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✿7.2:金魚草
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「リュウちゃん、今、いい?」
昼休み。一人でゆっくりしようと穴場を探しているリュウを捕まえたのは、明るい茶色の短髪の学生だった。彼につかまると一時間でも二時間でもぶっ通しで話を聞かされる。そのくらいおしゃべりな彼が、リュウは苦手だった。
「おい、おれは」
「わー、それ、リュウちゃんのお弁当⁉ すっげえ、今日も作ってきたんだ!!」
口を開いたとしても、リュウの言葉は届かない。手に持っていた包みを見て感嘆の声を吐きだせば、リュウの小さな声など簡単にかき消されてしまう。
「すっげぇ、えらいなぁ。こんな毎日、自分で作ってくるなんて。並の人間じゃないよ。リュウちゃんは」
彼の動作がリュウには芝居がかってみえてしまうのは、単純にベタ褒めしてくる態度からだと思う。
どうでもいいことに、「すごい」「えらい」と言葉を並べ立てまくって、「すごい」と「えらい」の言葉の価値を落としていることだ。だが、それ以上に苦手なのは――。
「やっぱり、おれ、リュウちゃんに惚れちゃうなぁ。好きだよ」
簡単に好意を口にしてくるところだと思う。
「あっそ」
まっすぐに瞳を見つめてくる彼に耐え切れずに、リュウは視線を逸らした。付き合っていられない。だが、一度でもつかまると逃れることの出来ない男。とてつもなく苦手だ。
「それじゃ、一緒に飯、食っていい?」
「はあ⁉」
「購買でパン買ってきた。コレ、俺の昼食だから」
そう言ってビニール袋をリュウの目の前にかざす。
「一緒にって……」
お前と一緒じゃ飯がまずくなる。そう言おうと思ったのに話は勝手に転がっていく。
「さっき見て来たんだけど、屋上、空いてたよ。さ、行こっ」
彼はリュウの手首を掴んだ。抵抗しようと思っていたリュウだったが、振りほどこうとする反応がぬるいをいいことに、彼はぐいぐいと引っ張っていく。
「ちょっと、やめてくれ」
「あ、そうだ。リュウちゃん、午後の数学の宿題、やってきた? おれさ~、数字を見るだけで吐き気がしてきちゃうんだよねぇ。リュウちゃんは真面目で数学もできてすげぇなあと思うよ」
「分かった、数学の宿題なら見せてやるから、この手を離せ!」
「え、ほんと! あ、だけどいいよ。見せてもらってもどうやって解いたか分からないから」
「分からないなら、教える! 解き方を!」
「本当⁉ 嬉しいなぁ。リュウちゃんとマンツーマンって。早く屋上行こっ」
完全に彼のペースだ。
彼は、彼と話していると気が狂いそうになるリュウを徹底的に痛めつける言葉を吐いた。
「おれ、優しいリュウちゃんが、大好きだからなっ」
(了)
✿7月2日の誕生花
金魚草Snapdragon
「おしゃべり」「でしゃばり」「おせっかい」。とにかくなんだか騒がしそうなイメージで書いたらこんな感じの派手目でお茶らけた子に。リュウの由来は英語のスナップドラゴンから。彼は絶対に黒髪で眼鏡です。
昼休み。一人でゆっくりしようと穴場を探しているリュウを捕まえたのは、明るい茶色の短髪の学生だった。彼につかまると一時間でも二時間でもぶっ通しで話を聞かされる。そのくらいおしゃべりな彼が、リュウは苦手だった。
「おい、おれは」
「わー、それ、リュウちゃんのお弁当⁉ すっげえ、今日も作ってきたんだ!!」
口を開いたとしても、リュウの言葉は届かない。手に持っていた包みを見て感嘆の声を吐きだせば、リュウの小さな声など簡単にかき消されてしまう。
「すっげぇ、えらいなぁ。こんな毎日、自分で作ってくるなんて。並の人間じゃないよ。リュウちゃんは」
彼の動作がリュウには芝居がかってみえてしまうのは、単純にベタ褒めしてくる態度からだと思う。
どうでもいいことに、「すごい」「えらい」と言葉を並べ立てまくって、「すごい」と「えらい」の言葉の価値を落としていることだ。だが、それ以上に苦手なのは――。
「やっぱり、おれ、リュウちゃんに惚れちゃうなぁ。好きだよ」
簡単に好意を口にしてくるところだと思う。
「あっそ」
まっすぐに瞳を見つめてくる彼に耐え切れずに、リュウは視線を逸らした。付き合っていられない。だが、一度でもつかまると逃れることの出来ない男。とてつもなく苦手だ。
「それじゃ、一緒に飯、食っていい?」
「はあ⁉」
「購買でパン買ってきた。コレ、俺の昼食だから」
そう言ってビニール袋をリュウの目の前にかざす。
「一緒にって……」
お前と一緒じゃ飯がまずくなる。そう言おうと思ったのに話は勝手に転がっていく。
「さっき見て来たんだけど、屋上、空いてたよ。さ、行こっ」
彼はリュウの手首を掴んだ。抵抗しようと思っていたリュウだったが、振りほどこうとする反応がぬるいをいいことに、彼はぐいぐいと引っ張っていく。
「ちょっと、やめてくれ」
「あ、そうだ。リュウちゃん、午後の数学の宿題、やってきた? おれさ~、数字を見るだけで吐き気がしてきちゃうんだよねぇ。リュウちゃんは真面目で数学もできてすげぇなあと思うよ」
「分かった、数学の宿題なら見せてやるから、この手を離せ!」
「え、ほんと! あ、だけどいいよ。見せてもらってもどうやって解いたか分からないから」
「分からないなら、教える! 解き方を!」
「本当⁉ 嬉しいなぁ。リュウちゃんとマンツーマンって。早く屋上行こっ」
完全に彼のペースだ。
彼は、彼と話していると気が狂いそうになるリュウを徹底的に痛めつける言葉を吐いた。
「おれ、優しいリュウちゃんが、大好きだからなっ」
(了)
✿7月2日の誕生花
金魚草Snapdragon
「おしゃべり」「でしゃばり」「おせっかい」。とにかくなんだか騒がしそうなイメージで書いたらこんな感じの派手目でお茶らけた子に。リュウの由来は英語のスナップドラゴンから。彼は絶対に黒髪で眼鏡です。
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