乙女ゲームに迷い込んだみたいです

青井りか

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三國志はゲームから入った人の方が多いと思います

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帝国と帝国の北に接するシーク共和国の戦争が始まった。帝国の南に接するモンパンシエはどちらに加担することもなく、事態の推移を見守っていた。



SIDE-L
 ココとレニとビュッフェに行くと、4人がけの席でひとりで食事をしているガブの姿が見えた。
 ガブは好きじゃない。でも、18歳で他国に来て、自分の知らないところで親が戦争を始めて、こうやって遠巻きにされてるのは寂しいよね。
「あそこが空いてるからあそこでもいい?」
 ランチを受け取ったら、ココとレニの返事を待たず、ガブの目の前に行った。
「こちらよろしいかしら。」
 周囲がザワめく。王太子の婚約者が、今、皆が敬遠してる帝国の王子に声をかけたから当然だ。
「どうぞ。」
「失礼します。」
 私はガブの目の前に座った。
 ココとレニも小さな声で「失礼します」と言い、空いている席に座った。

「リリー嬢は不思議な方ですね。このような時に私に声をかけるなんて。」
「私は最初に申し上げました通り、せっかくモンパンシエを選んで来ていただいてるのですから、楽しい思い出をたくさん作っていただきたいのですわ。」
 学園は楽しいですか、どこかに観光に行かれましたか?とか他愛もない話をする。するとガブが
「リリー嬢はこの国が好きですか?」
 と聞いてきたので
「ええ!大好きです。」
 満面の笑みでこたえた。
 だって学園生活もとても楽しいし、両親からもすごく愛されてる。お金持ちだし。この後ラフに振られて泣くことになるけど、全般見たらすごく恵まれてると思うわ。
「そうですか。私は今の皇帝の考えに共感出来ません。こちらの王太子も父である国王陛下とうまくいっておられないようですね。」
 答えにつまる。ラフの母のアネット王妃を帝国に差し出してから、ラフと陛下の間に微妙な空気が流れてるのは感じてる。
 でもそれを他国の、帝国の王子に知られるのは良くないでしょうね。
「そんなことありませんわ。王妃教育で登城していますので分かりますわ。」
 ――あまり仲が良くないこと。
 私が溺愛されてるだけに、違いが激しい。
 ゲームのラフのスチルが薄ら笑いばかりだったのも分かるわー。あの家庭環境じゃねぇ。今、一緒にいても、あの薄ら笑いしか思い出せない。
 いや、まあ、そういうキャラがどストライクなんですが。
「あなたは賢いですね。あなたの代になるとその賢い知略で他国を侵略していくのでしょうね。」
「違いますわ。国を作るにはまず、農業よ!民に衣食住の安定を。自分の暮らしが安定したら人口が増えるわ。それから徴兵よ。」
 そう。三國志(@KOEI)のセオリー。まずは生産で国力をつけ、人口が増えたところを徴兵、訓練、戦争よ!
※人口の半分しか徴兵できない為、人口を増やさないと戦争できない
「でも戦争は嫌ですわ。例え国が勝っても自分の親しい人が死傷したら負けですもの。負ける人のいない戦争なんて出来ないですもの。」
 話し終えて前を向くとガブがじっと私を見てる。なに?普通のこと言ったんだけど。
 ガブはふっと笑みを浮かべて言った。
「あなたは本当に賢い人ですね。」
「・・・普通のことを言ったまでかと思います。」
「父は、皇帝は侵略することで民を増やそうとしてる。まずは農業ですか。時間はかかるが、そちらの方がみんなが幸せになれますね。」
 食事を終えたガブが立ち上がった。
「今日はとても有意義でした。楽しかったです。リリー嬢とはまたお話したいですね。では。」
 ガブが立ち去った。
 ココやレニから「もう国のことを想っていらっしゃるんですね。素敵です。」と言われ、後ろの席から聞き耳をたててた生徒からは「王妃になる日を楽しみにしてます!」「王太子妃、万歳!」とか、たいしたこと言ってないだけにからかわれた気分。恥ずかしい。
 でも――
 王太子のラフは主人公と結ばれるので、私は王妃になることはないの。


