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夏の残像
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しおりを挟む車がゆっくりと田舎道を走る。
窓の外には見慣れない車や人の姿がちらほらと見え、町は少しだけ賑やかになっていた。
運転席の颯太が、ふとぼやくように口を開く。
「祭りの時期はよそもんが増えて参るな。」
助手席の理央はスマホをいじりながら、くすりと笑う。
「ふふ、父さんみたいな事言うんだね。」
颯太は軽く肩をすくめ、ハンドルを握り直した。
後部座席では、陸がぼんやりと窓の外を見つめていた。
故郷の風景は変わらないのに、人の流れがわずかに異なっている。
そんな違和感を感じながら、ふいに会話へと意識を向けた。
「あ、そうだ。颯太、今日は海は?」
理央が何気なく問いかける。
颯太は視線を前に向けたまま、短く答える。
「誘ったけど、何か忙しいって。」
陸の指先が、わずかにシートの縁をなぞる。
今日のバーベキューに海が来ないことを知り、少し残念そうに視線を落とした。
「アイツ……毎年この時期になると帰ってくるだろ?」
颯太の声が僅かに落ちる。
「そりゃあ、お盆の時期だからねぇ。」
理央は特に気にする様子もなくスマホを操作している。
車内には、しばらく風の音だけが流れた。
そして、颯太はふと思い出したように言葉を続ける。
「園部のオッチャンに言われたんだけどさ。」
「ん?」
陸はさりげなく視線を向ける。
「アイツ……何か昔の事件追ってるみたいだから、気ぃ付けて見ててやってくれって。」
その言葉が、車内の空気に微かな緊張を生んだ。
陸は何も言わず、ただ窓の外へと視線を戻した。
夜へと向かう空が、静かに赤く染まり始めている。
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