黄泉ノ彼岸葬儀店

TERRA

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EP.8灰と炎Cinis et Ignis

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轟音と悲鳴が渦巻く世界だった。  

灰と煙が視界を覆い、火の粉が散る中、人々は逃げ惑っていた。  
瓦礫を飛び越え、叫びながら出口を探す者。  
倒れた者を助けようとする者。  
燃え盛る炎の前で立ち尽くす者。  

だが、黄泉と棺は、その混沌の中をただ歩いていた。  
彼らは何もできなかった。  

「……くそ。」  

棺は歯を食いしばり、拳を握る。  

この世界は精神世界。  
焔の記憶。
彼女の最後の瞬間の再現。  

助けることはできない。  
この世界の中では、ただ目撃することしか許されない。  

その時。  

瓦礫の影に、小さな影がうずくまっていた。  

膝を抱え、震えながら、少女は焦げたオルゴールを腕にしっかりと抱えていた。  
火の光に照らされたその姿は、あまりにも小さかった。  

「お母さん……」  

か細い声が空気を切り裂く。  

「おかーさーん……!」  

棺は唇を強く噛んだ。  
その視線が、ほんの一瞬だけ、少女の姿を捉え…次の瞬間、彼は目をそらした。  

黄泉は何も言わずに歩き続けた。  
炎の熱をものともせず、まっすぐに非常階段へ向かっていく。  

階下へ降りる。  

足元に崩れた柱の残骸が広がっている。  

そしてその瓦礫の間に、埋もれるように横たわる女性の姿があった。  

「……生きてる。」  

黄泉が低く呟く。  

倒れた柱に半身を押し潰されながら、それでも微かに息をしている。  
しかし、その目は虚ろだった。  

黄泉は静かに彼女へ近づく。  

そして、彼女の肩にそっと触れた。  

その瞬間、世界がわずかに揺らぐ。  
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