悪役メイドだなんて言われましても困ります

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42 狭間の物語 ◇◇◇ エネオット、爆発する。そして…

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 馬車を降りて自室に向かうが、途中で立ち止まって考え込む。
 そして自身を見下ろした。
 土埃はデービーが粗方払ってくれていたが、所々縫い目のほつれが見える。

 エネオットは舌打ちすると、行先を自室から父の執務室に変更する事にした。
 この惨状を見せつけて、まず父親に抗議するのだ。



 足取りも荒く奥へと進み、執務室の扉脇に立つ護衛騎士を無視して、扉を開けようと手を伸ばす。

「殿下、お待ちを」
「お前の指図は受けん」
「入室許可が出るまでお待ちください」
「煩い!
 俺は王子だぞ!!」
「ですが…」

 扉前で押し問答になっていると、流石に聞きつけたのか扉が薄く開いて、父親である王の執務補佐官が顔を覗かせた。
 執務補佐官は騎士とエネオットを順番に見て、状況を把握したようだ。

「少しお待ちを」

 そう言うや、薄く開かれた扉は再び閉じられた。

「ま、待て!!」
「殿下!」

 暫く憮然としたまま扉前で待っていると、扉が大きく開かれた。
 開いたのはさっきの執務補佐官で、許可を得てきたらしい。

「どうぞ」

 エネオットは困ったような顔をしている騎士達と、無表情な執務補佐官にふんと鼻を鳴らしてから足を踏み出した。
 室内に入ると、背後で扉が閉められる。
 あの補佐官はてっきりついてくると思っていたのだが、こないのなら好都合だ。
 更に奥へ進んで続きの部屋に入ると、大きな机に座っていた父親が丁度ペンを置いている。

「おお、エネオット、どうしたんだ?
 まだ学院が終わる時間ではないと思うが…」

 暢気な物言いに、エネオットはプチっとキレた。

「はぁぁ!!??
 どうしたもこうしたもないですよッ!!!
 なんだってあんな許可をだしたんですか!!??」
「ほへ?」

 さっぱりわからんとでも言うように、ぽやんとクーノ・ボーカイネンは首を捻っている。

「この姿を見てもわからないんですか!?
 俺は投げ飛ばされたんです!!
 父上達がメイドなんて下賤な輩に、あんな許可を出すからこんな目に遭ったんですよ!!」
「ぅえ、ぁ……ぁぁ、えぇぇ…。
 ほんとに投げられちゃったの……?」
「この悲惨な姿を見て、よくそんな言い方が出来ますね!!」

 エネオットは怒りのまま両手を広げ、ちょっと悲しい見た目になった制服を見せつけた。

「ぉ、ぉぉぅ……」

 たじたじになったクーノに、エネオットは尚も食って掛かる。

「とっととあんな許可は撤回してください!!
 父親の癖に、次期国王たる俺を守ろうとか思わないんですか!!??」

 執務机をダンと叩いて更に怒りをぶつけようとするが、背後からの声に思わず言葉を飲み込んだ。

「……まぁ」

 キッと声の発生源を振り返って睨み付ける。
 しかし相手が悪かった。

「なんて情けない恰好でしょう」

 母親であるヨリアンナ・ボーカイネンが口元を扇で隠しながら、エネオットを半眼で睥睨へいげいした。

「は、母上…」
「どうせ貴方が絡みに行ったのでしょう?
 そう言う事をする可能性があったから許可しただけの事。
 投げられるのが嫌なのであれば、大人しくして居れば良いでしょう」

 呆れたように言われ、エネオットはグッと唇を引き結んだ。
 そんなエネオットにヨリアンナは扇を閉じて突きつけ、更に追い打ちをかける。

「何度言えばわかるの?
 オファーロ公爵令嬢を婚約者として尊重しなさいと、ずっと言い続けてきたわよね?
 幼い頃は出来てたのに、どうしてこんなのになっちゃったのかしら……はぁ…」

 ヨリアンナは蟀谷こめかみをグリグリと揉んだ。

「俺に相応しくないんだから仕方ないでしょう!!??
 もっと俺を立ててくれるような、可愛げのある女の方が好きなんですよ!!」
「エネオット……貴方ねぇ…。
 立てて欲しいのなら、それに見合う行動をなさい!
 第一この婚約は王家の方から頼み込んで成った「え!?」ものな……え?」

 エネオットだけでなく、ヨリアンナもクーノも動きが止まる。

「王家から頼み込んだ…?」

 呆然と呟くエネオットに、ヨリアンナとクーノは驚愕の表情で互いを見合った。





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