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第6章 怨恨渦巻く陰謀編
101 宰相様の料理
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「浮遊と風魔法を組み合わせると、すごいスピードで飛べるね! 水中でも感動したけど、また違う感動があるな~!」
僕は浮遊と風魔法を組み合わせる練習をして、猛スピードで飛ぶことができるようになった。魔力の消費量は増えるけどね。
『ふむ。上手く飛ぶことができていたな。お主の場合はもっと魔力量が増えないと長距離を飛ぶことは難しい。その課題は置いておくとして、意識して欲しいことは戦うときに飛べるということを常に忘れないことだ』
「飛べる意識……」
『そうだ。飛べるということは、空中の敵とも戦えるということだ。そして忘れがちなのが陸上戦でも使えるということ。攻撃を空中に逃げて躱してもよいし、空中から攻撃をしてもよい。戦いの選択肢が大幅に増えたことになる』
「確かにそうだね!」
『しかしだ。自由に飛べる人族などお主以外におるまい。風魔法の名手であれば風で浮かんだり、飛んだりすることができるのだが、お主のように空中で自由自在に方向を変えて飛ぶことはできない。時空間魔法のことは極力伏せたいゆえ、飛ぶ際には風魔法ということにしておけ。そして人前では余り目立つようには飛ぶな。だが、命を守るためには魔法を惜しんではならぬ。お主が必要と判断したときは躊躇なく使うのだ』
「分かった。今の話を頭に叩き込んで使うことにするよ」
夕方まで魔法の修行をした僕たちは、宰相様の料理を楽しみに王宮へと向かった。
「お待ちしておりましたぞ。ルシア様、レン殿」
王宮について案内されたのは先日も食事をいただいた豪華な部屋だ。その入口で宰相様が待っていた。
「こちらこそお招きいただきありがとうございます」
『うむ。楽しみにしておるぞ、ベルスよ』
テーブルに座っているのは女王様と王女様。この前と同じ5人で食事をするんだね。
「私が前菜やメインの料理を作りましたが、デザートはクリスタ王女に作っていただきました」
「申し訳ありません。本当は私が作った料理の試食会の予定だったのに、急遽変更させていただくことになりまして。デザートだけしか作れませんでしたが、ご賞味ください」
「今日はルシア様とレン殿へのお礼と姫の壮行会も兼ねての食事会じゃ。妾も2品作らせてもらった。お二人とも席についてくだされ」
女王様に催促されて席につく。するとメイド長のシシリーさんたちが料理を運んできた。前菜は宰相様が作ったと言ってたよね。でもこれなんだ? 見たことないな。
「それではご賞味ください」
宰相様が声を発せられると同時にルシアが食事を口に運ぶ。
『ほう、美味いな! しかしこれはなんだ? ……分かった。あんこうの肝だな!』
「その通りでございます。私が酒の肴として大好物でしてな。自分で作るようになったのです」
へ~。これはあんこうの肝なのか。どれどれ。
「美味しい! 滑らかな舌触りで濃厚な旨味が口いっぱいに広がる。宰相様は料理が上手なんですね」
「バハハハ! この美味さが分かるとは、レン殿は将来お酒が好きになること間違い無しですな!」
これがお酒に合う味なのか。いや本当に美味しいんだよね。将来、お酒が好きになるかは分からないけど、お酒と合わせるとさらに美味しいっていうのなら、大きくなるのが楽しみでもあるな。
そのあとは女王様が作られた魚料理と肉料理が2品出てきた。どちらも最高に美味しい! それに料理の見た目がとても美しくて、芸術品と言っても言い過ぎではないだろう。女王様の腕前はすごすぎるよ。
『やはり女王の料理は素晴らしいな。これほどの腕を持つ者は本業の料理人でも多くはあるまい』
いや~、ルシアも大絶賛だけど、本当にその通りだと思う。魚と肉料理は少しスパイスが効いていて、炭酸水がすごく美味しく感じたよ。
「それでは私のメインですな」
宰相様が席を立って部屋を退室する。準備をして来られるのかな。でも、魚料理に肉料理が出てきたよね。何がメイン料理なんだろう? 楽しみだな。
「お待たせしました。私が作ったメインの料理はカレーです!」
カレーか! うわっ! ここまでスパイスの香りが漂ってくる。とても良い香りだ。
「私のメインに合わせて、女王様も少しスパイスの効いた魚料理と肉料理を作られたのです。実は私はカレーを作るのが趣味と言えるぐらいに好きでしてな。自宅に何十種類ものスパイスを揃えてあります。そしてちょうど数日前から煮込んでいるものがありましてな。それをルシア様とレン殿にも食べてもらいたいと思ったのです」
僕たちの前にカレーが並べられる。すごく食欲を刺激させられる匂いが漂ってくる。早速いただこう! 僕は一口食べると、そのままの勢いで半分ぐらい一気に食べてしまった。
「これは美味しい!! 辛いんだけど後を引く美味しさ! あと中に入ってる鶏肉がホロホロと口の中で溶けていってカレーとの相性抜群だね!」
周りを見ると、みんな惹きつけられたかのようにカレーを食べている。
『ベルスよ。カレーは奥深いな。この中であらゆるスパイスが見事に融和しておる。素晴らしい料理だ』
そんなことを言ってるルシアはシシリーさんにもうおかわりを頼んでいる。本当に気に入ったみたいだね。宰相様もすごく嬉しそうだ。
大満足のカレーを食べ終わって少し談笑をしていると、王女様のデザートが出てきた。
今日はアップルパイとアップルティーだ。これもすごくいい香りだな。
デザートが目の前に並べられるそのときだった。
「ルシア様、レン様、お迎えに参りました」
あれ? ウェンディが来ちゃったよ?
