教え上手な龍のおかげでとんでもないことになりました

明日真 亮

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第6章 怨恨渦巻く陰謀編

100 空を飛ぶ

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『どうだ! 我が情報を集めた店は美味かったであろう!』

 自慢げに語ってくるルシア。僕が修行をしている間、たっぷりと美味しい店の情報収集をしたそうで、その中で最善のお店と判断したらしいお寿司屋さんで昼食を食べた。

「そんなに自慢げに言わなくても、本当に美味しかったよ。ウニのお寿司って初めて食べたけど、あんなに濃厚な味わいで、潮の香りが心地よくて美味しいものなんだね!」
『そうであろう! 食材も新鮮だったが、職人がいい仕事をしていた! あの店はまた来ねばならんな』

 ルシアも昼食は大満足だったみたいですごくご機嫌だ。昼食のあとはどうするのかなと思ってたんだけど、ルシアが行きたいところがあるそうだ。



「ルシアに転移で連れて来られたここはどこなの? 周りは海だし、ここって島だよね? 結局、ネイスエルの島で郷土料理を食べたくなったの?」
『違うわ! 郷土料理はまた今度と言ったではないか。まあ、確かにここはネイスエルを取り囲む島の一つだがな。グルメで来たのではないぞ。お主の修行のために来たのだ』
「修行? 改まって言うってことは何か今までと違うことをやるの?」
『その通りだ。今から浮遊の魔法を使ってもらう』
「浮遊? いつも使ってるけど?」
『あほう。それは海の中であろう。今から使うのは陸上で使う浮遊。空を飛んでもらう』
「空を飛ぶ!! そうだった。浮遊の魔法を使えば空が飛べるんだったね!!」
『いきなりテンションが上がったな。まあ、そういうことだ。お主が水の中で使っている浮遊については全く問題がないレベルに達しておる。そのイメージで陸上で使ってみよ。ここから海の方向に浮遊するのだぞ。そうすれば失敗しても海に落ちるだけで済む』
「なるほど。だから島に転移して来たんだね」

 確かに浮遊に失敗しても海に落ちるだけと思えばあんまり怖くないな。

「それじゃ、早速使ってみるよ」

 僕は海の方に向かって空中に浮かぶイメージを作る。重力を遮断して海上に向かって斜めに浮かぶ感覚だ。

「おっ! 浮かび始めたよ! すごい……飛んでるよ!」

 身体がスーッと空中に浮かび始めた。何これ! すごいんだけど!

『それは飛んでるとは言わん。まだ浮かんでいるだけだ。とりあえず海の上まで行って同じ場所で浮かび続けてみよ』

 ルシアの指示通りに海の上まで来て、同じ場所に浮かんでみた。

『そうだ。それができれば魔力が続く限り、地上に落ちることはない。万が一、地上に落ちる場合は全身の障壁魔法を強化して衝撃に耐える必要がある。だが魔力切れで落ちてしまった場合は、魔力を集めることも出来ないがな』
「それなら絶対に落ちないように魔力量の管理が必須だね。水中で使う浮遊よりは魔力が多く必要だけど、多分、この感じなら1時間ぐらいは浮かべる気がするけど」
『ふむ。お主の言う通り陸上で注意することは魔力量の管理だ。あとは上空に行けば気圧や温度が低くなる。通常ならこの変化も遮断する必要があるのだが、幸いにしてお主は風の加護をもらっておる。そのため気圧変化の影響を受けないし、高度による温度変化も気にしなくて良い。水の加護が水圧や水温の影響を調整してくれるのと同じだ』
「風の加護にはそんな効果もあったの?」
『そうだ。まあ、お主が空を飛ぶことを想定していなかったゆえ、ヴァンたちの説明が抜けておったか、龍族にとっては当たり前のことなので意識してなかったのかも知れんな』
「そうだったんだ。ヴァン様にはあらためて感謝しないといけないね」
『ただし、注意することはあるぞ。猛スピードで飛べば色んなものにぶつかる。主なものは鳥や虫などだな。お主は障壁魔法を張っておるから心配ないが、そういったものがぶつかることは知っておけ。あとは飛ぶことに慣れることだな』



 それから1時間ほど浮遊の練習を続けた。浮かんでるだけじゃなくて、思った方向に飛ぶことも練習してみたけど、めちゃくちゃ気持ちいい! いや~、空を飛べるって最高だね! それに上下左右どこにでも飛べるから、空中で戦っても支障がないと思う。

「そろそろ魔力が少なくなってきたよ。地上に下りるね」

 しかし、ずっと飛んではいられない。転移や次元断よりは魔力を使わないけど、それでも属性魔法よりはどんどん魔力が減っていく。練習すればもう少し飛べるようにはなると思うけど。

『ふむ。とりあえずはそれだけ飛べれば十分だろう。練習を積めばもっと速く、もっと長く飛べるようになる。風魔法と併用することも練習するんだな』

 そうか。水中では浮遊と水魔法を使うのと同じように、空中では浮遊と風魔法を使うといいんだった。

「少し休憩したら、浮遊と風魔法の練習をするよ」
『うむ。それなら休憩時間に我が作った宿題をしておくように。そのあとはまた飛ぶ練習だ』
「うん。分かったよ」

 剣や魔法の修行だけじゃなく、勉強をきっちりすることがリフレッシュになってるんだよな。しかし、最近ルシアが作る宿題は学園で教える範囲を飛び越えてるよね。魔法理論の宿題なんて学園の魔法の授業じゃ教えてくれない内容がたくさんあるよ。今日は早速、呪術について書いてあるけど、学園で習うはずがないもん。

 僕は休憩時間にルシアの宿題を終わらせて、そのあとはまた浮遊の練習を続けた。
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