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・Day5/Chapter4 水揚げには違いない

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 宴の為に作られた部屋の中では、どちらかというと小さめの部屋に連れて来られた。
 それでも、広間と呼べるだけの広さは充分ある。
 四方周囲を襖が囲み、その奥には廊下、反対側の襖を開ければ、小さな縁側と庭、という作りだ。
 なので、青年はその場所に連れてこられたとき、微かに期待した。
 庭に面しているということは、隙さえみつけることができれば、逃げやすい、ということだ。
 だから、本当ならばまだ脱走癖の抜け切れていない青年を連れてくるには、この場所はあまりよくないはずだ。そのことについて、男が何も手を打っていないということは、なかった。
 青年としては、体内で熱がくすぶっていたが、まだ、いけると考えた。
 だから、最初は従順なふりをして、逃れる道を探していた。

 室内で待っていたのは、三人の男だった。
 前に宴の見せしめとしてだされた際に、青年を所望していた中年の男たちだった。
 どれも恰幅のいい男たちだったが、なにせ青年は今が盛りの男である。本気を出せば逃げおおせることもできなくはないだろう。好機がやってきた。
「お待たせいたしました」
 藤滝がまず彼らに挨拶した。
「本日より、解禁いたします、うちの“花”でございます」
 彼らに礼をつくす藤滝の仕草は流麗で上品そのものだったが、これから行われるであろう行為を想像して、青年は思わず笑ってしまった。
「おい、黙れ」
 使用人が声援の頭を無理矢理地面に押し付ける。
「まあ、いいではないか、なあ」
 客のひとりが、あぶらぎった顔をにやつかせて言った。
「藤滝の旦那さんのなあ、暴れん坊というだけあって、威勢がいいではないか、なあ」
 他の客たちも次々にうなづいた。
「いかがなさいますか? このまま暴れて手が出せないようにいたしましょうか」
「いや、いい。アレを仕込んであるのだろう? 拘束も何もいらない」
「……では、仰せのままに」
 藤滝が、そっと、青年に近づいた。
 耳元に唇を寄せると、彼に吹き込んだ。
「可愛がってもらえ」
 青年はカッとなって、男を殴り飛ばそうとしたが、使用人に引き止められて、動きを封じられた。
「殺す……!! 絶対に、てめえを殺す!!」
 藤滝は愉快そうに笑みを浮かべた。
「できるのなら、な? 楽しみにしているぞ」
 そして、つーっと、地面に伏せられた青年の背筋をなぞった。
「剥いたまま置いておけ」
 低い声で使用人に命令すると、男は彼らに再び礼をとって、使用人と共に出ていった。
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