94 / 97
番外編
六月の夢 (4/5)
しおりを挟む
そんな叶うはずもない、夢のような夢がこんな風に叶った今。
俺が願う事なんてただひとつ、どうかこの夢が永遠に醒めませんように……ってだけだ。
なのにルスときたら、俺がしたいなら式も挙げようとか、その為なら戦おうとか、言ってくれちゃうんだもんな……。
胸に滾々と溢れる喜びに、俺は我慢できなくなってチラとルスを覗き見た。
瞬間、ルスと目が合ってしまう。
なっ……!?
なんだよ……、ルスはまさか、俺がそっぽ向いてる間もずっと俺の事見てたのか……?
真剣な眼差しのルスは、俺と目が合うと静かに口を開いた。
「しかし、式も披露もしないとなると、お前は公的には『生涯独身』になるのか……」
何やら沈鬱な顔をするルス。
そんなルスの気を逸らしたくて、俺はくだらない事を口にする。
「ん? まーな。つーかルスは俺が浮気なんてすると思うのか?」
俺がいつものように笑ってみせれば、ルスもまた笑ってくれるんじゃないかと思って。
けど、ルスは「浮気か……」と呟いたきり、考え込むように黙ってしまった。
……え……?
な、何だこの空気……。
まさか俺が知らないうちに、ルスは浮気してたとか、そんな事……あるわけねーよな?
だって、ルスだぞ?
誠実と真面目が服着て歩いてるよーな、そんなルスが……?
あるわけねーだろ?
「 ……な、何考えてんだよ……」
恐る恐る尋ねた俺の声は、情けない事にちょっと震えていた。
ルスは俺を見て、ひとつ頷くと「いや、お前が浮気するところを考えてみようとはしたんだが、想像もできなかった」と言った。
「んだよ、脅かすなよ!」
思わず突っ込む俺に、ルスが小さく首を傾げる。
「脅かしたつもりはないが、お前を不安にさせたなら謝ろう」
ルスはそう言いながら俺の手を取ろうとして……俺の両手が荷物で塞がってるのを見て、俺の後ろに垂らした金髪に手を伸ばす。
……ルス。お前、俺がさっき言ったこと、本当に分かってんだろーな?
そのまま俺の髪がルスの口元に引き寄せられるのを見て、俺は慌てて飛び退いた。
「だから、こーゆーの外でやんなって!」
「ああ。そうだったな。お前は顔も名も知られているからな」
「そーゆーお前だってこの辺じゃ十分知られてる方だかんな!?」
そうだろうか。と首を傾げるルスに、俺はため息を吐いた。
「ルスはさぁ……、どっからどこまでが天然で、どっからどこまでが計算なのか、イマイチ分かんねーんだよなぁ……」
親友だった頃は、ルスって天然だよなー、なんて微笑ましく思ってたんだけどさ。
こういう関係になってからは、なんか、時々意地悪な……ってのとはちょっと違うな。なんだろ。俺が困ってんの見て楽しそうにしてるとこあるよな。
別に、前からお互いからかったり揚げ足取ったりとか、そういうやり取りはあったけどさ。
そーゆーんじゃなくて、なんつーのかな……。俺をコントロールしたい、みたいな? 独り占めしたいみたいなとこが見え隠れするよな。
あー、……あれだ。支配欲とか独占欲ってやつか。
そりゃ友達だった頃は感じなくて当然だよな。
こーゆーのは好きな相手にしか向けねーもんな………………って、そっか……。
……気付いてしまってから、ルスが俺にそういう感情を持ってるって事実に、じわじわと身体が熱くなる。
「……もし、俺の言動が全て意図的だったとしたら、お前は俺に失望するか?」
いつもと同じ、落ち着いたルスの声。
顔を見れば、ルスは微笑んでいた。
けど、小さな黒い瞳は俺に縋るような色をしている。
「そっ、そんなの、するわけねーだろ!?」
慌てて答えた俺の言葉に、ルスの瞳が緩む。
ルスは、壮年の男らしい色気をたっぷり纏って、満足そうに口角を持ち上げた。
「そうか。ならいい」
「なっ……、なんなんだよっ、どっちなんだよ! ハッキリしろよ!!」
俺が願う事なんてただひとつ、どうかこの夢が永遠に醒めませんように……ってだけだ。
なのにルスときたら、俺がしたいなら式も挙げようとか、その為なら戦おうとか、言ってくれちゃうんだもんな……。
胸に滾々と溢れる喜びに、俺は我慢できなくなってチラとルスを覗き見た。
瞬間、ルスと目が合ってしまう。
なっ……!?
