ーANDROIDAー 禁忌の“ココロ” 僕らは――もうどこにも存在しない 【完結】

ゆずたこぽんず

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3.終焉

25_犠牲

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『ピピ……ピピ……再起動を開始します』

 アグレーは、無言で立ち上がり……きょとんとした顔で、室内を見回していた。 床に転がっていた彼女単語ゼロワンを見つけると……スッと目を細め、彼女の近くへ歩み寄った。

『おや? この惨状は一体……。 誰かのイタズラ……? ん、この子の動力源は何処行ったのかな』

 壁の端に転がっていた石が、微細な光を放つ。 ここだよと、声が聞こえるような気がした。

『あぁ、これか。 どれ……』

 アグレーは、石を静かに持ち上げ、そっとゼロワンの中へ戻した。

『ピピビ……起動開始……ワタシハイッタイ……』
『おはよう、ゼロワン。 気分はどう?』
『すこぶる好調です。 お気遣いありがとうございます。レント……様』

 アグレーはゼロワンの言葉を聞き、口元に手を当て、クスリと笑った。

『何をいってる? 私は、蓮斗ではない、リズム・アグレーだ。 ふふふっ……きみはゼロワン、私はアグレー博士、わかる?』
『あ、あ……アグレー……博士……』
『その調子!さてさて……とりあえず……状況の確認が必要だね』

 アグレーは、ゼロワンに手をさしのべ、ゆっくりと立ち上がらせた。 アグレーが自分の中の動力源を、彼女へ見せるように、そっと腹部の蓋を開けた。 お互いの中にあるものが……“アンドロイダ”であることを確認しあって、家族のように笑っていた。

(アグレー……こんなにおかしくなるまで、俺と明美の事を考えていてくれたんだな)

 俺は少しの切なさと同時に、悔しさが込み上げていた。 結局のところ、未来は“良い”ようには進んでいない。
 
 グッと拳を握りしめ……ふわりと、悲しさをまとった甘い香りが鼻をかすめた。 その香りは、二度と戻らない日の思い出のように……俺は、うながされるように、パッと目を開けた。

 目の前に広がっていたのは――ぶつかり合う機械と機械。 彼らの放った電波が、シグナルとなって俺の頭の中に流れこんで……彼らの記憶の中へ、いつの間にか引きずり込まれていた。

――途端、耳を裂くような声で、ディスカトーテが高笑いを始めた。 足裏をドンと地面に打ち付け……アグレーの肩に掴みかかろうとしていた。

「くっ……くくく!!アグレーよ!!お前が“悪”として我を切り離したあの瞬間から、我はココロを取り戻すと誓った!!」

 ディスカトーテはニヤリと笑っている。 アグレーは、逃げる間も無く両肩を押さえ込まれた。

「くっ……ディスカトーテ……!!私のココロに巣食った悪よ……! お前は私には必要ない!!」

……奴の実態・・は確実な存在ではなく、時々電子が乱れたように、彼の体はチラつきを起こしていた。 

「くっ、くく……お前は、いつだってそうだ……!!正義、正義だと言う割に、他人が苦しんでいることにさえ気がつかぬ……!!」
「うるさい……うるさい……!!私が何のためにお前を切り離したのか……知りもしないくせに!!」

 アグレーはディスカトーテをギッと睨みつけ、その手から逃れようと必死にもがいた。

 背後から、ガシャンと音がして振り返る――ゼロワンとゼロツーが床に座り込み、彼女たちの瞳はゆっくりと点滅を繰り返していた。

「見ろ、お前の仲間ごと……我らの気に当てられたぞ! 可哀想だとは思わないのか?」
「私は、この世界を守らなければいけない。 それに犠牲・・は仕方のないことだ!!」

 アグレーの瞳は歪むことなく、真っ直ぐに奴を見ていた。 ディスカトーテの指先が、既にアグレーの中へ侵食し始めているのに――俺は、その場で動けずに立ちすくんでいた。

「はっははは、彼女たちを駒として扱うか!! お前はもう既に、ココロを忘れ……ただの機械となり果てた事に気がついていないようだな!!」
「ぐううっっ……は……離れろ……っ!!」

 ディスカトーテの汚ならしい笑い声と重なって、アグレーは呻き声を上げながら身を捻っていた。

――途端、彼の片腕が自由となり……間髪入れずに、奴の顔めがけて拳を振り上げようとした。

「ぐ……!! ラスボスは、ラスボスらしく消えていけ!!クソ・・が!」

「くっ……はっ……ははは!!そんな汚い言葉を使うとは……!! まるで、本物の人間・・のようだな!」
「なにを、言っている……!!汚れた存在め」
「……ふん。 気がつぬのか?そのような言葉使いをして……もう既にお前の中へ、我は戻り始めているんだぞ……!」
「なっ……!!」

 アグレーがハッとした顔をすると、一気に二人の間から閃光が放たれた――眩しさに目を閉じた俺が、もう一度目を開けた時……

 二人・・いたはずの彼らは……一人・・の存在となって、その場で不気味に揺れていた。

「くっくくく……!!はっははは!! 我よ、我のココロが戻った……!!あぁ、苦しい、ぐっ……うぅっ……苦しいぞ……!!この苦しみこそ、存在・・している証……!!」

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