BUDDY-0-

TERRA

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BarINC

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「前にも、他の奴が聞き込みに来たと思うが。」
ジャドがそう言うと、レムはグラスを拭く手を止めたまま、小さく瞬いた。

「えぇ、この辺は治安が悪いですから。どの事件ですか?強盗、娼婦殺し、あとは……。」
レムは何気ない口調だったが、その間には明らかな選別の気配があった。
「俺が追ってるのは、連続強姦事件だ。」
グラスの縁を指でなぞりながら、ジャドは言葉を落とすように言った。

「そうですか。」
レムはそれ以上、驚きもせず、関心を示しもせず、ただ静かに頷いた。
まるで、どこか別の話を聞いているかのようだった。

「被害者の女性は、このバーの常連が多い。」
「ふ。」
レムは短く笑ったような息をついてから、目を細めた。
「それに、この辺に住んでいて、この辺のクラブやジュエリーショップやカフェに通ってる人も多い……でしょ?」
言葉の端に、わずかな棘があった。ジャドの視線が一瞬鋭くなる。
「つまり、バーに限った話じゃないと?」
「そう言いたいわけではありませんが……。この街の夜に染まってる人間は、みな似たようなところを回遊するものです。」

レムは言いながら、カウンターの下から紙を一枚取り出した。
閉店告知のチラシだった。
ジャドの目に、それが自然に映る。
「……これは?」
「閉店のお知らせです。来月には店を畳みます。」
「こんなに賑わってるのに、か?」
「賑わっているからこそ、支度金ができたんですよ。」
レムの言い回しには、皮肉とも疲労ともつかない余韻があった。
ジャドはグラスを少し持ち上げ、その冷たい縁を唇に運びながら訊いた。

「逃げるのか?」
「逃げる……ふふ。そう見えますか?」
レムはグラスを並べ直しながら、片眉をわずかに上げた。
「この辺は、あなたもご存知の通り治安が悪い。先週もホームレス殺しや、ギャング同士の諍いもありました。夜の街は、もう少し静かになってくれればと思うくらいです。」
「他人事のように聞こえるな。」
「僕はただの店主ですから。」

その言葉に、ジャドは沈黙で応じた。
氷がゆっくりとグラスの中で崩れていく音が、どこか遠くから響いてくるようだった。
「……おかわりは?」

レムが訊いた。
「いや。」
ジャドはそう答え、コートの内側から名刺を一枚取り出した。
「何か思い出したら、連絡してくれ。」
「えぇ、もちろん。」
レムは名刺を受け取り、何も言わずにカウンターの奥にそれを滑らせた。
その所作は、まるで誰かの秘密をそっと隠すように慎重だった。

ジャドは立ち上がり、濡れた床にブーツの音を落とした。
扉の向こうでは、まだ雨が降っていた。

「気をつけて。」
背後からレムの声が届いた。
その声は、先ほどよりもわずかに低く、どこか遠いところから響いてくるようだった。

ジャドは振り返らず、ただ一歩、また一歩と、夜の通りへと歩を進めた。
赤いネオンが、まだ濡れた石畳に舌のように揺れていた。
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