黄泉ノ彼岸葬儀店

TERRA

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EP.9沈黙の誓いSilent Oath

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世界が切り替わる。  

冷たい雨が降り注ぐ夜。  
濡れたアスファルトが街灯の光を反射し、ぼんやりとした輝きを放っている。  
その光景は、静かでありながら、どこか不穏な気配を漂わせていた。  

黄泉と棺は、暗闇の中に立っていた。  

雨音が響く。  
遠くで車のエンジン音が近づいてくる。  

「……ここは?」  

棺が低く呟く。  

黄泉は答えず、ただ前方をじっと見つめていた。  

その時。  

ヘッドライトが闇を切り裂いた。  

光の中に浮かび上がるのは、一人の妊婦だった。  
彼女は傘も差さず、雨に濡れながら道路の真ん中に立ち尽くしている。  

「危ない……!」  

棺が思わず声を上げるが、彼女には届かない。  

ここは精神世界。
干渉することはできない。  

車はスピードを緩めることなく、彼女に向かって突き進む。  

次の瞬間。  

鈍い音が響いた。  

その瞬間、世界が揺らぎ、雨音が遠ざかっていく。  
黄泉と棺は、次の瞬間には全く異なる場所に立っていた。  

コンクリート打ちっ放しの壁。  

無機質な部屋には、窓にかかったブラインドの隙間から、夜のネオンが控えめに差し込んでいる。  

青や赤の光が、暗い空間にぼんやりとした色を落としていた。  

部屋の中央には、黒い革張りのソファが置かれている。  
そのソファに深く腰掛けているのは鋭田灰二。  

彼は片手に携帯電話を持ち、低い声で誰かと話していた。  

「依頼人は大物でな。ただの事故に見せかけてほしいそうだ。」  

電話の相手の声が、静かに響く。  

鋭田は煙草を指で回しながら、短く答えた。  

「ターゲットは?」  

「あぁ、今メールしといたよ。」  

鋭田は無言で近くのテーブルに置かれたパソコンを開く。  
画面が明るく光り、彼の顔を淡く照らした。  

そこには、一人の女性の写真が映し出されている。  

鋭田はその写真をじっと見つめる。  
だが、表情には何の感情も浮かばない。  

「了解。」  

短い言葉を呟き、彼は静かにパソコンを閉じた。  

部屋の中に再び静寂が戻る。  
ネオンの光が、ブラインド越しに揺れていた。  

黄泉と棺は、その光景を黙って見つめていた。  
この男の冷たさと、沈黙の中に潜む何かを感じながら。  
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