999本のバラを君に

恋桜苺

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その13 ~緑色のバラ~

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その13 ~緑色のバラ~

 その日は話していたらどうやら遅い時間になっていたらしく片栗の家に泊まることにして2人で夜までトランプをしたり話をしたりした。
「風呂、ありがとな。ちょうど良かった。」
 そう言って風呂から出るとあいつがいなかった。どこに行ったのかと探すとどうやらベランダにいたようで空を見上げていた。
「何してるんだ?」
「あ、紫苑。空をね、見てたんだ。」
「空?」
「うん、今この世界にはさ1体何人がこの空を見上げているんだろうとか、その人達はどんな顔をしたりどんな悩みを持ったりしてるんだろうって考えるとなんか全ての事がなんとかなる気がしてさ。」
 そう言いながら話してくれる片栗はどこか寂しげだった。そうだ、と1つ思いついた事がある。きっとテストの点数低いから分からないだろうし、これくらい言ってもバチは当たらないだろうなと願い、
「…月が綺麗ですね。」
「そうだねー。」
 やっぱり分からなかったか、と心のどこかで少し寂しがり隣で空を見上げる。すると、
「ねえ、知ってた?」
「ん?何を?」
「僕ね、古文だけは得意なんだよ。だからさっきの…死んでもいいわ。」
 とびっきりの笑顔で言われて思わず見惚れてしまった。きっと知らないと思っていたのに知っていてとても恥ずかしいなと思うのと同時に幸せだと思った。
「あ、そうだ。僕ねこの曲が大好きなんだ。紫苑には聞いてもらいたくて、聞いてくれる?」
 そう言って声変わりをしたのか分からない声で1つの歌を歌い始めた。

 君がこの世界に1人だとそう思った時隣を見てご覧
 そこにはきっと貴女を助けてくれる人がいる
 逆には見守ってくれる人がいる
 君が寂しいと思った時この空を見上げてご覧
 この世界には何人も同じ空を見上げている仲間がいる
 傍には綺麗だねと笑ってくれる人がいる
 悲しいと思ったら泣きなさい
 嬉しかったら笑いなさい
 ありのままの貴方を見せて
 笑って泣いて人生を謳歌しなさい
 ほら、前を見て
 貴方の世界はこんなにも広がっている

「僕さ、最初この歌が嫌いだったんだ。正直空を見上げていたからって同じ仲間とは限らないし、なんて綺麗事の塊だろうって。でもさ今は違うんだ。今隣に紫苑がいる事で綺麗だねって笑い合える。とっても幸せなんだ。」
「俺も幸せだよ。恋がこんなに幸せな事なんて知らなかった。幸せだと思う分最初は苦しさもあった。でもそれがあったからこそ今とても幸せなんだ。」
 そう言って2人で照れながら空を見上げていた。
 そして気付くといつの間にか寝ていたらしく朝になっていた。今日はちょうど休みだっため朝にのんびり朝食も貰い帰ろうとした所だった。
ーーガチャッ
「ただいまー。」
 唐突にそんな声が響いた。そしてドカドカという音と共にリビングに入ってきて、
「片栗、朝ごはん。…あれ?誰?」
「母さん…。」
 まさかの母親とは思いもよらなかった。とりあえず挨拶だけはしておいた方がいいのかと思い
「あ、初めまして。俺片栗くんの同じクラスの紫苑と申します。」
「そう、よろしくね。紫苑くん。ところで私の勘違いだったら良いんだけど貴方達付き合ってたりするかしら?」
 なぜ分かったのだろう。出会ってすぐの人にそんな事を言われ驚いていたのもありとても感情が顔に出ていたらしく片栗の母親は深いため息をついてこう言った。
「はぁ…。付き合ってるのね。しかも男子同士で。本当に気持ち悪い。さっさと別れるか紫苑くん、家から出ていってくれないかしら?」
 穏やかに迎えたと思われた日々は一瞬にして消え去った。
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