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再来

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日の暮れる頃、先輩は言葉通りに、また俺の部屋を訪れた。

……どうしてあんなことを言ってしまったのか。
それは、自分にも分からなかった。
ただ、長い夜を一人で過ごすのが怖くて……、誰かと一緒に居たかったのかも知れない。

先輩は「よぉ、いい子で待ってたか?」なんて軽い調子で声をかけながら、俺の服をスルスルと脱がすと、持参した封印帯で手早く俺の腹の口を封じた。
「悪く思うなよ。お前、感じるとこっちの口まで緩んじまうみたいだかんな」
コクコクと頷けば、先輩はニッと笑って俺の頭をポンと撫でた。
悪く思う事なんて無い。むしろ、先輩を傷付けずに済むなら、その方がずっと良かった。
よく見れば、先輩の触手のうち二本は所々色が白っぽく変色している。
動きも悪いように思う。
あの回復の早い先輩の、一番回復しやすいはずの触手が……。

先輩は何も言わないけど、あれは多分、俺の腹の口から漏れた液で寿命を削がれたんだ。
……もしかしたら、あれは、もう治らないかも知れない……。

「なんだ、気付いたのか。目敏いやつだな」
先輩がため息混じりに俺の目の前で斑模様の二本の触手を揺らす。
「大した怪我じゃねーよ。もーちょい時間をかけりゃ、綺麗に治る」

その言葉にホッとする。
「すみません……」
俯きかけた俺の頬を、先輩の手が撫でる。
俺よりひんやりした、大きな手。それが心地よくて、目を細める。
「これで今夜は六本全部で……いや、手も入れれば八本だな」
ぶつぶつとつぶやく先輩が俺の耳元に唇を寄せる。
「昨日より、もっと良くしてやるからな」
耳元で囁かれた言葉が、先輩の声が、ゾクリとした感触で俺の背を駆け上る。
「……ぁ……」
思わず漏れた俺の声に、先輩は目を細めた。
するりと先輩の触手が、俺の足の間に侵入する。
触れられる、と身構えた時には、両脇から俺の首元と胸元に別の触手が絡んでいた。
首筋をなぞった触手は、そのままのぼって俺の口内へと入り込む。
「ぅ……ん……っ」
胸元を這う触手は俺の胸を優しく撫でて、小さな尖りが現れるのを促しているようだ。
「んん……っ、くぅ……ん……っ」
俺の穴に触れた触手は、すぐに入ろうとはせず入口を擦るようにして這い回っている。
その間に、じわりと立ち上がりかけた俺の物へと別の触手が絡み付いた。

それぞれは決して強い刺激じゃないのに、五箇所にそれぞれ違う刺激を与えられて、身体はみるみる熱を帯びてくる。
ずぶ。と俺の中へ侵入される感覚と、すっかり立ち上がり切った俺の物が先輩の触手の中へと入り込む感覚が同時に与えられて、訳が分からなくなる。
まるで、自分で自分を犯しているようで……。
「うんんんっっ! ぅ、ん、ンンッ、!?……っ!?」
口内を侵していた触手が、小さな水音を立てて抜き取られる。
「は、ぁ……、ぁ、っんんっ、ぅあぁああっ」
自由になった口から溢れる俺の声に、先輩の手が俺の口をそっと覆った。
「突っ込んでると苦しそうなんだよな……」
困ったように呟かれて、やっと気付く。
自分の声が、隣に聞こえているかも知れないという事に。

俺は、慌てて自分の手で口を塞ぐ。
「そうだな、そうしてくれてりゃ助かる」
先輩が口端を上げてニヤリと笑う。
自分の両手は、いつの間にか先輩の太い腕を握り締めていたらしく、見れば先輩の腕にうっすらと痕が残っていた。
「あ……、ごめ、なさ……先輩……」
「気にすんな」
先輩は小さな翠の瞳を細めて、俺の頭をよしよしと撫でた。
ああ……優しいな……。
先輩は、本当に、優しい人だ……。
擦り切れた心に、先輩の優しさが痛いほど沁み込む。
優しくしてもらえる事が、ただ嬉しくて、俺は小さく笑った。
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