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真実
しおりを挟む「え……? 面会できない!?」
「え、ええ……。美里ちゃんからもお母様からも、どなたも病室に通すなといわれてて……」
「そんな……」
「友次くん、なにかやったの?」
「いえ、なにもしてない……と思います……」
「そう。私も友次くんに原因があるとは思えないのよね。そうすると……」
「そうすると……なんですか看護師さん」
「面会謝絶の原因は友次くんじゃなくて美里ちゃんにあるのではないかしら?」
「美里に原因が?」
「ええ。自分の最後がわかっている患者さんはいろいろと考えたりするものなの。気持ちの整理っていうのかしら」
「気持ちの整理……?」
「そうよ。私たち医療従事者はね、そういった患者さんとも接しているから、仲良くなると話してくれるの。ほとんどの患者さんは、自分じゃなくて残された周りの人たちのことを考えているのよ。大切な人は特にね」
「大切な人……」
「友次くんは美里ちゃんのお母様と仲がいいわよね?」
「はい」
「どうしても納得ができないのなら一度聞いてみるといいのではないかしら。私の勝手な想像だけど、美里ちゃんが入院したての頃からずっと通いつめている友次くんのことも、お母様は気にかけていると思うわ」
◇
「あら友次くん、いらっしゃい」
「おばさん、こんにちは」
「……今日は美里のことで来たのよね?」
「はい……」
◇
「どうして美里は俺に別れ話なんかを……」
「美里はね、友次くんのために別れようとしてるのよ」
「俺のため?」
「そうよ」
「それは……いったいどういうことですか?」
「……そうね。友次くん、終活って言葉を知ってる?」
「就活……? 就職活動ですか?」
「高三の友次くんからしたらそっちを思い浮かべちゃうか」
「すいません……」
「終わりの活動と書いて終活と読むのよ。意味は残りの人生を悔いのないものにする活動ってところかしら。それでね、美里も終活をすることにしたの」
「美里は、その終活でなにをしようとしてるんですか?」
「……友次くんから離れようとしてるの」
「……え? ……それって、どういうことですか? ……意味が、わからないんですけど……」
「……」
「俺、もしかしてなにかやってしまったんですか? 無意識にでも、あいつを傷つけるようなことをしてしまったんですか!?」
「友次くんは何も悪くないのよ。むしろ本当に感謝しているわ。今までずっと美里のために尽くしてくれたんだから」
「だったら! だったらなんで美里は俺から離れようとするんですか? 俺は離れたくないのに……なんで!」
「……友次くんに、美里と離れたくないと思わせるからよ」
「……え?」
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