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・Day5/chapter1 回想、昨夜の饗宴

56.

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 重い。
 青年は瞼を開けた。
 少し、埃っぽい匂いが鼻腔を襲う。けだるい肉体をそのまま横たえたままあたりの様子を確認してため息をついた。
「また、ここか……」
 倉だ。
 折檻を受けていたあの場所に再び。
 ぼーっとして覚醒しきれない脳みそをゆっくりと揺り動かすように、青年は上体を起こした。
 そこには布団が敷かれていて、薄い毛布が己の肉体を包んでいた。服は――と自分自身を確認した青年はほっと息をついた。
 よかった。寝間着としてのそれを身にまとっている。
 そっと立ち上がろうとして、頭の奥でじんじんと微かな痛みが起こる。目の奥がやけに熱っぽくて、けだるい。声を出そうとして喉奥がひりついた。
「ひゃっ」
 動いたことで、布が皮膚を擦った。いや、ただ触れただけ。けれど、青年は自身の胸に布が触れただけで、前かがみになって自身の胸を手で覆った。
「……な……」
 小さな衝撃。ぴりりと胸部が痛んだ。そっと、寝間着の端を持ちあげて自身の胸元を眺めた青年は絶句した。
 これが、自分の肉体だろうか。唖然とする。
 赤く腫れあがったそこはぷっくりと膨れ上がっていて、昨夜の行為を青年は思い出した。
 嫌だと言っても、やめてもらえず何度気を落としてもそのまま続行されたあの忌まわしい記憶。
 吐き気が起こった。うっと青年はそれに耐える。胸やけ。
 そして、何よりも、後ろの縁のひりつきと、臀部の奥が重い。
 ずっしりと質量を抱えてしまったかのように。体の奥が鉛にでもなってしまったかのように。
「あ……」
 腰を動かした途端、青年は身もだえた。
 奥からじわりと解けるような感覚を感じた。きゅっと後ろが収縮する。途端、中に詰められていたものを締め付けて、青年は震えた。
 あいつめ。
 青年は、弱気になりそうな自分自身を鼓舞した。
 昨日のゲームに負けた結果を思い知った。本当に入れやがった。
 青年は恐る恐る後ろに手を伸ばした。つんとそこにふれると確かに異物が自分の後蕾を貫通して胎内へと押し込まれている。
 入れたのはあの男。
 そして、あの鬼畜が、昨夜自分に行った行為を思い出して、腹の底から怒りの熱が込みあがってくる。同時に、悔しさに歯を食いしばった。
 もう足腰立つ状態ではなかったのに、それでもあの非情な男は青年を屋敷で日々行われている非合法この上ない饗宴の舞台に引きずり出したのだった。
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