婚約破棄された令嬢は森で静かに暮らしたい

しざくれ

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とある騎士団長の話3

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 深緑の森は強い魔物達が跋扈するところ。
 王国がその森を領地に入れたのは、およそ百年も前の話。賢く強かった王が統治した場所。
 精鋭の部隊を遣わせ、浅い場所を探索させた。


 王は賢かったし、精鋭の部隊も強かった。
 わずかな犠牲を持って、ある程度の情報を掴むことができた。


 結果は「不可侵領域アンタッチャブル」とした。


 さて、これは百年前の話である。
 強力な魔物が無数に存在する中で、寿命も千を超す怪物だっているわけだ。
 なにが言いたいかというと、弱肉強食の世界が続いているのだから、当然その百年前からレベルは格段に上がっているのだ。


「騎士団長! 西方方面の強襲部隊が半壊とのことです!!」
「団長! 東方面の……後方の守護部隊に魔物の集団が!」


 と、王国の騎士団は一歩も動けずに数を減らされていた。
 いわば魔物の庭でもある森で、大軍を動かせばこうなることは自明だ。


 システムとして動く騎士団という組織がアダとなった。
 使える主君の無能さ加減がアダとなってしまった。


「ここは一度……! なっ!」


 撤退だと、口にしようとした団長が目を見開く。
 騎士団長は騎士団の中心部にいる。にも拘わらず、魔物が眼前まで迫っていた。
 どれほどの部隊が壊滅したのだろう、と。
 他国と戦争をしてもこれほどの被害にはならなかっただろう。


 騎士団長は命を預かる身として、己の愚かさを恨む。
 謝罪の念にかりたてられる。
 そんな時だった。


 森の魔物が一切の攻撃をやめた。


 どういうことだ、と考える必要もない。
 頭上には弱肉強食の頂点に立つドラゴンの王がいた。


 頬がつっていると、騎士団長は分かった。
 騎士団はもう、どよめきすら起きない。


 誰もが絶望を脳裏に過らせた。


 しかし、彼らを待ち受けていたのは死などではなかった。
 それどころか――


再戦の癒しリーベル・キュア!』


 生命を持つもの全てを泡のような光が包む。
 魔物も、人も。


 それから騎士団長は気づく。
 ドラゴンの上に人がいると。


 その人は騎士団長達を見下ろしながらニッコリと笑った。


『危ないので帰ってください。二度目はないですよ』


 と。
 口を、そう動かしていた。


「だ、団長……!」
「ああ。撤退だ。この機を逃す手はない!」


 冷静に騎士団長は伝令兵に言う。
 各隊から撤退の角笛が吹かれた。


 騎士団長は、胸のどきどきを抑えながら、みなを撤退させた。


(妻がいるんだぞ……! やめろ俺……!)
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