僕は浮遊と風魔法を組み合わせる練習をして、猛スピードで飛ぶことができるようになった。魔力の消費量は増えるけどね。
『ふむ。上手く飛ぶことができていたな。お主の場合はもっと魔力量が増えないと長距離を飛ぶことは難しい。その課題は置いておくとして、意識して欲しいことは戦うときに飛べるということを常に忘れないことだ』
「飛べる意識……」
『そうだ。飛べるということは、空中の敵とも戦えるということだ。そして忘れがちなのが陸上戦でも使えるということ。攻撃を空中に逃げて躱してもよいし、空中から攻撃をしてもよい。戦いの選択肢が大幅に増えたことになる』
「確かにそうだね!」
『しかしだ。自由に飛べる人族などお主以外におるまい。風魔法の名手であれば風で浮かんだり、飛んだりすることができるのだが、お主のように空中で自由自在に方向を変えて飛ぶことはできない。時空間魔法のことは極力伏せたいゆえ、飛ぶ際には風魔法ということにしておけ。そして人前では余り目立つようには飛ぶな。だが、命を守るためには魔法を惜しんではならぬ。お主が必要と判断したときは躊躇なく使うのだ』
「分かった。今の話を頭に叩き込んで使うことにするよ」
夕方まで魔法の修行をした僕たちは、宰相様の料理を楽しみに王宮へと向かった。
「お待ちしておりましたぞ。ルシア様、レン殿」
王宮について案内されたのは先日も食事をいただいた豪華な部屋だ。その入口で宰相様が待っていた。
「こちらこそお招きいただきありがとうございます」
『うむ。楽しみにしておるぞ、ベルスよ』
テーブルに座っているのは女王様と王女様。この前と同じ5人で食事をするんだね。
「私が前菜やメインの料理を作りましたが、デザートはクリスタ王女に作っていただきました」
「申し訳ありません。本当は私が作った料理の試食会の予定だったのに、急遽変更させていただくことになりまして。デザートだけしか作れませんでしたが、ご賞味ください」
「今日はルシア様とレン殿へのお礼と姫の壮行会も兼ねての食事会じゃ。妾も2品作らせてもらった。お二人とも席についてくだされ」
女王様に催促されて席につく。するとメイド長のシシリーさんたちが料理を運んできた。前菜は宰相様が作ったと言ってたよね。でもこれなんだ? 見たことないな。
「それではご賞味ください」
宰相様が声を発せられると同時にルシアが食事を口に運ぶ。
『ほう、美味いな! しかしこれはなんだ? ……分かった。あんこうの肝だな!』
「その通りでございます。私が酒の肴として大好物でしてな。自分で作るようになったのです」
へ~。これはあんこうの肝なのか。どれどれ。
「美味しい! 滑らかな舌触りで濃厚な旨味が口いっぱいに広がる。宰相様は料理が上手なんですね」
「バハハハ! この美味さが分かるとは、レン殿は将来お酒が好きになること間違い無しですな!」
これがお酒に合う味なのか。いや本当に美味しいんだよね。将来、お酒が好きになるかは分からないけど、お酒と合わせるとさらに美味しいっていうのなら、大きくなるのが楽しみでもあるな。
そのあとは女王様が作られた魚料理と肉料理が2品出てきた。どちらも最高に美味しい! それに料理の見た目がとても美しくて、芸術品と言っても言い過ぎではないだろう。女王様の腕前はすごすぎるよ。
『やはり女王の料理は素晴らしいな。これほどの腕を持つ者は本業の料理人でも多くはあるまい』
いや~、ルシアも大絶賛だけど、本当にその通りだと思う。魚と肉料理は少しスパイスが効いていて、炭酸水がすごく美味しく感じたよ。
「それでは私のメインですな」
宰相様が席を立って部屋を退室する。準備をして来られるのかな。でも、魚料理に肉料理が出てきたよね。何がメイン料理なんだろう? 楽しみだな。
「お待たせしました。私が作ったメインの料理はカレーです!」
カレーか! うわっ! ここまでスパイスの香りが漂ってくる。とても良い香りだ。
「私のメインに合わせて、女王様も少しスパイスの効いた魚料理と肉料理を作られたのです。実は私はカレーを作るのが趣味と言えるぐらいに好きでしてな。自宅に何十種類ものスパイスを揃えてあります。そしてちょうど数日前から煮込んでいるものがありましてな。それをルシア様とレン殿にも食べてもらいたいと思ったのです」
僕たちの前にカレーが並べられる。すごく食欲を刺激させられる匂いが漂ってくる。早速いただこう! 僕は一口食べると、そのままの勢いで半分ぐらい一気に食べてしまった。
「これは美味しい!! 辛いんだけど後を引く美味しさ! あと中に入ってる鶏肉がホロホロと口の中で溶けていってカレーとの相性抜群だね!」
周りを見ると、みんな惹きつけられたかのようにカレーを食べている。
『ベルスよ。カレーは奥深いな。この中であらゆるスパイスが見事に融和しておる。素晴らしい料理だ』
そんなことを言ってるルシアはシシリーさんにもうおかわりを頼んでいる。本当に気に入ったみたいだね。宰相様もすごく嬉しそうだ。
大満足のカレーを食べ終わって少し談笑をしていると、王女様のデザートが出てきた。
今日はアップルパイとアップルティーだ。これもすごくいい香りだな。
デザートが目の前に並べられるそのときだった。
「ルシア様、レン様、お迎えに参りました」
あれ? ウェンディが来ちゃったよ?
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