95 / 97
番外編
六月の夢 (5/5)
しおりを挟む
ハハハ、と爽やかに笑うルスは俺の質問に答える気がまるでなさそうだ。
……まあいいか。
ルスが元気出たなら、それで。
ふと、俺は気付いて口を開いた。
「そういやさ、ルスは何かねーの? 俺に望むもんとか欲しいもんとかさ」
俺の言葉に、ルスが片手を顎に当てる。
「そうだな……」
このいかにも考えてますみたいな仕草、可愛いよな。
しかもこんな風にちょっと俯いて目を伏せたりすると、途端に大人の色気みたいなのが漂ってさ。
「お前と一緒に寝られる大きなベッドが欲しいと思ってはいるが……」
「あー……それは流石に、運び込むの見られたら終わりだな」
下手すりゃ店で頼んだ時点で噂になってダメかも知んねーな。
「だろうな」
「でもま、二台のベッドを繋げるとかはアリじゃねーの?」
「なるほど」
考えつかなかった。という風に目を丸くするルスも可愛い。
「でもルス寝返りとか大変だろ? 一人の方が寝やすいんじゃねーかなって、思ってたんだけどさ。……お、俺と一緒に……寝たかったのかよ……」
言葉の終わりは、外で話す事じゃねーなと気付いて小声になってしまったが、ルスはすぐに答えた。
「お前が嫌でなければな」
「そんなの、良いに決まってんだろ!」
思わず叫ぶと、ルスが小さく笑う。
「そうか、それは良かった」
うっ。ルスの幸せそうな顔っっっ。
ダメだ眩しい。さっきの新郎新婦の比じゃないな。
俺にはやっぱ、ルスだけが特別なんだよなぁ。
「じゃ、じゃあ他には?」
こんな些細な事で喜んでくれるなんて思わなかったしさ、なんか他にもねーかな?
俺だってルスの願いなら何だって叶えたい。
「他に、か……」
ルスの目は、並木の向こうを走る兄弟らしき少年たちを追っていた。
「……そうだな。俺とお前の子がいればと思う事はあるな」
……ああ、そりゃそうだよな。ルス子ども好きだもんな。
「んー……じゃあ、孤児院でも見に行くか?」
ルスは静かに首を振る。
どうやらそういうことではないらしい。
「ルスの子なぁ……。そりゃ、俺が産めるもんなら産んでやりてーけどさ」
俺のぼやきに、ルスが振り返る。
「……ほう?」
「なっ、なんだよその顔は。でも無理だよなーっつって終わる話だろ!?」
「どうだろうな。何事も試してみないと分からないだろう?」
ルスが不敵に笑う。
「い、いやいや、それは分かるっつーか、もう十分試してんだろお前っっ! これ以上何をどーしようってんだよっ!!」
途端、ルスの視線がするりと降りて、荷物を抱えた腕の下、俺の腹の辺りで止まる。
ルスの視線が、服の上から肌に刺さってチリチリする。
「そうだな。……もっとお前の奥深くに、たっぷり、注いでみるとか。な?」
そう囁くルスの指先が、俺の腹をそっと撫でて去る。
「っ……!」
思わず立ち止まる俺に、ルスは振り返って言った。
「そうと決まれば帰るとしようか」
「な、何が決まったんだよっ!」
ずんずんと杖を動かして先を行くルスを慌てて追う。
追いついたルスの横顔がすごく幸せそうで、文句を言おうとした俺の口元まで緩んでしまいそうだ。
あーくそ、そんな嬉しそうな顔して。
お、俺と……そんなに、したいのかよ……。
俺の心臓が、まだ走ってるみたいにドクドクと全身に血を送る。
ルスの指になぞられたところが、じわりと熱を持つ。
いや、待ってくれよ……?
さっきルスこの辺撫でたよな……?
……臍の上なんだが?
「ルス、お前……まさかここまで入れようって意味じゃねーだろーな……?」
アパートの階段の一段目に杖をついたルスが俺を振り返って、視線で肯定する。
それだけで、俺の肌にルスの指の温度が蘇る。
臍の上の、ルスがなぞった痕が熱い。
こ、こんな、とこ……まで……?
ルスの熱がここまで押し込まれる様を想像した途端、腹の奥がきゅうと震えた。
くそっ、なん、で、俺ばっかりこんな……っ。
膝から力が抜けないように精一杯気を張って、俺はルスの後を追うように階段を上る。
俺だって……。
俺だって、ルスに入れてーし、ルスがとろとろになるとこを見てみてーのにさ。
自分の身体ばかりがどんどん感度を上げられて、まるでルスにいいように作り変えられてるみたいで悔しい。
「レイ」
俺を短く呼ぶ声に、どこか甘い響きを感じて顔を上げる。
そこでは、先に鍵をあけたルスが、扉を開いて俺を待っていた。
促されるままに部屋に入れば、扉を閉めたルスが即施錠する音がする。
「おかえり」
ルスが俺の背にくっついて、甘く囁く。
なんだ、随分甘えてんな。
ルスもやっぱりあの結婚式にダメージ受けてたんじゃねーの?
「ただいま」と答えれば、ルスがもう一度「おかえり」と繰り返す。
俺は、短い廊下を抜けて荷物を机に下ろしながら言う。
「一緒に出かけてたんだし、ルスもただいまでいーんじゃねーの?」
「そうか。……ただいま」
ふ。とはにかむようなルスの気配に振り返ると、ルスは小さな目をさらに細めて俺を愛しげに見つめていた。
「っ、…………お、おかえり……」
なんかむしろ、これが夢じゃないって事の方が信じらんねーよな……?
混乱する俺に、ルスが優しく口付ける。
「レイ……、俺のそばにずっと居てくれ」
ルスの祈るような言葉に、俺は力強く応える。
「おうよ! ルスが死ぬまでずっとずーっと離れねーからな!」
俺の勢いに、ルスは少し目を丸くして、それから小さく笑った。
「それは頼もしいな」
もう夢でも現実でもなんでもいい。
どうか……、どうかこの夢が永遠に醒めませんように。
俺はもう一度、強く強く願った。
……まあいいか。
ルスが元気出たなら、それで。
ふと、俺は気付いて口を開いた。
「そういやさ、ルスは何かねーの? 俺に望むもんとか欲しいもんとかさ」
俺の言葉に、ルスが片手を顎に当てる。
「そうだな……」
このいかにも考えてますみたいな仕草、可愛いよな。
しかもこんな風にちょっと俯いて目を伏せたりすると、途端に大人の色気みたいなのが漂ってさ。
「お前と一緒に寝られる大きなベッドが欲しいと思ってはいるが……」
「あー……それは流石に、運び込むの見られたら終わりだな」
下手すりゃ店で頼んだ時点で噂になってダメかも知んねーな。
「だろうな」
「でもま、二台のベッドを繋げるとかはアリじゃねーの?」
「なるほど」
考えつかなかった。という風に目を丸くするルスも可愛い。
「でもルス寝返りとか大変だろ? 一人の方が寝やすいんじゃねーかなって、思ってたんだけどさ。……お、俺と一緒に……寝たかったのかよ……」
言葉の終わりは、外で話す事じゃねーなと気付いて小声になってしまったが、ルスはすぐに答えた。
「お前が嫌でなければな」
「そんなの、良いに決まってんだろ!」
思わず叫ぶと、ルスが小さく笑う。
「そうか、それは良かった」
うっ。ルスの幸せそうな顔っっっ。
ダメだ眩しい。さっきの新郎新婦の比じゃないな。
俺にはやっぱ、ルスだけが特別なんだよなぁ。
「じゃ、じゃあ他には?」
こんな些細な事で喜んでくれるなんて思わなかったしさ、なんか他にもねーかな?
俺だってルスの願いなら何だって叶えたい。
「他に、か……」
ルスの目は、並木の向こうを走る兄弟らしき少年たちを追っていた。
「……そうだな。俺とお前の子がいればと思う事はあるな」
……ああ、そりゃそうだよな。ルス子ども好きだもんな。
「んー……じゃあ、孤児院でも見に行くか?」
ルスは静かに首を振る。
どうやらそういうことではないらしい。
「ルスの子なぁ……。そりゃ、俺が産めるもんなら産んでやりてーけどさ」
俺のぼやきに、ルスが振り返る。
「……ほう?」
「なっ、なんだよその顔は。でも無理だよなーっつって終わる話だろ!?」
「どうだろうな。何事も試してみないと分からないだろう?」
ルスが不敵に笑う。
「い、いやいや、それは分かるっつーか、もう十分試してんだろお前っっ! これ以上何をどーしようってんだよっ!!」
途端、ルスの視線がするりと降りて、荷物を抱えた腕の下、俺の腹の辺りで止まる。
ルスの視線が、服の上から肌に刺さってチリチリする。
「そうだな。……もっとお前の奥深くに、たっぷり、注いでみるとか。な?」
そう囁くルスの指先が、俺の腹をそっと撫でて去る。
「っ……!」
思わず立ち止まる俺に、ルスは振り返って言った。
「そうと決まれば帰るとしようか」
「な、何が決まったんだよっ!」
ずんずんと杖を動かして先を行くルスを慌てて追う。
追いついたルスの横顔がすごく幸せそうで、文句を言おうとした俺の口元まで緩んでしまいそうだ。
あーくそ、そんな嬉しそうな顔して。
お、俺と……そんなに、したいのかよ……。
俺の心臓が、まだ走ってるみたいにドクドクと全身に血を送る。
ルスの指になぞられたところが、じわりと熱を持つ。
いや、待ってくれよ……?
さっきルスこの辺撫でたよな……?
……臍の上なんだが?
「ルス、お前……まさかここまで入れようって意味じゃねーだろーな……?」
アパートの階段の一段目に杖をついたルスが俺を振り返って、視線で肯定する。
それだけで、俺の肌にルスの指の温度が蘇る。
臍の上の、ルスがなぞった痕が熱い。
こ、こんな、とこ……まで……?
ルスの熱がここまで押し込まれる様を想像した途端、腹の奥がきゅうと震えた。
くそっ、なん、で、俺ばっかりこんな……っ。
膝から力が抜けないように精一杯気を張って、俺はルスの後を追うように階段を上る。
俺だって……。
俺だって、ルスに入れてーし、ルスがとろとろになるとこを見てみてーのにさ。
自分の身体ばかりがどんどん感度を上げられて、まるでルスにいいように作り変えられてるみたいで悔しい。
「レイ」
俺を短く呼ぶ声に、どこか甘い響きを感じて顔を上げる。
そこでは、先に鍵をあけたルスが、扉を開いて俺を待っていた。
促されるままに部屋に入れば、扉を閉めたルスが即施錠する音がする。
「おかえり」
ルスが俺の背にくっついて、甘く囁く。
なんだ、随分甘えてんな。
ルスもやっぱりあの結婚式にダメージ受けてたんじゃねーの?
「ただいま」と答えれば、ルスがもう一度「おかえり」と繰り返す。
俺は、短い廊下を抜けて荷物を机に下ろしながら言う。
「一緒に出かけてたんだし、ルスもただいまでいーんじゃねーの?」
「そうか。……ただいま」
ふ。とはにかむようなルスの気配に振り返ると、ルスは小さな目をさらに細めて俺を愛しげに見つめていた。
「っ、…………お、おかえり……」
なんかむしろ、これが夢じゃないって事の方が信じらんねーよな……?
混乱する俺に、ルスが優しく口付ける。
「レイ……、俺のそばにずっと居てくれ」
ルスの祈るような言葉に、俺は力強く応える。
「おうよ! ルスが死ぬまでずっとずーっと離れねーからな!」
俺の勢いに、ルスは少し目を丸くして、それから小さく笑った。
「それは頼もしいな」
もう夢でも現実でもなんでもいい。
どうか……、どうかこの夢が永遠に醒めませんように。
俺はもう一度、強く強く願った。
10
あなたにおすすめの小説
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み/現在毎日更新予定
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
没落令息はクラスメイトの執着に救われる
夕月ねむ
BL
突然父親の爵位がはく奪され、帰る屋敷も家名も失ったローレンス。貴族が集まる学院の寮からも放り出されるところだった彼を、クラスメイトのユリシーズが引き留める。
「侯爵家の私であれば、従者をひとり授業に同席させることができる」と言って。
ユリシーズの従者となったローレンス。けれどその二年後、彼らの関係は再び大きく変わることとなった。
※FANBOXからの転載です。
※他サイトにも投稿しています。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
【完結】言えない言葉
未希かずは(Miki)
BL
双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。
同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。
ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。
兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。
すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。
第1回青春BLカップ参加作品です。
1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。
2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21)
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる