことを謝罪した。本来なら公爵に怒られるところだろうが、少し前にガブリエルの事件があった負い目があるからか、公爵は何も言わなかった。でも、怒ってるのは感じとれた。
ラフが帰宅した後、リリーは父親にお願いごとをした。父親がしぶしぶ了承すると父親の頬にキスをした。
私は王宮にもどり、父である国王にも報告した。
急遽、正式な結婚式の準備にはいった。
二ヶ月後結婚式前日
来賓に帝国から皇太子夫妻と第五王子のガブリエルが来ることになっていた。
皇太子が帝国領から出ることは歴史的なことで、諸外国からモンパンシエの評価が変わることになるだろう。
リリはガブリエルと会うのを嫌がってたが、殴打した件を書面でしか謝罪できていなかった為、対面での謝罪の機会ができてありがたかった。
式の前日、帝国から皇太子夫妻とガブリエルの到着をリリも私と一緒に出迎えた。
滞在用の部屋に通したあと、謁見する時間を持ってもらえた。
私達が部屋に入ると、ガブリエルと皇太子の姿があった。結婚式の参列の謝意を伝えると、皇太子から結婚のお祝いの言葉をいただいた。
リリはガブリエルの方を向いて、たたいたことの謝罪をした。
「こちらにも非があった。ガブリエル、お前も謝りなさい。」
皇太子に言われ、ガブリエルもリリーに謝罪した。
「今回は私が一番信頼してる弟のガブリエルがプロポーズした女性とその女性の選んだ王太子に会いに来たんですよ。」
と皇太子が言った。
「良いように報告していただいてるようですが、側室にとのお誘いでしたから、その程度の存在ですよ。」
とリリーが言うと
「ガブリエル、そのような風に言ったのか?素直になりなさい!
リリアンヌ王太子妃殿下、失礼した。」
皇太子の言葉にガブリエルは不快な表情を浮かべていた。
「皇太子同士で少し話をしたいのだが、よろしいかな。」
ガブリエルとリリは部屋を出た。
**********
ガブリエルとリリーは廊下に出て
「リリー嬢、なぜ私にキスされそうになったことを、どなたかに話さなかったんですか?」
「・・・・・・証拠がありませんから。」
「やはりあなたは賢い方ですね。好きになって良かったです。」
「・・・・・・ありがとうございます。」
リリーは膝を曲げて頭を下げたお辞儀をした。顔を上げるとガブリエルと目が合った。
「ガブリエル殿下も良いご縁に恵まれますようにお祈り申し上げますわ。」
ガブリエルは口角をあげて応えた。
「ありがとう。」
**********
一方、客間では
「改めて、ご結婚おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
どんな話が出てくるか予測がつかず、私は年上の皇太子を相手に緊張した。
「弟から聞いてます。聡明な女性だそうですね。国造り論に戦争論、私も聞いて驚嘆しました。素晴らしい女性を見つけられましたね。」
「ありがとうございます。」
「ずっとあなたに伝えたいことがあったのです。・・・・・・アネット王妃のことですが、」
ラフの眉がピクリと動く。アネットはラフの母親、ラフが10才の時に帝国の30番目の側室に請われ嫁いだのだ。
「とてもきれいで優しい方でしたね。他国の王妃、それも経産婦が側室にくるので後宮がざわついてました。妊娠するまで毎夜、陛下の渡りがありましたので、他の側室から妬まれていたと思います。
よく、モンパンシエのある南の方を向いて寂しそうな目をしていらっしゃいました。私も自分に子供ができ、その気持ちがわかるようになりました。
それから、処刑容疑の件ですが」
言いにくい話なので皇太子の言葉が詰まった。
「刑の執行後、不義の相手である衛兵の病気の娘に優れた医者がついていました。衛兵の俸給ではその治療費を支払うことは出来ないはずです。子供だった私にもわかることを陛下がわからないはずなないでしょう。陛下は後宮の問題対処を煩わしく思い、殿下の母君を見捨てたんだと思います。
あの事件があったことで、私は側室を持たないと決めたのです。」
「ガブリエルも・・・・・・妻は独りと決めています。
殿下の大切な妃殿下を側室にと聞かれて不愉快かと思いますが、きっと正妻を持たず、唯一人を大事にしようと思っていたと思います。」
