教え上手な龍のおかげでとんでもないことになりました

明日真 亮

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第5章 ネイスエル女王国編

78 ガレオス伯爵の苦悩

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 目の前には血管をピクピクさせて怒っているガレオス伯爵が腕組みしてこちらを睨んでいる。
 ウェスタール王国でも突然火龍様と知り合いと言われても信じる人はいないだろうな。さて、どうしたものか……。

『水龍のアクアボロスと知り合いなのは本当だぞ。疑うのであれば本人に伝えてみるとよい。クロノルシアが会いに来ていると』
「そんな話が信じられる訳が無いだろう! 我が国で神と崇めるアクア様と知り合いだなんてあり得ない!」
『あり得るかあり得ないかはお主では分からんだろうから、本人に聞いてみよと言っておるのだが。むしろ神と崇める水龍の知り合いを勝手に知り合いじゃないと決めつけて追い返す方が問題になるのではないか?』
「……いや、普通に考えたらあり得ない……。しかし、本当だった場合は……」

 ガレオス伯爵がすごく悩んでるぞ。本当に知り合いだったら、水龍様の知り合いを追い返したことになるもんね。確かにそれは大問題だろう。今回は本当に知り合いのパターンなんだけどね。

「分からん! 私には判断できん! とても信じられる話ではないが、あなたが只者では無いことは分かる。しかし、アクア様と知り合いかどうかは判断できん。しばし待ってくれ。相談してくる」

 そう言うと、すごい勢いで部屋から飛び出して行った。

「伯爵の手におえる話では無かったですね。女王様のところで血相を変えて相談をされている姿が目に浮かびます」

 ガレオス伯爵が飛び出して行ったから、この場には僕とルシアと受付をしてくれた女性が残っている。

「あっ! 申し遅れました。私はローネ湖の受付をしているニーアと言います。まさかアクア様の知り合いということで湖に潜りたいと言われるとは想像もしてませんでした。女王様も難しい方ですから、どのような話になるんでしょうね」

 ニーアさんっていうのか。開けっぴろげに話ができる人みたいだな。

「女王様ってどういう方なんですか?」
「これぞ女王様という感じの方です」

 なるほど。分かるようで分からないけど、イメージはできるな。

 ニーアさんが入れなおしてくれたお茶を飲みながら待つこと約15分。勢いよくドアが開けられた。汗をかきながら部屋に入ってきたのはガレオス伯爵だ。

「ルシア殿、レン殿。至急一緒に女王様のところに来てもらいたい」

 女王様に会えるのか! いや、伯爵の焦った表情からすると、いい話ではないような気がするな。

『分かった。すぐに行くとしよう』

 僕とルシアと伯爵の3人は小走りで女王様のところに向かった。部屋から手を振るニーアさんは何だか楽しそうな表情をしている。面白いイベントにでも見えてるのかもね。

 到着したのはとても大きくて豪華な扉の前だ。

「警備隊長ザック=ガレオス、来客2名と参りました」

 伯爵が扉の前で声を上げると、ゆっくりと扉が開いていく。
 そこはものすごく広い部屋で、奥の方には少し高くなっているところがあり、とても美しい女性が椅子に座っている。そして周りには警護をするためと思われる甲冑を来た男性が4名立っている。
 入室した伯爵の後ろをついて歩いていく。女王様が座っている手前で伯爵が止まり姿勢を正す。

「女王様、こちらの2人が先ほどお話ししたルシア殿とレン殿です」

 少し高いところに座っている女王様。人魚ってどういう姿なのかと思ってたけど、ほぼ人族と変わらない見た目に見える。長いブロンドの髪が巻き上げられて、顔がクッキリと見えるけど、とんでもない美人だな。スタイルもモデルみたいだし、実際の年齢は知らないけど30歳ぐらいに見える。

「妾がネイスエルの女王エレノアじゃ。ガレオスに聞いたが、湖に潜りたいという話は本当かえ?」

 透明感のある声という表現が正しいか分からないけど、ものすごく聞きやすく、心に響く声だな。

『我はルシアと言う。水龍のアクアボロスとは古くからの付き合いだ。久しぶりに会いに来たのだが、そのために湖に潜りたいというのがお願いだ。許可がいると聞いたからもらいにきたのだ』

 ルシアも堂々としてるな~。いや、当たり前か。火龍様たちが尊敬する龍族だもんな。でも、女王様の表情は不機嫌そうだ。周りの警護の人たちはこっちを睨んでるし。

「貴様! 女王様に対して何たる口の聞き方をしている! それに水龍様を呼び捨てにするとは非礼にもほどがあるぞ!」

 警護のリーダーみたいな人が怒鳴りつけてきた。

『ふむ。言いたいことは分からんでもないが、我は女王に仕えているわけではないし、アクアボロスと我の関係はお主には分からんはずだがな?』
「貴様ッ!」

 ルシアは至って冷静だけど、相手は激高モード全開だね。
 僕から失礼を詫びた方がいいのか? いや、ルシアの立場からは失礼ではないもんな……。

 そんなことを考えていたら、女王様が椅子から立ち上がり僕たちに近づいてきた。

「アクア様の知り合いじゃと言うのは本当の話かえ? 妾には信じられぬ」
『話だけでは真偽の区別が付かぬだろうから、そこの伯爵に本人に聞いてみよと伝えたのだ』
「ふ~ん、そうかえ」

 なんだ? 何か女王様から漂ってくる感じがする? 魔力? 不思議な感覚だ。

「ルシア、何かが……」
『分かっておる』

 僕たちの目の前に立つエレノア女王から漂ってくる不思議な感覚に包まれて、僕はその場で立ち尽くしていた。
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