なんだよ……、ルスはまさか、俺がそっぽ向いてる間もずっと俺の事見てたのか……?
真剣な眼差しのルスは、俺と目が合うと静かに口を開いた。
「しかし、式も披露もしないとなると、お前は公的には『生涯独身』になるのか……」
何やら沈鬱な顔をするルス。
そんなルスの気を逸らしたくて、俺はくだらない事を口にする。
「ん? まーな。つーかルスは俺が浮気なんてすると思うのか?」
俺がいつものように笑ってみせれば、ルスもまた笑ってくれるんじゃないかと思って。
けど、ルスは「浮気か……」と呟いたきり、考え込むように黙ってしまった。
……え……?
な、何だこの空気……。
まさか俺が知らないうちに、ルスは浮気してたとか、そんな事……あるわけねーよな?
だって、ルスだぞ?
誠実と真面目が服着て歩いてるよーな、そんなルスが……?
あるわけねーだろ?
「 ……な、何考えてんだよ……」
恐る恐る尋ねた俺の声は、情けない事にちょっと震えていた。
ルスは俺を見て、ひとつ頷くと「いや、お前が浮気するところを考えてみようとはしたんだが、想像もできなかった」と言った。
「んだよ、脅かすなよ!」
思わず突っ込む俺に、ルスが小さく首を傾げる。
「脅かしたつもりはないが、お前を不安にさせたなら謝ろう」
ルスはそう言いながら俺の手を取ろうとして……俺の両手が荷物で塞がってるのを見て、俺の後ろに垂らした金髪に手を伸ばす。
……ルス。お前、俺がさっき言ったこと、本当に分かってんだろーな?
そのまま俺の髪がルスの口元に引き寄せられるのを見て、俺は慌てて飛び退いた。
「だから、こーゆーの外でやんなって!」
「ああ。そうだったな。お前は顔も名も知られているからな」
「そーゆーお前だってこの辺じゃ十分知られてる方だかんな!?」
そうだろうか。と首を傾げるルスに、俺はため息を吐いた。
「ルスはさぁ……、どっからどこまでが天然で、どっからどこまでが計算なのか、イマイチ分かんねーんだよなぁ……」
親友だった頃は、ルスって天然だよなー、なんて微笑ましく思ってたんだけどさ。
こういう関係になってからは、なんか、時々意地悪な……ってのとはちょっと違うな。なんだろ。俺が困ってんの見て楽しそうにしてるとこあるよな。
別に、前からお互いからかったり揚げ足取ったりとか、そういうやり取りはあったけどさ。
そーゆーんじゃなくて、なんつーのかな……。俺をコントロールしたい、みたいな? 独り占めしたいみたいなとこが見え隠れするよな。
あー、……あれだ。支配欲とか独占欲ってやつか。
そりゃ友達だった頃は感じなくて当然だよな。
こーゆーのは好きな相手にしか向けねーもんな………………って、そっか……。
……気付いてしまってから、ルスが俺にそういう感情を持ってるって事実に、じわじわと身体が熱くなる。
「……もし、俺の言動が全て意図的だったとしたら、お前は俺に失望するか?」
いつもと同じ、落ち着いたルスの声。
顔を見れば、ルスは微笑んでいた。
けど、小さな黒い瞳は俺に縋るような色をしている。
「そっ、そんなの、するわけねーだろ!?」
慌てて答えた俺の言葉に、ルスの瞳が緩む。
ルスは、壮年の男らしい色気をたっぷり纏って、満足そうに口角を持ち上げた。
「そうか。ならいい」
「なっ……、なんなんだよっ、どっちなんだよ! ハッキリしろよ!!」
10
あなたにおすすめの小説
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み/現在毎日更新予定
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
没落令息はクラスメイトの執着に救われる
夕月ねむ
BL
突然父親の爵位がはく奪され、帰る屋敷も家名も失ったローレンス。貴族が集まる学院の寮からも放り出されるところだった彼を、クラスメイトのユリシーズが引き留める。
「侯爵家の私であれば、従者をひとり授業に同席させることができる」と言って。
ユリシーズの従者となったローレンス。けれどその二年後、彼らの関係は再び大きく変わることとなった。
※FANBOXからの転載です。
※他サイトにも投稿しています。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
【完結】言えない言葉
未希かずは(Miki)
BL
双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。
同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。
ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。
兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。
すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。
第1回青春BLカップ参加作品です。
1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。
2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21)
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる