💘Purple Violet⚜️💐 堅物実直なノンケ親友への想いを、27年越しに伝えてテンパるゆるふわ一途イケメンのお話

良音 夜代琴

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番外編

六月の夢 (5/5)

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ハハハ、と爽やかに笑うルスは俺の質問に答える気がまるでなさそうだ。

……まあいいか。
ルスが元気出たなら、それで。

ふと、俺は気付いて口を開いた。
「そういやさ、ルスは何かねーの? 俺に望むもんとか欲しいもんとかさ」
俺の言葉に、ルスが片手を顎に当てる。
「そうだな……」

このいかにも考えてますみたいな仕草、可愛いよな。
しかもこんな風にちょっと俯いて目を伏せたりすると、途端に大人の色気みたいなのが漂ってさ。
「お前と一緒に寝られる大きなベッドが欲しいと思ってはいるが……」
「あー……それは流石に、運び込むの見られたら終わりだな」
下手すりゃ店で頼んだ時点で噂になってダメかも知んねーな。
「だろうな」
「でもま、二台のベッドを繋げるとかはアリじゃねーの?」
「なるほど」
考えつかなかった。という風に目を丸くするルスも可愛い。
「でもルス寝返りとか大変だろ? 一人の方が寝やすいんじゃねーかなって、思ってたんだけどさ。……お、俺と一緒に……寝たかったのかよ……」
言葉の終わりは、外で話す事じゃねーなと気付いて小声になってしまったが、ルスはすぐに答えた。
「お前が嫌でなければな」
「そんなの、良いに決まってんだろ!」
思わず叫ぶと、ルスが小さく笑う。

「そうか、それは良かった」

うっ。ルスの幸せそうな顔っっっ。
ダメだ眩しい。さっきの新郎新婦の比じゃないな。
俺にはやっぱ、ルスだけが特別なんだよなぁ。

「じゃ、じゃあ他には?」
こんな些細な事で喜んでくれるなんて思わなかったしさ、なんか他にもねーかな?
俺だってルスの願いなら何だって叶えたい。

「他に、か……」
ルスの目は、並木の向こうを走る兄弟らしき少年たちを追っていた。
「……そうだな。俺とお前の子がいればと思う事はあるな」

……ああ、そりゃそうだよな。ルス子ども好きだもんな。
「んー……じゃあ、孤児院でも見に行くか?」
ルスは静かに首を振る。
どうやらそういうことではないらしい。
「ルスの子なぁ……。そりゃ、俺が産めるもんなら産んでやりてーけどさ」
俺のぼやきに、ルスが振り返る。

「……ほう?」
「なっ、なんだよその顔は。でも無理だよなーっつって終わる話だろ!?」
「どうだろうな。何事も試してみないと分からないだろう?」
ルスが不敵に笑う。
「い、いやいや、それは分かるっつーか、もう十分試してんだろお前っっ! これ以上何をどーしようってんだよっ!!」
途端、ルスの視線がするりと降りて、荷物を抱えた腕の下、俺の腹の辺りで止まる。
ルスの視線が、服の上から肌に刺さってチリチリする。

「そうだな。……もっとお前の奥深くに、たっぷり、注いでみるとか。な?」
そう囁くルスの指先が、俺の腹をそっと撫でて去る。
「っ……!」
思わず立ち止まる俺に、ルスは振り返って言った。
「そうと決まれば帰るとしようか」
「な、何が決まったんだよっ!」
ずんずんと杖を動かして先を行くルスを慌てて追う。
追いついたルスの横顔がすごく幸せそうで、文句を言おうとした俺の口元まで緩んでしまいそうだ。

あーくそ、そんな嬉しそうな顔して。

お、俺と……そんなに、したいのかよ……。

俺の心臓が、まだ走ってるみたいにドクドクと全身に血を送る。
ルスの指になぞられたところが、じわりと熱を持つ。

いや、待ってくれよ……?
さっきルスこの辺撫でたよな……?

……臍の上なんだが?

「ルス、お前……まさかここまで入れようって意味じゃねーだろーな……?」

アパートの階段の一段目に杖をついたルスが俺を振り返って、視線で肯定する。
それだけで、俺の肌にルスの指の温度が蘇る。
臍の上の、ルスがなぞった痕が熱い。

こ、こんな、とこ……まで……?

ルスの熱がここまで押し込まれる様を想像した途端、腹の奥がきゅうと震えた。

くそっ、なん、で、俺ばっかりこんな……っ。

膝から力が抜けないように精一杯気を張って、俺はルスの後を追うように階段を上る。

俺だって……。
俺だって、ルスに入れてーし、ルスがとろとろになるとこを見てみてーのにさ。

自分の身体ばかりがどんどん感度を上げられて、まるでルスにいいように作り変えられてるみたいで悔しい。

「レイ」
俺を短く呼ぶ声に、どこか甘い響きを感じて顔を上げる。
そこでは、先に鍵をあけたルスが、扉を開いて俺を待っていた。
促されるままに部屋に入れば、扉を閉めたルスが即施錠する音がする。

「おかえり」
ルスが俺の背にくっついて、甘く囁く。
なんだ、随分甘えてんな。
ルスもやっぱりあの結婚式にダメージ受けてたんじゃねーの?

「ただいま」と答えれば、ルスがもう一度「おかえり」と繰り返す。
俺は、短い廊下を抜けて荷物を机に下ろしながら言う。
「一緒に出かけてたんだし、ルスもただいまでいーんじゃねーの?」
「そうか。……ただいま」
ふ。とはにかむようなルスの気配に振り返ると、ルスは小さな目をさらに細めて俺を愛しげに見つめていた。
「っ、…………お、おかえり……」

なんかむしろ、これが夢じゃないって事の方が信じらんねーよな……?

混乱する俺に、ルスが優しく口付ける。
「レイ……、俺のそばにずっと居てくれ」
ルスの祈るような言葉に、俺は力強く応える。
「おうよ! ルスが死ぬまでずっとずーっと離れねーからな!」
俺の勢いに、ルスは少し目を丸くして、それから小さく笑った。
「それは頼もしいな」

もう夢でも現実でもなんでもいい。
どうか……、どうかこの夢が永遠に醒めませんように。

俺はもう一度、強く強く願った。
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