19 / 25
本心
しおりを挟む「……」
「……」
「……あいつ、優しいからいつも俺に気をつかってたんですよ」
「……」
「あいつと仲良くなってから、俺はあいつとずっと一緒にいました。俺の冗談にも面白いくらい反応してくれて、よくしゃべって、一緒に笑って、泣いて。でも、それは少しずつ変わっていったんです。あいつ、嘘をつくようになったんですよ」
「……嘘?」
「俺ってばかだから、時間も忘れてずっと話すんです。いつも通りに毎日毎日、朝から晩まで。ずっとずっと……。なのにあいつ、病気でどんどん辛くなってるはずなのに、そのことにも気づかないばかな俺に合わせるように、一緒にいる時は全然その素振りも見せなくて……ずっとずっと俺の話を聞いてくれて……あいつは少しも俺に弱さを見せることはなかったんです……」
「……」
「入院することになってからもあいつは……入院の原因を病気だけのせいにして……俺が負担をかけてたなんて微塵も思わせなかったんです……」
「……」
「それからも俺は毎日のように病院に通いました……その時、看護師さんから聞いたんです……三十分以上の会話は負担になるって……」
「……」
「あいつ……俺に合わせるために……ずっと無理してたんです……なのに……うう……俺にはずっと楽しいって……嘘をついてたんです……うう……」
「友次くん……」
「だから俺……その日から接し方を変えました……そしたら、あいつは自宅療養ができるまでに回復したんです。だから俺は、退院したらいうと決めてたあいつへの想いを心にしまって、これからは負担をかけないようにしようって決めたんです。それまでいってた好きって言葉もいわないように気をつけながら……俺はあいつと接しました。もしもまた好きなんていったら、絶対にあいつはまた無理をすると思ったから……」
「……」
「……でも、今ならわかるんです。……美里と同じ気持ちになれたからこそ、わかるんです……今のあいつは……間違ってるんです。あの時の俺のように、気持ちをしまい込んでしまったらだめなんです!」
「……どうしてだめなの?」
「……辛いんですよ。気持ちを抑え込むのって。自分の中からどうしようも湧き出てくる好きって気持ちを抑え込むのは……。そんなの簡単なことじゃない。とても……辛いんです……! ……だから俺は結局、最後までその想いを抑え込めなかった。何かに理由をつけて、ゆっくりと気持ちを吐き出してしまったんです……」
「……」
「でもねおばさん……それは間違いじゃなかったんですよ……俺がまたあいつに好意を寄せると、あいつは喜ぶんです。幸せを感じてくれたんですよ……」
「友次くん……それでもあの子はね、それでも、何日も何日も悩んで、悩み抜いて、友次くんのために離れることを決めたのよ? あなたはその覚悟を、なかったことにできるの?」
「……おばさん、知ってますか? あいつ……いっつも真顔だけど、笑う時は瞳孔が少しだけ開くんですよ。嬉しい時、側にいる時、俺を見る時、いつも瞳孔が大きくなるんです。あいつの目を見れば、心の底から幸せを感じてくれてるってわかるんですよ……」
「……」
「目は口ほどにモノをいう。……俺、気づいてました。あいつ、口数は少ないけど、もともとは優しいから嘘はいわなかったんです。だけど嘘をつくようになった。それは、俺があることを聞いたときだけにつく優しい嘘でした」
「優しい、嘘?」
「俺を気づかう嘘の返事をする時だけは、俺と目を合わせないんですよ。……だから別れ話をした時、俺は一つだけあいつに聞きました。……それは、本心かって」
「……」
「そしたら、あいつは本心だって答えました。……目を、背けながら……」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
Emerald
藍沢咲良
恋愛
教師という仕事に嫌気が差した結城美咲(ゆうき みさき)は、叔母の住む自然豊かな郊外で時々アルバイトをして生活していた。
叔母の勧めで再び教員業に戻ってみようと人材バンクに登録すると、すぐに話が来る。
自分にとっては完全に新しい場所。
しかし仕事は一度投げ出した教員業。嫌だと言っても他に出来る仕事は無い。
仕方無しに仕事復帰をする美咲。仕事帰りにカフェに寄るとそこには…。
〜main cast〜
結城美咲(Yuki Misaki)
黒瀬 悠(Kurose Haruka)
※作中の地名、団体名は架空のものです。
※この作品はエブリスタ、小説家になろうでも連載されています。
※素敵な表紙をポリン先生に描いて頂きました。
ポリン先生の作品はこちら↓
https://manga.line.me/indies/product/detail?id=8911
https://www.comico.jp/challenge/comic/33031
白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは
紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。
真由子の母の雪江は、大学教授であり著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。
婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。
白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
夜の帝王の一途な愛
ラヴ KAZU
恋愛
彼氏ナシ・子供ナシ・仕事ナシ……、ないない尽くしで人生に焦りを感じているアラフォー女性の前に、ある日突然、白馬の王子様が現れた! ピュアな主人公が待ちに待った〝白馬の王子様"の正体は、若くしてホストクラブを経営するカリスマNO.1ホスト。「俺と一緒に暮らさないか」突然のプロポーズと思いきや、契約結婚の申し出だった。
ところが、イケメンホスト麻生凌はたっぷりの愛情を濯ぐ。
翻弄される結城あゆみ。
そんな凌には誰にも言えない秘密があった。
あゆみの運命は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる