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・Day5/chapter3 捕獲者たち

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「――っつ!」
 反射的に強く閉じた瞼を開いて、青年は息を飲んだ。
「お、おまっ」
 気が付いたら、男に組み敷かれており、青年は反応が遅れた。
「ん、くっ……」
 胸の尖りを男の分厚い指につままれて、声援は声を漏らした。
「今日はどこまで逃げたんだ? ん?」
 楽しそうに尋ねてくる男に彼は唇をかみしめた。首を振って対抗する。
「だんまり、か……」
「は、ああ、う……んっ」
 彼の指悪戯が強くなって、青年は声を漏らしそうになる。慌てて、必死にそれをこらえる。
「ふ……どうやら、まだ効いてないみたいだな」
 藤滝が不気味に笑った。
「っ!?」
「……お前、さすがに気が付くだろう」
 男は青年の反応にため息をついた。
 彼の顔がようやく青ざめてきてから、男は機嫌を取り戻したようだった。
「あれがどういったたぐいのものか、知りたいか?」
「な、お前……っ!!」
「暴れ馬には丁度いい薬だ。鈍感なお前にはまだ少し時間がいるみたいだな……」
 男はそっと青年の下腹部に腕を伸ばした。
 触れるか触れないか。
 絶妙な仕草で下へと移動していく彼の指はある個所で動きを止めた。
「お、おい、どこ、さわって……!!」
 青年はびくりと全身を震わせた。
 つん、と優しくそこをつつかれただけだった。
「まだ、何もしていないが?」
 喉奥で笑いを嚙み殺したような、男の声。
 たった一瞬、つつかれただけで、青年のそこは甘い悲鳴をあげたように、震えあがり、凝血した。
「く……、こ、これ……」
「あまりにも薬が効かないのも、困るからな。少し遊んでやるか」
「あ! ば、ばか、さわるな!」
 大きな男の手のひらのなかにそこを包み込まれて、青年は必死にそれに抗おうとした
「そんなに怯えたような声を出すな……」
 かすれた男の声が耳にかかる。
「あっ! ……うう……」
 上下に擦られて、甘いしびれを感じ、青年の抵抗は、弱くなった。男はもう片方の腕を彼の後ろへと回り込ませ、静かにそこをノックした。
「く……ふ、う、う……」
「簡単に指が涼み込んでいく。……欲しかったのか?」
 違う、と言おうとして、激しく内側に挿入された指の衝撃に、青年は、大きく腿を痙攣させた。
「アっ、ああ、うあっ……」
「興奮すればするほど、回りも良くなる」
「ひ、あ、ああっ、やだぁ、や、めて……」
 侵入してきたものは、内部を噛み乱すように動きまわる。前もその手淫の悦に負けて、先走りの涙をぼろぼろとこぼしだした。
「も、だめっ……あ、ああっ」
 我慢をこらえきれずに、達そうとした瞬間に、男は青年の前と後ろから手を引いた。
「へ……」
 来ると思っていた感覚が遠のいて、青年は目を丸くした。
「そろそろ時間だな」
 男は腕にはめた時計を見てつぶやいた。
「おい、連れて行け」
 廊下に向かって声をかけると、使用人たちが室内に入ってくる。
「あ、く……くそ、おいっ」
 使用人たちに捕まった青年は見た。
 男の瞳が不気味な光をたたえていることに――。
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