 生徒会業務が終わっての帰り際、ラフと二人きりになった時に
「リリ、私のこと好きかな?」
 といきなり聞かれた。
 え、え、なんで今。どんな回答が欲しいのよ。
 心臓がバクバクして考えられない。
「すきです。」
 と小さな声で呟いた。
「ありがとう。」
 とラフはスチルの薄ら笑いの笑顔を浮かべた。
 何を考えてるか全然わからない。
 でも「ラフは私のことどう想ってるの?」とは聞き返せなかった。
 どんな返事がくるか怖い。
 家に帰ってもずっと考えてた。
 ミューとのフラグは立ったままのはず。
「ラフのこと、なんとも思ってません。」
 と言えば円満婚約解消だったのかな。
 あまりいい方向への想像ができず、だんだん涙がでてきた。





SIDE-R
「戦争の原因を聞いた!シーク共和国の大統領が娘の側室入りを拒否した為だってな。殿下、知ってました?」
「聞いてたよ。」
 それだけ答えた。王宮にいるともっといろいろな情報が入ってくるが、どこまで言っていいのか、クラスには帝国の王子もいる。慎重にならないと。
「モンパンシエも攻め込まれないよう兵を増やさないとなあ。殿下の治世になったら徴兵制度をはじめますか。リリー嬢をとられないように。」
 母もとられたんだ。リリは絶対に渡したくない。そう思ってると立ち聞きしてた生徒が口をはさんできた。
「リリー嬢は農業に力を入れるって言ってたんだって。そして戦争はしないって。」
「農業!?」
「民の衣食住を安定させてから徴兵するって。なんかいろいろ国のこと考えてらっしゃるんだよなあ。同い年だけど、農業で国を強くしようだなんて考えたことなかったぜ。」
 うん。私も農業で国が強くなるとは思えない。
――後日、リリにこの話をしてみたら、農地開墾をして食の安定、生活の安定を計ると民が多くの子供を産み、育てることが出来る。子供が多ければ、徴兵されてもその家は畑を耕す人手が足りる。
でも、戦争をしかけないで生産物を他国に売って利益を得て、国を守れるだけの兵を雇い、強い国を目指したらいいんじゃないかなあ――
 リリがそこまで国のことを想ってくれていることに感嘆を覚えた。


「ラファエル殿下。」
 ガブリエル王子が話しかけてきた。
 事務的な用事以外、お互い話すことはなかったのだが。
「返事をするのも嫌ですか。あなたからは私を嫌うオーラが滲みでてます。一国の王太子として、その態度はいかがなものですかな。」
「あなたがそう思われてるから、そう感じてるのではありませんか。」
 にこりと笑って返す。
 母を奪った帝国を許すことはないだろう。
「婚約者のリリー嬢とお話しました。素晴らしい女性ですね。」
 私の婚約者を愛称呼びするな、と言いたいが、リリが「リリーと呼んで下さいね」と愛称呼びを触れ回ってるから仕方ない。
「ありがとうございます。」
「だが――
あなたの母上もとても美しい女性でしたが、最期は不義を働いてましたね。彼女はそうならなければ良いのですが。」
 ガブリエルの意味深な言葉に姦通罪で処刑された母を思い出す。私たちから無理矢理母を奪って、嘘の罪を作り出し、処刑したのではないか?言ってやりたいことは山ほどあるが、帝国に比べると小さな弱い国の王太子では何も言えない。
 ガブリエルはくすりと不敵な笑みをうかべ、「では」と去っていった。


 生徒会室の扉を開くと、リリがココ嬢とレニ嬢とお菓子を食べながら談笑してた。
 私が浮かない顔をしているからか「どうかしました?」と聞いてきた。慌てていつもの笑顔で「なんでもないよ」とこたえた。

 帰り際、リリと二人きりになった時に
「リリ、私のこと好きかな?」
 思わず口に出てしまった。
 そう、思わず。
 リリは驚いたのか少し間をあけてから
「すきです。」
 と小さなつぶやくような声で伝えてきた。
「ありがとう。」
 と笑って返す。
 リリが私に対して好意を寄せてるのは分かっているが、それは「婚約してるから」仕方なくなのかなと不安に思う時もある。
 これで完全に安心できたわけじゃない。ガブリエルの言葉は深く胸に刺さったままだ。
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