皇太子はずっと伝えたかった思いを吐露することができて、気持ちが楽になったようだった。
皇太子同士の話が終わり私が自室に戻るとリリがそこで待っていた。
リリの顔を見たら、我慢していた涙が溢れてきた。リリはハンカチを出して、寄り添ってきた。リリは侍従長達に目で合図して部屋から出てもらった。
同い年なはずなのに・・・・・・
リリはいつも優しく少し上にいるような気がする。
「リリ、好きだよ。」
「私も好きですわ。前世から。」
リリにはかなわないな、と思った。
翌日、結婚式がつつがなくとりおこなわれた。
これから若い2人でどんな国を築いていくでしょうか。
部屋に飾られた小さな古い花冠の絵とその隣りに飾られた新しいシロツメクサの指輪の絵が見守ってくれることでしょう。
END
国王はアネット王妃のことが大好きで、ラフの出産が難産だった為次子を諦めたこと、
帝国にとられた後も再婚しなかった設定でしたが、書ききれませんでした。
今頃ラフはこれを知って父との溝が浅くなってるはずです。
読んでくださってありがとうございます
卒業式前日
帝国から書簡が届いた。
第5王子にも非があったと謝罪と、今回の件、水に流して欲しいてのこと。
第5王子ガブリエルが執拗にリリに迫って、キスしようとして殴られたとの真相が書かれていた。
卒業式
学園に到着するとミューが昨日付けで不純異性交遊で退学になったという噂で持ちきりだった。すぐヤレるという噂は男子生徒のほとんどが知っていた。そう、私だけでなく、アンディとフレッドも知っていた。リリがミューの指導係を引き受けていた為、お互い言うに言い出せなかったらしい。
卒業パーティーのパートナー選びで取り合いになって発覚したらしい。一人の男にしておけば幸せになれたかもしれないのに。
卒業式を終え、一旦帰宅して卒業パーティー用の服に着替えて夕刻にもう一度、学園に集まる。
新生徒会役員の主導で中庭の中央にはダンスが踊れるように床板をセットして、両端にはご馳走がセットされている。
私は燕尾服に着替えてリリを迎えに行った。
リリのドレスは私がプレゼントした。濃いピンク色で花びらのような布が幾重にも縫い合わされている芍薬の花のようなドレス。お飾りの真っ白な真珠は巻きが厚く輝いていて、遠くからでも特級品だとわかる品だ。リリの銀色の髪は毛先だけふんわりと巻きクセをつけ、色付きのパール粉をつけてキラキラ輝かせてる。
リリはドレスのピンク色に恥ずかしそうにしていた。
「とても綺麗だよ」
私の言葉に、リリはにへらっと砕けた笑顔で返した。
例年は婚約しているカップル達が一斉にファーストダンスを踊るのだが、今年は私、王太子カップルがいるので、私達だけが最初に踊る。学園に到着し、時間になったのでリリと一緒に舞台に上がる。
私の前に立ったリリがドレスを少しつまみあげて膝を曲げたお辞儀をする。背筋がまっすぐに伸びてキレイだ。差し出された指の形もキレイで、嬉しくなった。
音楽に合わせて体を揺らす。
「リリ、今日は一段とキレイだね。」
声をかけるが、リリは何か物思いに沈んでるようだ。
「リリ?何か悩みごとがあるの?」
「リリ?」
何度か声をかける。帝国からの返事もきて、リリの悩みごとはなくなったはずなのに。
「ミュー様のこと・・・・・・」
「ん?」
やっと開いたリリの口から、私があまり聞きたくない名前がでたので、少し不快に思った。
「よろしいんですの?」
「なにが?」
「守ってさしあげなくても。」
「どうして?」
「殿下、ミュー様のことがお好きなんじゃありませんの?」
「彼女とは何もないよ。」
「でも、ミュー様は殿下のことをお名前でお呼びなさってましたわ。」
「勝手に呼んでたんだよ。」
「・・・・・・ミュー様と何かあったんじゃありませんの?」
私はあの噂を思い出し、自分に嫌疑がかかってることに少し不快な思いをした。
「イエス様に誓って、ああいうことは好きな女性相手じゃないとできないよ。」
「だからミュー様のこと、好きじゃありませんの?」
「リリ、教義をちゃんと理解してるよね?私は誓を護っているよ。」
「でも・・・・・・」
どうしたんだろう。教義で子供を欲する時以外の行為は禁止されている。リリがそれを理解してないわけないのに。
「ミュー嬢は自業自得でしょ。彼女ならたくましくやっていくんじゃないかな。そんなに心配なら、後日、使いを出して調べたらいい。リリがそこまで責任もたなくてもいいよ。」
「私じゃなくて、殿下は好きな方のこと心配じゃないんですか?」
「?私は小さい頃、リリが私の手を包んでくれた日からずっとリリのことが好きだよ。」
「ミュー様を好きじゃないんですか?」
「私が好きなのはリリだよ。」
「でも、でも、殿下は今日の今まで私のこと好きだと言ってくださらなかったじゃないですか。キスだってしてくれないし、触ってもくれないじゃないですか。」
「結婚するまで我慢してるんじゃないか。」
「でも・・・・・・」
リリは納得できてない様子だ。
「リリ?」
「・・・・・・」
「わかった。今から教会に行って式をあげよう!いいね!」
私は大きな声をあげ、リリの手を引いて舞台から降りる。学園を出て、町はずれの小さな教会に着いた。クリスマスにオブジェを見に来た教会だ。
シロツメクサが目にはいったので、二本摘み、一本をリリに渡し、自分の手にある一本で指輪をつくった。
「急だからこれでごめんね。リリも私の分を作ってくれる?」
リリに目を向けるとリリはシロツメクサを手に恐る恐る口を開いた。
「殿下、もしかして怒ってらっしゃいます?」
「怒ってないよ。」
「だって、そんなお顔、初めて見ましたもの。」
私は首を傾げる。どんな顔をしてるかわからない。でも怒ってなんかいない。
リリに向かってニヤりと笑って
「今からリリとキス出来るんだと、すごく楽しみにしてる顔。」
私の言葉にリリは顔を赤くして
「本当に私でいいんですの?」
「リリがいいんだよ。リリは私でいいの?」
「私はずっと殿下のことが好きです。」
「私も小さな頃からずっとリリのことが好きだよ。」
教会に入り、神父様に式をお願いした。
シロツメクサの指輪を交換して、そして、
「キス、プリーズ。」
神父のことばを聞いて、私はリリの唇に自分の唇を近づけた。リリが目をつぶる。私も目をつぶり、そっと唇を重ねた。
触れたあと、目を開いてお互い相手の顔を見たら、自然に笑みがこぼれた。
教会の後方から拍手がわいた。アンディ、フレッド、ココ、レニだ。いつのまに、と聞いたら、学園からずっとついてきてたらしい。二人の世界に入りすぎて、ぜんぜん周りがみえていなかった。
学園に戻ると、会場のみんなから拍手とお祝いの言葉をもらった。
リリのシロツメクサの指輪は女性陣にとても好評だった。
キスしたくて式を挙げたバカップルとして学園の歴史に残るに違いない。
パーティーが終わり、リリを家に送っていき、シャテロール公爵に勝手に式を挙げたことを謝罪した。本来なら公爵に怒られるところだろうが、少し前にガブリエルの事件があった負い目があるからか、公爵は何も言わなかった。でも、怒ってるのは感じとれた。
ラフが帰宅した後、リリーは父親にお願いごとをした。父親がしぶしぶ了承すると父親の頬にキスをした。
私は王宮にもどり、父である国王にも報告した。
急遽、正式な結婚式の準備にはいった。
二ヶ月後結婚式前日
来賓に帝国から皇太子夫妻と第五王子のガブリエルが来ることになっていた。
皇太子が帝国領から出ることは歴史的なことで、諸外国からモンパンシエの評価が変わることになるだろう。
リリはガブリエルと会うのを嫌がってたが、殴打した件を書面でしか謝罪できていなかった為、対面での謝罪の機会ができてありがたかった。
式の前日、帝国から皇太子夫妻とガブリエルの到着をリリも私と一緒に出迎えた。
滞在用の部屋に通したあと、謁見する時間を持ってもらえた。
私達が部屋に入ると、ガブリエルと皇太子の姿があった。結婚式の参列の謝意を伝えると、皇太子から結婚のお祝いの言葉をいただいた。
リリはガブリエルの方を向いて、たたいたことの謝罪をした。
「こちらにも非があった。ガブリエル、お前も謝りなさい。」
皇太子に言われ、ガブリエルもリリーに謝罪した。
「今回は私が一番信頼してる弟のガブリエルがプロポーズした女性とその女性の選んだ王太子に会いに来たんですよ。」
と皇太子が言った。
「良いように報告していただいてるようですが、側室にとのお誘いでしたから、その程度の存在ですよ。」
とリリーが言うと
「ガブリエル、そのような風に言ったのか?素直になりなさい!
リリアンヌ王太子妃殿下、失礼した。」
皇太子の言葉にガブリエルは不快な表情を浮かべていた。
「皇太子同士で少し話をしたいのだが、よろしいかな。」
ガブリエルとリリは部屋を出た。
**********
ガブリエルとリリーは廊下に出て
「リリー嬢、なぜ私にキスされそうになったことを、どなたかに話さなかったんですか?」
「・・・・・・証拠がありませんから。」
「やはりあなたは賢い方ですね。好きになって良かったです。」
「・・・・・・ありがとうございます。」
リリーは膝を曲げて頭を下げたお辞儀をした。顔を上げるとガブリエルと目が合った。
「ガブリエル殿下も良いご縁に恵まれますようにお祈り申し上げますわ。」
ガブリエルは口角をあげて応えた。
「ありがとう。」
**********
一方、客間では
「改めて、ご結婚おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
どんな話が出てくるか予測がつかず、私は年上の皇太子を相手に緊張した。
「弟から聞いてます。聡明な女性だそうですね。国造り論に戦争論、私も聞いて驚嘆しました。素晴らしい女性を見つけられましたね。」
「ありがとうございます。」
「ずっとあなたに伝えたいことがあったのです。・・・・・・アネット王妃のことですが、」
ラフの眉がピクリと動く。アネットはラフの母親、ラフが10才の時に帝国の30番目の側室に請われ嫁いだのだ。
「とてもきれいで優しい方でしたね。他国の王妃、それも経産婦が側室にくるので後宮がざわついてました。妊娠するまで毎夜、陛下の渡りがありましたので、他の側室から妬まれていたと思います。
よく、モンパンシエのある南の方を向いて寂しそうな目をしていらっしゃいました。私も自分に子供ができ、その気持ちがわかるようになりました。
それから、処刑容疑の件ですが」
言いにくい話なので皇太子の言葉が詰まった。
「刑の執行後、不義の相手である衛兵の病気の娘に優れた医者がついていました。衛兵の俸給ではその治療費を支払うことは出来ないはずです。子供だった私にもわかることを陛下がわからないはずなないでしょう。陛下は後宮の問題対処を煩わしく思い、殿下の母君を見捨てたんだと思います。
あの事件があったことで、私は側室を持たないと決めたのです。」
「ガブリエルも・・・・・・妻は独りと決めています。
殿下の大切な妃殿下を側室にと聞かれて不愉快かと思いますが、きっと正妻を持たず、唯一人を大事にしようと思っていたと思います。」
皇太子はずっと伝えたかった思いを吐露することができて、気持ちが楽になったようだった。
皇太子同士の話が終わり私が自室に戻るとリリがそこで待っていた。
リリの顔を見たら、我慢していた涙が溢れてきた。リリはハンカチを出して、寄り添ってきた。リリは侍従長達に目で合図して部屋から出てもらった。
同い年なはずなのに・・・・・・
リリはいつも優しく少し上にいるような気がする。
「リリ、好きだよ。」
「私も好きですわ。前世から。」
リリにはかなわないな、と思った。
翌日、結婚式がつつがなくとりおこなわれた。
これから若い2人でどんな国を築いていくでしょうか。
部屋に飾られた小さな古い花冠の絵とその隣りに飾られた新しいシロツメクサの指輪の絵が見守ってくれることでしょう。
END
国王はアネット王妃のことが大好きで、ラフの出産が難産だった為次子を諦めたこと、
帝国にとられた後も再婚しなかった設定でしたが、書ききれませんでした。
今頃ラフはこれを知って父との溝が浅くなってるはずです。
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