呪われた騎士と関西人

ゆ吉

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2章

37.「触れぬ者」※

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 戦いが一応の終焉を見せた後は比較的和やかに宴会は進みってか…、シェーンさんはやっぱりやけ酒気味になって早々とレオニーちゃんが抱えて退出した。
 味方がいなくなったなとしょんぼりしてたら、ウィプキングさんが抵抗するヴィーダーさんを引っ張ってクレーさんがそれを宥めつつ去って行ったんで、これから商談会議という名の仄暗い密談が行われるんかと寒気を覚える。
 残ったレーヴェさん、トレラントさん、ライゼ組は今後の旅の方針とか今まであった細かい公私共に渡る情報交換とかしてて、まだ話しは続きそうな様子なんで結果的にエーベルさんと二人で飲んでるみたいになった。

「落ち着いて話すのも久しぶりな気がしますね?」

「そうだな…、短い間に色々あった気がする。」

 この世界に来てお世話して貰いっぱなしやもんなと苦笑したら、何処か真面目な顔したエーベルさんと視線が絡んだ。

「ダイチ、少し誰にも邪魔されずに話がしたい…良ければでいいが、着いて来てくれないか?」

「…?水臭い言い方ですね。構いませんよ、知らん仲でもなし。」

「…そうか。」

 珍しく歯切れが悪かったんで快諾したら複雑そうにエーベルさんが笑って立ち上がり、残りのメンバーに先に退席する旨を伝えてくれたんで俺も後に従う事にする。
 外に出ると日はすっかり落ちてて夜風が頬に気持ちええなぁって思いながら、大きい背中を見つめて進み、奥にある天幕へ辿り着くと入口で一度振り返られた。

「ダイチ…本当に良いんだな?」

「…え?話を聞くんですよね?大丈夫ですよ。」

 念押しにそんな重要な話なんかと戸惑ったが、逆に大切な話やったら聞いとくべきやろと頷いた。
 また、一人で抱え込んでるようやったらどうにかしたいし。

「では、参ろうか。」

 決意を固めたような口調と共に入口の布を鮮やかに片手で避けてくれ、まるで舞台でも始まるんかって錯覚を覚えつつも促されて中へと踏み込んだ。

 そして、入った天幕は一番最初にエーベルさんに出会った場所で、懐かしさに周囲を見渡してると後から入って来たエーベルさんがそれに気がついて声を掛けてくれる。

「懐かしいか?」

「ええ、最初に話したん此処ですもんね?そう言えば、なんで初対面の挨拶の時、変な間があったんですか?」

「ああ、大概の者が初対面の時に怯えるのでな。あんなに滑らかに挨拶されたのは久しぶりで…此方が戸惑った。」

 なるほど!大分、経ってから真相が分かったなと更に感慨深く思ってたら近づく気配があって、視線を上げると慈しむような柔らかい笑みを向けられてた。

「今でも…連れて帰れるなら帰りたいと思っている。一度別れて、もう暫く会えないのだと実際に突きつけられてから…余計に。それに…」

 途中で言葉を切ったエーベルさんが拳を強く握り締めたんで、礼装の時に使ってる白い手袋に深い皺が刻まれる。それは今の感情を現してるようで辛そうやった。

「エーベルさん…?」

「まさか、あんな奴が出てくるとは思わなかった…っ。」

 地を這う声が静かな天幕内に響いて鼓膜を揺らす。『あんな奴』て、もしかせんでもヴィーダーさん?初対面から険悪やったし…でも、俺とヴィーダーさんはそういう関係ではないんよね。

「あの、なんか誤解されてるんかなって思ってましたが…別に彼とはそういう関係やないんですよ。」

「ダイチはそうだろうが…奴の気持ちは聞いたか?」

 聞いてはないと言うか、そういう感情が迷子のヴィーダーさんに聞いた所で果たして答えが聞けるんやろか?

「…うーん、聞いてはないです。」

 そう答えるしかなくて首を振るとエーベルさんの表情が険しくなり、明らかに奥歯を噛んでるんかギリッて音が聞こえた。
 何げに剣呑な雰囲気になって来た所で話したい事ってこれかとやっと気がつく。
 あかん、こういう方面の察しが悪いなってか…感覚的に男同士でってのが染み付いてないからやけど。
 どう考えても前世ノーマルやったし、恋愛経験も正直あったんかってレベルやもんなぁ。
 改善した方がええか?て、真剣に悩みそうになった所で息を大きく吐いたエーベルさんに気がつき様子を伺うと、苦笑してから背凭れと肘掛けのある割と立派な椅子を指で示してきた。

「ダイチ、あそこに座ってくれるか?」

「椅子にですか?別に良いですけど…何故に?」

「少しな…。」

 やっぱり意図が分からんが、まあ座るぐらいなんでも無いんで頷いてから向かって腰を据えると初めて出会った時と反対の位置に来たんで、エーベルさんが座ってた椅子かと思い出す。
 これも懐かしいなと考えてたら近づいて来たエーベルさんが膝を折り、まるで皇帝様に跪いた時のような姿勢になるんで瞬いた。
 元々の背が高いから座った俺と視線も余り変わらん位置で見つめ合う体勢になって漸くあれ?て、疑問が湧いた。

「叶うなら、俺のモノにしてしまいたい…だが、それはダイチの気持ちに添わない。」

 確認するように囁かれたんで小刻みに頭を上下させて頷く。何が言いたいんやと視線を逸らせずにいたらフッと意地悪く笑われた。
 待て…まてまてまて!この顔、一度見た事がある…確か、あのキスされるんかって勘違いした辺り!
 反射的に椅子から立ち上がり掛けたんやが間近の距離を素早く詰められ、しかも、肘掛けに両手を置かれ脚の間に片足を滑り込まされてから覗き込むように今度は顔が近づいて来る。

「心配するな、ダイチ…俺がそういう目的でお前に容易く触れないのを知っているだろう?」

 確かにそんな感じで触れられたんは寝惚けてる時の事故ぐらいやけど…ここで騙されたらあかんと思う!だって、エーベルさんのそっちのアドバンテージが高いのは既に知ってるから!

「いやいや、明らかに何か企んでますよね?俺も常に成長中なんですから、流石にわかりますよ。」

 一応、反撃しながら逃げ道ないかと視線を彷徨わせるも逃げた所で防ぐ気満々な気迫が感じられて、退路が見つからん!
 プチパニックに突入仕掛けた所で手早くフードを落とされ耳の中に息吹きかけられてビクーッと肩が跳ね上がった。

「うわぁっ!」

「耳が弱い者は多いな…本来ならこのまま縁を舐めて、中に舌を入れ…擽りたいのだが…。」

 やめてー!てか、願望がダダ漏れなんはワザとか!?これが続くとか言わんよな!?こっ恥ずかしいにも程がある!
 慌ててたらくすりと笑う気配がして、次は右手の人差し指を立てて唇のぎりぎりまで寄せられ、端から往復するように撫でられる。
 触れてへんのに僅かに擬似的な感覚が表面を滑って落ち着かんし、指が離れたと思ったら顔が近づいて来て勿論触れへん距離やのにちゅってリップ音立てられて…ほんまにキスされたみたいとかっ…!

「っ…エーベルさーん!やめて下さい!恥ずかしさで死にます!」

「大丈夫だ。ダイチなら死なない。」

 若干、マジレスされつつ既に半泣きになってたら頬に今度は息を軽く吹きかけられて擽ったさに肌が粟立つ。おまけに優しく微笑むとか狡いやろ!

「もしかせんでも、これに付き合わな…解放してくれへんのですか?」

「ああ、話がしたいと言っただろう?それをダイチは承諾してくれた。」

 話ってこっちかい!?二回も確認するから大切な話しかとは思ったけど、そんな言葉の機微がわかるかーい!?て、心の中で叫んでももう手遅れやった。

「それに…ダイチの『体』は一切汚れない。なんの不都合もないだろう?」

 体は確かにやけど!『加護』と言いエーベルさん精神的にはガンガン攻めて来てるのは気のせいじゃないよな!?
 くそう!こっち方面は悪い男やとは薄ら思ってたし、流石、あのド変態で上級者のシュティを飼い慣らしてるだけの事はあります!

「ああもう…分かりましたから…、手加減して下さいよ?」

 逃げられへんのやったら、なるべくエーベルさんの温情に縋るしかないと思ってお願いしたんやけど、受け入れたみたいに取られたんかそれはもう惚けるような甘い甘い笑みが溢れた。
 そして、そのまま墓穴を掘って続行されたんやが…まず顔が見たいって事でアイマスクを外され、床に転がされるってか貰いもんの扱い!

「今、陛下の私物があると頭にくる所があるな…。」

 本音が出てまっせ!相変わらず戦り合いつつ過ごしてるんかと思ったのも束の間、じっと瞳を見据えられる。

「綺麗な黒だ…眼球を舐めるというのも、ダイチなら美味そうだな…。」

「うぐっ…」

 変な声が出たってか、想像したら中々に生々しいし美味そう発言にヒヤヒヤする。
 そして、目から鼻、唇と視線が辿って下へ落ち、喉元のシャツで止まると片手の指が伸びて来てボタンを上から外され、途中ベストも同じように解かれてシャツに戻りと最終的に胸と腹の肌を晒す事になってた。

「エーベルさん触らんて…。」

「直接、触っていない。そうだな、俺ばかりと言うのも悪いか。」

 不満が伝わったんは良かったけど何故かエーベルさんもきっちり着込んだ礼装の上着のボタンを片手で外し、更に中のシャツも解いてと…間近で直視するには綺麗すぎる筋肉が見えたんで視線を逸らす。

「ダイチは…俺の体を気に入ってくれてるだろう?」

「なっ…!」

「よく視線を感じた…触れたいなら好きに触っても良いぞ。」

 バレてた上に挑発された!?いやいやいや、俺から触ったら完全にアウトーからの何かが待ってる未来しか見えへん!

「いや、遠慮します…恐れ多いです。」

 何もない時やったら触ってみたい気もするって気持ちが無かった訳やないけど、ここで耐え…!
 て、気を逸らした自分が完全に悪かった。姿勢を低くしたエーベルさんが胸元に顔を寄せて来て乳首を舐め…ないぎりぎりの距離で舌を出して、少し残念そうにしてからふっとまた息を吹きかけられて妙な感覚が背を這い上がる。
 これ、実は直に触られるよりヤバイんちゃうやろか…常に焦らされてるってか我慢比べみたいな所があって、初心者向きでは絶対にない。

「…っ、エーベルさん…」

「直に触って欲しいか?だが、断られた身だしな…。」

 下から見上げながら白々しく言われて、微妙な怒りもあるんやけど…怒る場面でもない。
 動揺させられながらもまた、舌が出て来て胸元から正中線を辿るようにヘソへと動きその周囲をじっくりと舐めるような素振りを見せられて一際、ゾクリと肌が粟立った。
 だって、朝…フォルクに舐められてって考えたら一気に顔に熱が集まる。なんでや、アレにそういう意味は無かったし、俺が勝手に反応しそうになってって…でも…なんで、あんなに…。
 更に思考の深みに嵌って抜けられず、ドクドクと心臓の鼓動が速くなってじっとりと汗が滲んでくるような気もして、内股を擦りそうになったらエーベルさんの脚に軽く当たった。

「…ン、少しは感じてくれ…」

 それに反応してエーベルさんが顔を上げたんで視線が合ったんやけど、驚いたような表情してから切なそうに眉を寄せる。

「なんて顔してる…我慢も切れるぞ…。」

 どうしようも無いってか、上がった熱が下がらんねんもん。自分自身に戸惑うし可愛い尻尾が目の前で揺れてる気がして背徳感に眩暈さえ覚える。

「そ…言われても…俺…」

「…はぁ、ダイチ…目を閉じていろ。」

 溜息つきつつ謎の指示を出してから何故かエーベルさんの手がベルトに掛かり、戒めを解いてズボンの前を開けた。
 唯でさえ珍しく欲情してるのにそんな事されたら煽られてるようにしか思えんくて睨んだら、眼を細めて優しいような気遣う声音で促される。

「辛いだろう?ほら…、俺は触らずにダイチが自分でするだけだ。」

 そう思えってか…何処まで倒錯的やねんて考えんでもなかったけど、変な上がり方した熱を下げたくて…友人を汚すような考えが嫌で…静かに目を閉じた。
 そして言い聞かせる、自分で処理してるだけなんやと。例え、下着に入り込んで来た手袋越しの指の体温が冷たいとか、いつもより動きが巧みで性急に欲がせり上がって来るとかは全部、頭の隅に避けて快楽に酔う。

「っ…ぁ、んぅっ…」

 聞こえるのは衣擦れの音と性器から溢れた先走りの液がくちゅりと上げる淫らな音。
 呼吸も段々と忙しなくなって来て、堪らず手の届く範囲にあった肩に縋るようにしがみついたら…見た事もない筈やのに綺麗な赤髪が脳裏にチラついて泣きそうになったんで、強く唇を噛むと直ぐに限界を迎えた。

「ン、く…っ…!」

 声は耐えたけど強い余韻に目頭が熱い。
「ハッ、ハッ…」て、短い息を吐き出しながら目を開けると意地の悪すぎる相手の尖った耳に唇を寄せ俺も意地悪をする。

「人にイかされたんは初めてです…だからもう、勘弁して下さい。」

「…っ…分かった…我儘に付き合わせて悪かったな。」

 これであかんかったらもうお手上げやなと思ったけど、満足してくれたんか引いてくれて助かった。
 けど!手袋についたモンを目の前で舐めながら「甘い…。」て、言われて頭が沸騰するかと思ったってか、食レポはもうやめてー!!!!
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