BUDDY-0-

TERRA

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BUDDY-0-SURVIVOR

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船室の空気が、不意に凍りついた。
志麻の視界の端に、いつの間にか現れた黒い影。
ジョシュアだった。
静かに立つその姿は、まるで獣を狩る前のライオンのように研ぎ澄まされていた。

「何してくれてるんだよ?」
低く静かな声が、湿った空間に突き刺さる。
「ソイツは……俺のだ。」

バッ──!
返事の代わりに、シリアルキラーが振りかぶった左腕を叩きつけた。
獣のように変異した筋肉、異常な反応速度。

「おいおい……抑制剤、打ってねぇのか。」
ジョシュアは寸前で身を翻し、机を背にして床に滑り込むように着地する。
「獣人化は法律違反だろ、クズが。」

返す言葉もなく、シリアルキラーの喉奥から野太い唸り声が漏れる。
グルルルル──

その姿は半ば鳥のような翼を持ち、下半身にはハイエナの毛皮が浮き出していた。異形の融合。
「鳥かと思ったが……半分はハイエナか。」
ジョシュアはポケットから一本の注射器を抜き取ると、迷いなく自らの首筋に突き刺した。
「……ふっ。俺の敵じゃねぇな。」

カチン──という硬質な音と共に、瞬く間に全身の筋肉が隆起する。
黄金色の体毛が吹き出し、背中を割って獅子のたてがみが広がる。
獣人化──ライオンの姿が顕現する。
「……ガルルルルル。」

次の瞬間には、すでに目の前にいた。
稲妻のような一閃──その牙がシリアルキラーの首元に深く喰らいつく。
「ッガアァアアッ!」
羽を広げて抵抗するシリアルキラーが腕を振るう。
骨がきしむ音。
だが、ジョシュアは怯まない。

「ガルルルルッ……!」
組み合い、ぶつかり合い、血と汗と唸り声が交錯する船室の中。
その壮絶な戦いの只中、志麻は縛られたまま、ただその姿を見ていた。
ジョシュアの金色の獣が、自らの体を盾にしてシリアルキラーを押し返している。
その背中は、かつてアルノーを守れなかった後悔のすべてを背負っていた。

「グゥッ……!」
やがて、シリアルキラーは船室の壁を破り、甲板へ逃げ出す。
吹き抜ける風。ざあっと波しぶきが舞う。

「逃がすか……!」
ジョシュアは半獣のまま追いかけ、甲板の上で最後の交錯。
翼を広げたシリアルキラーが飛び上がろうとしたその刹那、ジョシュアの爪が、脇腹を深々と裂いた。

「ギャアアアァッ!!」

ばしゃんっ──
海へと叩き落とされるシリアルキラー。
泡立つ海面。
消える影。

しゅううう──
ジョシュアの体毛が引き、骨が戻っていく。
呼吸が荒く、肩が上下する。
人間の姿に戻った彼は、血に濡れた拳を見下ろしながら、低く呟いた。

「……ちっ。」
静かな勝利。
だが、まだ終わってはいない。
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