七月の花とBLの掌編

阿沙🌷

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✿7.10:蛍袋

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ホタル、うざい」
 思わずそう言い放ってしまったケイだが、彼の行動にはそう思わざるをえないだろう。
 なにせ、ホタルはケイにべったりなのだ。教室を移動するときも、学食に行くときも、わざといやがらせにやっているんじゃないかとばかりに、ケイの後をついてくる。
 おかげで、なかなか新しい友達をつくることは出来ない。それはまあ、いいとして、中学を男子校で過ごしたケイのひそかな夢――女子とのふれあいさえ、ホタルがべたべたとケイを束縛するため、叶わないままだ。
「そんな、俺とあんたの仲じゃないかよ」
 唇をとがらせて駄々っ子のようにすねるホタル。
 小学校が一緒だった。ケイの受験を真似するように中学も一緒。高校まで着いてきたとなるとなかなか強情で、しかもケイと同じかそれ以上の学力と実行能力を持っているということになる。
 いつもへらへらした笑みを浮かべて、ケイにへりくだったような態度をとっているが、実際は彼のほうが実力者なのかもしれない。
 そう思うと、余計にホタルを扱い兼ねるケイである。
「仲ってなんだよ。名前が同じ漢字だからっていう縁か?」
「ああ、それで俺たち仲良くなったんだよな。びっくりしたよ。同じ学校の同じクラスに二人も同じ名前のやつがいるなんて」
 ホタルは袋木ふくろぎホタル。ケイは袋木ふくろぎケイ。ふたりとも血縁関係は一切なく、真っ赤な他人同士なのだが、違いは読み方のみの同姓同名をクラスの子供たちが許すはずもなく、何かにつけてホタルとケイはコンビ扱いをされていた。
 それがいやで、私立の男子校に逃げ出そうとしたケイはまたしても中学でホタルと一緒になり、高校も――。
「もういい加減、同じ名前に縛られるのは良くないんじゃないか?」
 ケイはホタルを睨みつけた。
「なんで? 俺が縛られているのは俺自身だけだよ」
「どうだかなぁ。じゃ、なんで俺の後ばかりついて歩くんだよ」
「そこにケイがいるから」
「ほらな。同姓同名のケイがいるから。だからだろ」
「違う。俺が縛られてるのは、ケイが好きな俺なんだよ」
「だからだろ~。もういい加減、俺とは別の人生を歩めってんだ」
「無理だ! ケイと離れたら死んでしまう!」
「勝手に死ね!」
 たっくよぉ。
 大きくため息をつきながら、ケイはホタルの発言を脳内で反芻させた。
 ん。なにと言ったんだけ。
 ケイが好きな俺なんだよ・・・・・・・・・・・
 なにかを見落としているような気がするのは気のせいか。

(了)


✿7月10日:
蛍袋ほたるぶくろbellflower
 花言葉「忠誠」「正義」からして、わんこ攻めだなと確信。幼馴染でわんこなやつが金魚のフンというお話に仕立てようとしたら「忠誠」と「正義」は見事に消え失せ、ただの「金魚のフン」に成り下がってしまいました。
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